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6/23 【海外サイエンス・実況中継】アンケートから見る!学部/大学院教育における日米の違い(前編)

posted Jun 22, 2013, 7:15 PM by Souichiro Hioki   [ updated Jun 22, 2013, 7:17 PM ]
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_/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』
_/ June 2013, Vol. 60, No. 2
_/ カガクシャ・ネットワーク → http://kagakusha.net/
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-----------------What's New?--------------------------------
米国大使館主催の留学説明会:AmericaEXPO が9/21に開催されます。
カガクシャ・ネットも冊子や広報で協力を行っています。学部留学を
検討している方に特におすすめな説明会です。
ウェブページはこちら:   http://americaexpo.jp/
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-- From editors --
今週と次回のメルマガでは、学部/大学院教育における日米の違いについて、
カガクシャ・ネットのメンバーを対象に行ったアンケートをもとに迫ります。
留学経験のあるメンバー16名のコメントから、学部/大学院教育における、
日米の特徴が見えてきました。2部構成の前編である今週は、学部と大学院の
課程のそれぞれについて、特徴を分析します!
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【 Question 1 】
日米の学部(4年間)を比較して、教育上大事な違いがあると思うことはなんですか?

 1位:授業(11票)
 2位:学費(6票)
 2位:卒業(6票)
 4位:入学(4票)
 5位:就職(2票)
 5位:課外活動(2票)   (複数回答可)

日米の大学の一番の違いは授業であるという結果になりました。「必要な勉強量が
尋常ではない」、「積極的な参加が求められる」、「宿題の量が違う」、「授業の
質が濃い」、「勉強しない学生は間違いなく留年」、「Teaching Assistant (TA)に
よるサポート体制が充実」など、アメリカの学部生が授業に費やしている時間は
平均的に日本の学生より高いことは間違いないでしょう。それだけアメリカの授業は
授業外で学生に勉強させることがうまいということです。アメリカの授業の質の
高さの理由はいくつかあり、例えば教える側の教授も「学生評価」が昇進に関わる
ので授業の質の向上につながり、教わる側の学生も好成績をとることで多くの
メリットがあるので単位取得や好成績確保への動機づけとして機能しています。
たとえ授業についていけなくても、study groupという生徒同士の勉強グループや
TA(大学院生による授業補佐)に気軽に質問できるdiscussion sectionやoffice
hourなど、「学ぶ」システムが整っているのがアメリカの授業の特徴かもしれません。

学費はアメリカの大学の方が日本の大学に比べて高額であるという意見が多く
ありました。「私立はとてつもなく高い(日本の私大医学部並み)」、「米私立
大学の学費は、年間400万円程」、「州立でも留学生は州内の学生に比べ学費は
2倍から3倍」。学費が高い分アメリカでは奨学金などが充実していますが、
留学生が奨学金を勝ち取るのは相当困難です。学費の安いアメリカ短期大学から
スタートして現地の四年制の大学に編入したり、短期の交換留学でアメリカの
大学教育を経験したりするのも一つの手段かもしれません。

同率で卒業に関しても日米に違いあると指摘されています。アメリカでは、
「単位を取れないこと多々ある」のは事実で、日本の大学と比べ大学側が生徒を
留年させることにあまり抵抗がないように思います。また必要単位さえとれれば
卒業できるので、理系の大学でも「研究論文を書く必要がない」のが普通です
(日本でも卒業研究がオプションの大学がありますが)。また在学中に留学や
休学する学生も多く、入学した同期が同じ年に卒業するというのは日本に比べ
稀な気がします。

入学は日本と同様、共通試験や成績が考慮されますが、課外活動(ボランティア、
リーダーシップ、スポーツ実績など)が重要視されることが多くあります。
反対に大学在学中は授業が忙しく、日本の大学生のような課外活動(部活動、
サークル、バイトなど)は最小限です。むしろ在学中に企業へのインターンシップや
研究経験で特別単位を取得したり、それぞれのキャリア構築に役立つ課外活動が
主です。卒業後の就職は、日本と異なり、新卒が求められているわけではなく、
どのようなスキルをもっているか(大学での成績(GPA)や卒業後の活動)が
評価の対象になります。就職時にどこの大学を卒業したかだけではなく、
GPAが考慮されることが「大学で何を学ぶか」というモチベーションにもつながって
いるのかもしれません。


【 Question 2 】
日米の大学院(修士、博士課程)を比較し、教育上大事な違いがあると思うことはなんですか?

 1位:学費(12票)
 2位:授業(11票)
 3位:就職(6票)
 4位:研究(5票)
 5位:入学(4票)
 6位:卒業(3票)
 7位:その他(2票)   (複数回答可)

日米の大学院の一番の違いは学費でした。 アメリカの大学院は学部と対照的に、
「お金の心配がいらない」、「学費は無料になる」、「給料がもらえる」、
「援助無しで生活できる」、「奨学金が豊富」など学費について楽観的な意見が
多くありました。分野や研究室によって事情は異なりますが、アメリカでの理系の
博士課程は授業を教えるTA制度や研究を手伝うResearch Assistance(RA)制度があり、
学費・生活費がカバーされることが普通です。一方で、修士課程は博士課程と比べて
TA、RAを獲得するのが難しくなります。そのため修士課程だけを比較すると、日本
(特に国公立)の大学の方が学費が安く、奨学金を借りても返すことができる場合が
あるので経済的に分があるかもしれません。しかし、アメリカ大学院の財政的な
援助の充実は、「社会人入学が容易」になり、大学院生の「多様性が確保」され、
「教育上の競争力の向上」に寄与し、経済的に「自立性が育まれる」という
コメントがありました。またアメリカでは研究助成金も多く、競争的研究資金を
獲得できることも利点ですが、その申請プロセスも、研究の目的と方法が非常に
明確化するのに役立っています。

日本の大学院ではあまり重要視されない授業が2位に挙がっています。
「授業で求められる内容は、日本の大学院の授業の数倍に及ぶ」、「日本の大学院の
授業は手抜きな場合が多い」、「日本では授業はほとんどない」など、アメリカの
大学院の授業が厳しいことが伺えるコメントが多くありました。アメリカの大学院は、
アジアやヨーロッパの大学院と異なり、大学院から新たな分野を勉強することができ
るシステムになっているため、大学院の1、2年は厳しいコースワークが求められます。

就職に関して多く上がった意見は「専門性」でした。「米国では専門が就職に直結、
日本では企業がそこまで専門を期待していない(というか、マッチしていない)」、
「日本は、大学・大学院はスペシャリスト(特定の専門に長けた人)を求めるのに、
就職する際はジェネラリストを求める。アメリカは全くこの逆。」、「日本では
博士(大学の人材)をキャリアとして活用できる民間企業が少ない」、「アメリカの
会社では博士も積極的に採用する、日本のメーカーは修士中心」などの意見が
寄せられました。専門性の涵養は授業よりも実践重視の日本の大学院が得意と
するところのように思えますが、それが就職後に求められていないことで、
機能不全になっている実態が伺えます。

研究の違いでは自立性についてのコメントが多く見られました。ここでいう自立性
とは、一人で研究アイディアを生み出し、実験計画を立て、資金を獲得し、論文を
世に送り出す一連の作業のことです。アメリカの博士課程は、コースワークや小
プロジェクトを経て、「博士論文テーマを自分で見つける」のが一般的で、研究者
として何がしたいか考えるトレーニングも兼ねています。それとは対照的に、日本や
ヨーロッパの博士課程、アメリカの修士課程は、一からプロジェクトを生み出す
という作業が欠落している場合が多いように感じます(良いプロジェクトを教授
から与えてもらえることにもメリットはあります)。「博士とポスドクが研究室の
中心であるアメリカの研究室は、プロジェクトに責任感を持っている人が多く、
大学院生=修士学生=テクニシャンという概念が定着している日本の大学と比べると、
大学院生としてのプライドの持ち方が違ってきて、それが研究者としての自信・
喜びに繋がりやすい」という意見があり、共感しました。

アメリカでは、入学時に必ずしも目的の分野の専門知識が必要とされず、学力
試験以外にテクニシャン経験や研究経験など幅広く考慮されます。入学後は
配属する研究室が完全に決定しておらず、いくつかの研究室で小プロジェクトを
行い、所属先を決定できるというシステムが大学によってはあります。また卒業の
難易度に関して、日米で違いがある意見が聞かれました。日本は修士2年、
博士3年の5年間で通常博士号が取得できますが、アメリカの場合は十分な研究成果を
出したときが卒業時期となります。そのような理由から、大学院8年目といった
大学院生もいるほどです。それに加え、アメリカの博士課程中に行う適性試験
(comprehensive exam/qualifying exam/preliminary exam)は博士号取得の
関門の一つです。試験内容は学校、分野によって異なりますが、例えばあるトピックに
ついて7日以内にreview paperを書かせる筆記試験や、教授4人から3時間質問攻めに
あう口頭試験など、世に輩出する「博士の質」を維持するシステムをもつのがアメリカの
大学院の特徴かもしれません。博士課程に入学した生徒のうち半数近くを適正試験で
落とすような大学も中にはあるようです。

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次回のメルマガでは、大学経営の側面から日米の学部/大学院教育の違いについて
分析していきます。次回の配信予定は7/7です。どうぞお楽しみに!


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