E-Mag‎ > ‎

2013

メールマガジンのアーカイブを公開しています。

メルマガ(2013年)

  • 【海外サイエンス・実況中継】アメリカ就職への道: 第三回 _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ _/ _/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』 _/ Dec 2013, Vol. 65, No. 2 _/ カガクシャ・ネットワーク → http://kagakusha.net/ _/ _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ - From editors -- アメリカ就職活動記事の第三回になります。前回は仕事の見つけ方までを ご紹介いたしましたが、今回は企業研究から、phone interview のプロセス までをご紹介いたします ...
    Posted Dec 29, 2013, 11:16 PM by Yohei Ishii
  • 【海外サイエンス・実況中継】アメリカ就職への道: 第二回 _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ _/ _/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』 _/ Dec 2013, Vol. 65, No. 1 _/ カガクシャ・ネットワーク → http://kagakusha.net/ _/ _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ - From editors -- 前回に続く就職活動記事第二回です。今回は、レジュメ準備から 仕事の見つけ方までをご紹介いたします。 ------------------ -レジュメの準備 企業就職の準備段階でインパクトのあるレジュメを書くことが ...
    Posted Dec 6, 2013, 10:06 AM by Yohei Ishii
  • 【海外サイエンス・実況中継】アメリカ就職への道: 第一回 _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ _/ _/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』 _/ Nov. 2013, Vol. 64, No. 1 _/ カガクシャ・ネットワーク → http://kagakusha.net/ _/ _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ - From editors -- アメリカでの就職には英語でのハンデはもちろんのこと、外国人である ことによるビザの問題、レジュメ、面接など、日本とは大きく違うこと があります。今回の記事ではアメリカにおける就職活動についての記事を ...
    Posted Nov 3, 2013, 1:22 AM by Yohei Ishii
  • 10/13 【海外サイエンス・実況中継】分科会紹介 _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』_/ Oct 2013, Vol. 63, No. 1_/ カガクシャ・ネットワーク → http://kagakusha.net/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/- From editors --カガクシャネット分科会紹介です。カガクシャネットでは、大学院留学への情報以外にも、さまざまな活動をしており、その一環として分科会を設立しています。現在3つの分科会があり ...
    Posted Oct 13, 2013, 1:09 AM by Yohei Ishii
  • 9/15 【海外サイエンス・実況中継】アンケートから見る!大学院留学準備 _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ _/ _/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』 _/ August 2013, Vol. 62, No. 1 _/ カガクシャ・ネットワーク → http://kagakusha.net/ _/ _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ - From editors -- カガクシャ・ネットのメンバーには多くの海外大学院留学生/修了生に加え、 学位取得を目的とした大学院留学を目指しているメンバーが多く在籍しています。 そこで今回のアンケートでは ...
    Posted Oct 7, 2013, 7:57 PM by Souichiro Hioki
Showing posts 1 - 5 of 17. View more »

【海外サイエンス・実況中継】アメリカ就職への道: 第三回

posted Dec 29, 2013, 11:16 PM by Yohei Ishii

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
_/
_/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』
_/ Dec 2013, Vol. 65, No. 2
_/ カガクシャ・ネットワーク → http://kagakusha.net/
_/
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

- From editors --
アメリカ就職活動記事の第三回になります。前回は仕事の見つけ方までを
ご紹介いたしましたが、今回は企業研究から、phone interview のプロセス
までをご紹介いたします。お楽しみください。
------------------

-企業研究
企業研究が重要なことは言うまでもありません。多くの時間を割く必要は
ないかと思いますが、会社の主な事業、基本的な企業情報は知っておくと
役に立ちます。会社の多くはホームページを持っており、ホームページには
“Careers”という項目があります。
例えば、アメリカの代表的な大企業であるGEのホームページを例に取って
みると、www.ge.com ただ単に仕事を検索する“Search Job”メニュー以外に、
なぜGEで働くか(“Why GE?”)、GEでの生活(“Life at GE”)などのメニューが
あり、GEという会社の組織、文化、について学ぶことが出来ます。
また、Pfizerのホームページを見てみると、www.pfizer.com
Careersの項目は小さな字で書いてあって見つけにくいのですが、
いったん見つけると、http://pfizercareers.com/
というキャリアに関する非常に充実したリンクへと飛ぶことが出来ます。
このpfizerのページでは会社の文化や、会社内の仕事のファンクション、
福利厚生までざっと説明してあり、会社について学ぶのに役に立ちます。
また、Job Search Engineで仕事を検索すると、Job postingのページに
少々ですが、会社の説明文が書いてあります。このようなページは企業の
概要を学ぶのに非常に有用です。


プロセスを理解する

会社によりJob postingからインタビュー、オファー、採用までのプロセスが
多少異なるかもしれませんが、今の会社およびこれまでインタビューをした
経験から一般的なプロセスについて説明してみたいと思います。

-Internal Postingとは

Internal posting (内部掲示)とはJob Postingが実際にインターネット、新聞、
学会のウェブサイトなどに掲載される前の社内での公募になります。社内に
適正人物がいた場合は、そのポジションは埋まってしまいます。また、
Internal Postingが社内の人から社員の知っている人(リフェロー)まで含む
場合もあります。
Internal postingでポジションが埋まらなかった場合、External posting (公募)
としてJob postingが会社の外の媒体に出てゆきます。External Postingが
始まってももちろん、その会社の社員が知人をリフェローすることは可能です。
会社によってはリフェローした人物が本採用までたどり着いた場合は、
その社員にReferral Stipendの支給します。額は会社によって異なりますが、
例えば、一人につき1500ドル、2000ドルなどだったりしますので、会社内部の
人が知り合いを紹介する“Incentive”はゼロではないと言えます。

-External posting (公募) からスクリーニング

External Postingが始まると、アプリケーションが会社の方に届き始めますが、
まずはHR (人事) の方でキーワードや募集要件を元にレジュメのスクリーニングを
行います。この段階で、要件を満たしていないアプリケーションは残念ながら、
篩で落とされてしまいます。レジュメのスクリーニングの段階でHRの担当者が
出願者に電話をし、Phone Screeningを行う場合もあります。これは出願者が
ポジションに対して適性なバックグラウンドを持ち、もっと専門的なスクリーニングを
受けるに足る人物かを判断するためです。
Phone Screeningでは会社に興味を持っている理由、これまでの経験、技術、
Achievement、教育について聞かれるでしょうし、それらが出願中のポジションに
どのようにつながるかを問われるでしょう。またあなたがどの程度そのポジションに
興味を持っているかをHRは探ろうとしています。また、他州のポジションであれば、
引越し(relocation) は可能か、という質問もあるでしょうし、現在、仕事を
している場合は給料はいくらもらっているか、給料に対する要望はあるか、
なども聞かれます。また、外国人である私たちには常について廻る質問ですが、
米国で合法的に働けるか、という質問を受けることもあるでしょう。OPTをすでに
取得、あるいは申請中であれば、そのことを説明することが出来ます(OPTの項を参照)。

-研究者・技術者によるスクリーニングおよびPhone Interview

HRによるスクリーニングを生き残ったレジュメは実際に人を雇う部署の
マネージャーやメンバーによるスクリーニングを受けます。もちろん、
最初の段階でのアプリケーションの数・出願者の質にもよりますが、
アプリケーションの数は当初の半分以下になっていることもあります。
部署のマネージャーやメンバーはより専門的な目でHRから回ってきた
レジュメをチェックして、さらに候補者を絞ります。
部署のマネージャーやメンバーによるスクリーニングを生き残ると次の
段階としてPhone Interviewがあります。Phone Interviewを行うどうか
会社次第ですが、近年は長引くアメリカ経済の低迷を反映して、
Phone Interviewの重要性が増し、現地に赴いてOn-siteのインタビューを
受けられる候補者の数は減っているように思います。
技術者によるPhone Interviewには複数の人が参加している場合も
あります (例えば、部署のマネージャーとメンバー数人などのように)。
その場合、複数の人が、レジュメおよびHRのスクリーニングの情報を元に、
より専門的なスキル、知識、経験について質問をしてきます。
Job postingを見れば、そのポジションが普通はどのような知識、技術、
経験が要求されるか書いてありますが、実際は、それ以外にも会社側が
望む技術や経験があるかもしれません。実際、私もPostingに一切書いて
ない技術に関して経験があるかどうか何度か聞かれたことがありますので、
単純ではありませんが、少なくとも、Job Requirementsに書いてあることと
自分のバックグラウンドがどのようにマッチングするか、その部署、
会社に自分がどのように貢献できるかをポジティブに説明できるように
準備しましょう。満たしていないRequirementsがあった場合はその対応の
返事も準備しましょう。


━━━━━━━━━━━━━━━━━
カガクシャ・ネットワーク http://kagakusha.net/
(上記サイトで無料ユーザー登録後、バックナンバー閲覧可)
発行責任者: 石井 洋平
編集責任者: 石井 洋平
メールマガジンの登録と解除:
http://www.mag2.com/m/0000220966.html
ご連絡はこのメルマガに「返信」または以下のページから:
http://kagakusha.net/Mailform/mail.html
友人・お知り合いへの転送は自由ですが、無断転載は禁じます。
転載ご希望の際は必ずご連絡ください。
━━━━━━━━━━━━━━━━━

【海外サイエンス・実況中継】アメリカ就職への道: 第二回

posted Dec 6, 2013, 10:06 AM by Yohei Ishii

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
_/
_/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』
_/ Dec 2013, Vol. 65, No. 1
_/ カガクシャ・ネットワーク → http://kagakusha.net/
_/
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

- From editors --
前回に続く就職活動記事第二回です。今回は、レジュメ準備から
仕事の見つけ方までをご紹介いたします。
------------------

-レジュメの準備
企業就職の準備段階でインパクトのあるレジュメを書くことが
あげられます。
レジュメの書き方については経験を年代順に列挙する
Chronological Resumeが一般的に知られていますが、“
職務経験(Professional Experience)”が不足している
新卒の大学院生の場合は、アプライしようとしている
ポジションに対応する自分のスキルを強調するFunctional Resumeを
採用してみるのも良いと思います。
レジュメ作成に関する情報はインターネット上に
無数にありますが、例えば、このような記事がありました。

http://www.howtodothings.com/careers/a2110-how-to-write-a-functional-resume.html

この記事の筆者がおっしゃっているようにwww.microsoft.comには
様々なレジュメのサンプルやテンプレートがあり、
Wordのテンプレートをダウンロードすることが出来ます。
サンプルやテンプレートを参考に自分のスキル・知識を最大限に
アピールできるコンパクトにまとめられたレジュメを作りましょう。
基本形のレジュメが出来たらアプライするポジションの
Job/Position DescriptionやQualification/Requirementsをしっかりと
読みましょう。そして、アプライするポジションに要求されている
知識や技術がレジュメの中に反映されるように多少の微調整(Tweaking)
をします。

-レジュメを書く際の注意としては長くなりすぎないようにすると
いうことです。以前、16ページのレジュメをスクリーニングを
してくれるように頼まれたことがありますが、正直、読む気はし
ませんでした。つまり、読む前にアウトです。企業向けのレジュメは
できれば1-2ページどんなに長くても3ページ以内にまとめましょう。
アカデミア向けのCVとは異なり、論文を一つ一つ列挙する必要は
多くの場合はありません(論文を要求するポジションもある)。
あまり長いレジュメを書くとまとめる能力がないと見なされかねません。
企業の仕事にアプライする際、レジュメの最初のスクリーニング(Initial Screening)
をするのはHRと考えてよいでしょう。彼らは必ずしも科学・技術については
詳しくありません。
彼らが探しているのはjob/position description Qualification/Requirementsに
使われている“キーワード”とレジュメのマッチングです。

-OPT(Optional Practical Training Visa)

F1ビザを持つ学生が自分の専門の関連分野で働くことが
12ヶ月許可されるビザで、自分の所属する大学を通じて申請することが
出来ます。申請から取得までしばらく時間がかかる場合がありますので、
前もって担当のオフィスに問い合わせ、時間に余裕を持って、仕事を
始めるまでに許可が下りるように申請しましょう。
また、科学・技術系の学位を取得するF1の学生は雇い主によっては
17ヶ月までの延長をアプライできるようです。
*詳しくはアメリカの移民局のホームページを参照ください。

cttp://www.uscis.gov/portal/site/uscis

専門職ビザとして最も一般的なH1-Bビザは年間に発行されるビザの数が
65000件と決まっています。ただし、アメリカの修士号以上の学位を
持つ申請者に対しては20000件までこのリミットが適用されないことに
なっていますので、Ph.D.を持っているとビザ取得に対して有利では
ありますが、ビザを取得するまで多少の時間がかかることは予想されます。
OPTを持っていれば、オファーをもらってから (リミットはあるものの)
すぐに仕事を始めることが出来ます。もちろん、H1-Bビザの申請は出来る
限り早く行う必要はありますが。また、グリンカードの申請も早めに
考えた方が良いでしょう。


会社研究・仕事の見つけ方
-仕事を見つける方法をいくつかあげてみたいと思います。

-       ホームページ
最近はどの会社のホームページにも(これは大学や国立研究所などアカデミックな
仕事にも当てはまる)必ずと言っていいほどEmployment/Job opportunity/job seekerの
項目があります。興味のある仕事にアプライするにはユーザー登録をして、
レジュメ、カバーレターをアップロードする必要がありますが、一度、
レジュメをアップロードしておくと、後から別のポジションにも応募する
ことができます。

-       Job Search engine
最近はこの手のSearch Engineはネット上に無数にあるので、
ここで一つ一つ列挙はしませんが、以下のサイトは比較的有用です。
-       www.indeed.com (Smart phone用のAppは便利)
-       www.monster.com
-       コネクションからの紹介

コネクションからの紹介は採用の可能性が最も高くなります。コネクションから
紹介をもらう場合、コネクションの方からアプローチしてくる場合と自分の
方から紹介してもらえるようにアプローチする場合があります。
コネクションの方からアプローチしてくる場合…

(例) 今、うちの会社で…のような人材を探しているんだけど、君、
誰か思い当たる人はいないかな。

という連絡が来た場合、5割以上は連絡を受ける当人、つまりあなた
ターゲットにしていると言えます。実際、このような連絡は何度か
受けたことがありますし、自分も友人にこのような連絡をしたこと
があります。
返答として、「いや、その仕事、面白そうだね、私が興味あるよ」と
言った場合、やっぱりそうか、是非、アプライしてくれないか、
と話がとんとん拍子に進んでゆきます。

自分の方からアプローチした場合…
うまくいくかどうかはコンタクトの関係やコンタクトがオープンポジションに
対してどの程度、影響力があるかなど、いくつかのファクターが影響します。
実際、私も、知り合いの人からレジュメを受け取ることがありますが、
同じポジションに対して複数の知人からのアプリケーションを受け取った
場合、もちろん、ポジションへの適正も考えますが、当然、よく知っていて
良い関係のあるコネクションの方が人柄や能力(レジュメだけでは読み取れない
ことも多い)とポジションとの適性を判断しやすく、当然、推薦しやすいと
言えます。


━━━━━━━━━━━━━━━━━
カガクシャ・ネットワーク http://kagakusha.net/
(上記サイトで無料ユーザー登録後、バックナンバー閲覧可)
発行責任者: 石井 洋平
編集責任者: 石井 洋平
メールマガジンの登録と解除:
http://www.mag2.com/m/0000220966.html
ご連絡はこのメルマガに「返信」または以下のページから:
http://kagakusha.net/Mailform/mail.html
友人・お知り合いへの転送は自由ですが、無断転載は禁じます。
転載ご希望の際は必ずご連絡ください。
━━━━━━━━━━━━━━━━━

【海外サイエンス・実況中継】アメリカ就職への道: 第一回

posted Nov 3, 2013, 1:22 AM by Yohei Ishii

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
_/
_/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』
_/ Nov. 2013, Vol. 64, No. 1
_/ カガクシャ・ネットワーク → http://kagakusha.net/
_/
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

- From editors --
アメリカでの就職には英語でのハンデはもちろんのこと、外国人である
ことによるビザの問題、レジュメ、面接など、日本とは大きく違うこと
があります。
今回の記事ではアメリカにおける就職活動についての記事を
書いていただきました。今回はネットワーク作りまでを紹介して
いただきます。
------------------

これまでカガクシャネットのメールマガジンにてPh.D取得後のキャリアに
ついていくつものエッセーが紹介されてきましたので、過去ログも参考に
していただきたいのですが、今回のエッセーではこの就職難の時代に、
アメリカで企業就職を目指す上で役に立ちそうなことをいくつかあげて
みたいと思います。もちろん私も決して就職の斡旋のエキスパートでは
ありませんので、エッセーの内容はこれまでの私の経験を元にしたもの、
つまり、一つの例である、と考えていただければよいと思います。


企業で研究・技術系の仕事を見つけるための準備

-学業面

アメリカの大学院でのコースワークの内容の濃さは良く知られており、授業
を取り過ぎると、研究の時間が少なくなるかも知れませんが、最初の1-2年
は出来る限り幅広い知識を身につけるために、少し多めにコースワークを
することをお勧めします。また、企業就職に必須の授業も存在します。
例えば、私が在籍した工学系の大学院プログラムでは企業就職を目指す
大学院生は履修することを推薦されていた“Design of Experiment”(略してDOE)
という授業がありました。これは簡単に言うと統計学的見地に基づいて、
複数ある実験パラメーターをコントロールする実験を設計し、最小の実験で
最大の知見を得るための基本知識です。この知識は自分の研究を進める上で
ももちろん役に立ちますが、工学系企業研究者・技術者には必携のスキルです。
DOEは一例ですが、それぞれの専門分野、業界で要求される基礎知識を教えて
いるクラスがあるはずですから、是非、履修しましょう。将来、就職活動で
大きな助けとなるはずです。

-インターンシップ

インターンシップが出来るかどうかはもちろん、教授・プログラム次第ですが、
可能であるならば、大学院に在籍中、特に夏の3ヶ月間にインターンシップを
経験することは将来、就職の大きな助けとなります。
例えば、インターンシップ先の企業からオファーをもらう人もいますし、
インターンシップが職務経験として活きてさらによい仕事を見つけられる
場合もあります。
インターンシップをする場合、一時的に、Research Assistant (RA)を
辞めなといけないかもしれませんし、教授の反対があるかもしれません(研究が滞る)。
指導教官とは十分に話して理解・サポートをしてもらう必要があります。

-良いネットワークを築く

アメリカでは約6割(もっと多いと言う統計もある)の人たちがネットワークを
通じて仕事を見つけているそうです。これだけ割合が高くなると、
外国人である私たちはなおさらネットワークの力を無視することは
できません。ネットワークを築くことは一朝一夕には出来ません。
大学院入学前はもちろん入学後も出来る限り多くの人、クラスメート、
同じ学科・他学科の院生、教授と知り合いましょう。
知らない人と話すのが苦手な人もいるかもしれませんが、理系大学院に
やってくる人たちの多くはアジア諸国を中心とした外国人であり、
一緒に勉強し切磋琢磨できる友人を探しています。少し自分のComfort Zoneの
外に出てみて、知らないクラスメートに挨拶をしたり、質問をしてみると、
そこから素晴らしい友人関係が生まれるかもしれません。
先日、仕事で母校の恩師の研究室を訪問した際に、研究室の大学院生15人ほどに
会いましたが、後で個人的に自己紹介をしに来たのはその中の2人だけでした。
このような機会(企業で働いている卒業生と直接知り合いになる)は大きな
チャンスですから、自己紹介をし、名詞の交換、あるいはレジュメの
手渡しをしましょう。
私が就職活動をしていた頃、修士号を取って卒業し、半導体企業に
勤めている元クラスメートが、自分の出身研究室を訪問し、その研究室の
院生・ポスドク5人を一度にその会社に採用していくのを目の当たりに
しました。その当時、アメリカは不景気で、就職活動で四苦八苦していた
私は彼らを羨望の眼差しで見ていました。
学会を有効に使いましょう。学会にはアカデミックな研究者、大学院生
だけではなく、多くの企業人もやってきます。興味のある企業の人には
勇気を持って積極的に話してみましょう。実は私の今の仕事は学会+
ネットワークを通じて見つけました。学会に出席した際に、同じ研究室
にいたVisiting Scientistの方の紹介で企業技術者の方にお会いし、
その縁でその会社に就職することになりました。ただ、その方にお会い
してから実際に就職するまで2年以上かかっており、知り合えばすぐに
仕事を紹介してもらえる、という単純なものではないことを強調したいと
思います。普段からネットワークを広げる努力をしていく必要があります。

-インターネットをネットワーク作りに活用する

Facebookを創設したMark Zuckerburgを描いたThe Social Networkという
映画が2010年に公開されたのはまだ記憶に新しいかと思います。
Facebookはかなりプライベートなソーシャルネットワークですが、
もう少し、Professional なネットワーキングに特化した

www.linkedin.com

があります。スタンダードのアカウントを作るのは無料なので、
まだアカウントを作っていなければ、是非、作ることをお勧めします。
このネットワークサイトを利用すると、自分の興味のある分野で
活躍する人たちの存在を知ることが出来ます。サイトのツールを
利用すると会ったことがない人に対してもネットワークに入って
もらえるようにリクエストすることは出来ますが、会ったこと、
話したことも無い人とのネット上のコネクションは実際にインタラクションを
持ったことのあるコネクションに比べると当然、弱くなってしまいます。
私も時々、全く知らない人からリクエストが来ますし、実際に
リクエストを受け入れたことも多々ありますが、やはり実際に
知っている人とのコネクションとは比べ物になりません。また、
知らない人のリクエストを受け入れてネットワークでつながった
直後に仕事を紹介してくれ、と言われたことが何度もありますが、
一応、レジュメはHRに転送しておくとは言いますが、正直、
このような人には仕事は紹介しませんし、推薦もしません。
直接あったことがある人とのコネクションは別とし、大学院生の
限られた機会の中で、ネットワークを広げるために出来ることとして、
例えば、LinkedInならば、様々な専門分野のネットワークグループが
あるので、そのネットワークグループでのディスカッションに積極的に
参加することは、ネットワークを広げる上でプラスになりえます。
もちろん、発言内容によってはマイナスにもなりえますので、
注意が必要です。

-良いネットワークとは

プロフェッショナルな意味での“良い関係”と言うのは
Give and takeだと私は思います。例えば、面識があまりない人に
大きな頼みごとをしても、実際に頼みごとを聞いてもらえるのは
難しいというのは容易に想像できるかと思います。
気のおける友人は別として、コンタクトの人に仕事を紹介してもらう、
あるいは強く推薦してもらうにはその前に、彼or彼女なら推薦できると
思わせる何かが必要です。すでにその人のためにあなたが何かを
してあげていたらつまり“Give”のプロセスがあったとしたら
どうでしょうか。あなたなら、自分を助けてくれたことのある人と
そうでない人のどちらを助けたいですか。もちろん大きなことを
する必要はないですよ。

-----------------------------------------------
次回は就職活動にはかかせないレジュメの準備から紹介していただきます。
お楽しみに。

━━━━━━━━━━━━━━━━━
カガクシャ・ネットワーク http://kagakusha.net/
(上記サイトで無料ユーザー登録後、バックナンバー閲覧可)
発行責任者: 石井 洋平
編集責任者: 石井 洋平
メールマガジンの登録と解除:
http://www.mag2.com/m/0000220966.html
ご連絡はこのメルマガに「返信」または以下のページから:
http://kagakusha.net/Mailform/mail.html
友人・お知り合いへの転送は自由ですが、無断転載は禁じます。
転載ご希望の際は必ずご連絡ください。
━━━━━━━━━━━━━━━━━

10/13 【海外サイエンス・実況中継】分科会紹介

posted Oct 13, 2013, 1:09 AM by Yohei Ishii

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
_/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』
_/ Oct 2013, Vol. 63, No. 1
_/ カガクシャ・ネットワーク → http://kagakusha.net/
_/
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/


- From editors --
カガクシャネット分科会紹介です。カガクシャネットでは、大学院留学
への情報以外にも、さまざまな活動をしており、その一環として
分科会を設立しています。現在3つの分科会があり、医学、航空宇宙、
女性会があります。興味のある方は、下記の記事の担当メールアドレス(atを
@へ変更後)へ直接ご連絡お願いいたします。

------------------

カガクシャ・ネット医学分科会の紹介 
http://www.kagakusha.net/activities/medical-society

カガクシャ・ネットは欧米のPhDコースで大学院留学をしている日本人
のコミュニティで2000年に設立されました。幅広い地域の大学・研究機関で、
様々な理系分野に研究従事する人達が集まっており、海外大学院留学の実現、
留学後のキャリア構築の応援、メンバー間や留学希望者とのネットワーキング、
国際的に活躍できる次世代リーダーの育成等に取り組むことで、日本科学技術の
未来に貢献することを目的としています。今年度より医学分科会が立ち上がり、
医学部出身者も含めて医学研究をしている大学院生やOB・OG11名で情報交換や
科学的な議論を行っています。毎月スカイプ会議を行ったり、各自の
プロジェクトや研究分野のバックグラウンドを発表し活発に議論しています。
海外でPhDコースをされている方の参加を歓迎しています。

参加希望する方は杉村 ryohichi.sugimura at gmail.com までご連絡お願いします。

--------------------------------------------------------

カガクシャ・ネット女性分科会の紹介 
http://www.kagakusha.net/activities/society-for-women-researchers
女性分科会は、理系の大学院留学生、卒業生、あるいは大学院留学を
目指す女性同士のつながりを作り、女性のキャリア構築や生き方、
キャリアと結婚、出産、育児といったライフイベントの両立などに
ついての考えや、価値観を共有したり、また情報発信をすることで
女性の活躍をサポートすることを目的としています。
現在、メンバーは日本、アメリカ、ヨーロッパなどの大学や
研究機関に属する学生あるいは研究者の方10数名がおられます。
子育てと研究との両立のコツ、国によって違う育休制度や子育てへ
の考え方、あるいは、研究生活とプライベートの時間との両立の
仕方、そしてさらには、パートナーの見つけ方(?)などいろんな
ことをざっくばらんに話したりしてみませんか?
同じような研究の世界に身をおいている女性同士でいろいろ
話すことで、悩みを分かってもらえたり、意外なアドバイスが
得られたり、また励みになるのではと思い、この分科会を設立
しました。
ご興味のある方は岩田aikiwata at gmail.comまでご連絡ください。
また、女性分科会から発信のメルマガ記事作成のための
アンケートにもご協力ください。http://start.cubequery.jp/ans-0125953e

--------------------------------------------------------------------

カガクシャ・ネット航空宇宙分科会の紹介 
http://www.kagakusha.net/activities/aerospace-society
 
航空宇宙分科会の主な目的は、航空宇宙分野での留学支援、キャリア構築の
ための情報効果やネットワーキングの構築です。現在は、同分野で留学を
\目指す学生、現役留学生、留学経験者の10数名が参加し、定位的な
ウェブMTGで留学や専門分野についての情報交換を行っています。その他に、
生産現場に対しての理解を深めるため工場見学や、同分野において世界で
活躍している方々へインタビューを実施しています。
航空宇宙に興味のある方、同分野での留学に興味がある方、留学中の方、
卒業生の方の参加を歓迎しています。

興味のある方は気軽に高橋(dsuke83 at gmail.com)までご連絡下さい。

--------------------------------------------------------------------

━━━━━━━━━━━━━━━━━
カガクシャ・ネットワーク http://kagakusha.net/
(上記サイトで無料ユーザー登録後、バックナンバー閲覧可)
発行責任者: 石井 洋平
編集責任者: 石井 洋平
メールマガジンの登録と解除:
http://www.mag2.com/m/0000220966.html
ご連絡はこのメルマガに「返信」または以下のページから:
http://kagakusha.net/Mailform/mail.html
友人・お知り合いへの転送は自由ですが、無断転載は禁じます。
転載ご希望の際は必ずご連絡ください。
━━━━━━━━━━━━━━━━━

9/15 【海外サイエンス・実況中継】アンケートから見る!大学院留学準備

posted Oct 7, 2013, 7:55 PM by Souichiro Hioki   [ updated Oct 7, 2013, 7:57 PM ]

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
_/
_/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』
_/ August 2013, Vol. 62, No. 1
_/ カガクシャ・ネットワーク → http://kagakusha.net/
_/
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

- From editors --
カガクシャ・ネットのメンバーには多くの海外大学院留学生/修了生に加え、
学位取得を目的とした大学院留学を目指しているメンバーが多く在籍しています。
そこで今回のアンケートでは、大学院留学の準備で大きな壁となる、大学選びと
各種試験対策、そして渡航後の経費をまかなうTA/RA制度について、留学経験のある
メンバーからの声を集めました。さっそく大学院留学の実態を覗いてみましょう!
------------------

1.大学選びについて
大学選びはいつごろから、どんなルートで行なっていくことが多いのでしょうか?
自分の興味のある分野をより深く勉強するために重要な大学選びについて、くわしく
見ていきます。

[質問]
 いつごろから大学選びを本格的に始めましたか?最も近いものを選んでください。
[回答]
 大学1・2年生    1
 大学3年生      2
 大学4年生      5
 大学院修士課程   5
 大学院博士課程   0
 卒業後または修了後 0
 就職後       1
 その他       1

大学選びの時期としては、大学4年生から修士課程という場合が多いようです。大学選びの
方法でも、多くのメンバーが自分自身のやりたいことを中心に論文を探したり、指導教員の
アドバイスを参考にしたり、人脈を活用したりしていました。このようなスタイルで大学
選びをする場合、研究室に所属する大学後期から修士課程にかけて、大学選びのハードルが
グッと下がるのかもしれません。一方で大学1,2,3年生から大学選びを始めたメンバーも
少なくありません。このようなメンバーからは「自分の興味のある分野、地域、知っている
人がいる場所などを総合的に考えていくつか訪問して出願を決め、受かった中から条件が
最適な物を選びました。」というように、多くの選択肢から幅広く選ぶことができたことが
伺えるコメントが多くみられました。また、複数大学院への訪問と応募を考えている場合、
余裕のあるスケジューリングが必要になります。やりたいことが漠然としているなら、
大学1,2年生のうちからどの大学が強いのかを調べておくことも、一手と言えます。
では、いぜ大学選びをするときには、どのような情報を参考にしているのでしょうか?

[質問]
 大学選び・研究室選びで参考にした情報源をすべて選んでください
[回答](複数回答可)
 留学先大学のWebページ         12
 所属大学の教員            9
 先輩や友人              7
 雑誌                 6
 留学先大学以外のWebページ       5
 図書                 3
 所属大学以外の教員          3
 所属大学以外の国際交流・留学支援団体 2
 所属大学の国際交流部門        1
 その他                3
(留学先大学以外のWebページは質問サイトなどを含む)

今回回答したメンバーのうち、実に8割のメンバーが留学先大学のWebページを利用して
いました。自分の机から留学先大学の情報を得られるWebは非常に魅力的なツールと
言えるでしょう。その一方で、2番手、3番手につけているのが所属大学の教員、先輩や
友人などのface-to-faceな情報です。前述のように指導教員の知り合いの教授の研究室
を留学先にするメンバーが多かったことを考えれば、この結果は納得がいきます。また、
同じ分野で留学経験のある先輩からの情報があると、指導教員のつながりが自分の関心の
ある分野を学ぶのにふさわしいかどうかを判断する助けになります。また、ランキングには
あまりはっきりとは現れませんでしたが、論文を検索したメンバーが多かったことも興味
深い点です。どの程度の時代の論文までさかのぼるかは研究分野しだいですが、近年成果を
出しているアクティブな研究室を選ぶためにも、論文から入ることは有効な手段でしょう。

2.試験対策
大学選びも重要ですが、ほとんどの場合で英語能力試験(TOEFL,IELTS)や学術試験
(GREなど)の受験対策を行うことが必要です。それぞれの試験対策を始める時期は
いつごろが多いのでしょうか。

[質問]
 試験対策を始めたのは、はじめて試験を受けるどのくらい前ですか?
[回答]
           英語 学術
 1ヶ月未満       1  1
 1ヶ月以上・半年未満  5  3
 半年以上・1年未満   1  4
 1年以上        7  5
 その他         1  2

アンケートによると、英語能力試験の対策は短期集中型と長期継続型の2パターンがあり、
学術試験の対策はおおむね1ヶ月以上の期間をかけるケースが多いことがわかります。
勉強法としては、「ひたすら練習」「とにかく何回も受ける」「TOEFLはパターンがある」
など、日頃から継続的に英語を練習し、試験の数をこなしてよいスコアを取る戦術が多く
みられました。また、「GREはTOEFLで高得点が取れるようになってから短期集中で
勉強すればよい」など、試験会場が遠い、経済的に難しいなどの理由で試験があまり
受けられない場合には、どちらかの試験に重点を置く方法も有効かもしれません。
英語力は大学院に入学するためだけでなく、その後の研究と留学生活を充実させる上で
非常に重要です。本業である研究に支障の出ない範囲で努力を重ねていくこと、
そしてモチベーションを維持していくことが鍵のようです。

3.Teaching Assistant / Research Assistant
さて、海外大学院生の一番の特徴と言えるのは、学費や生活費を自分で支払っている学生が
日本に比べ非常に少ないということですが、それができるのは、授業を補佐するTeaching
Assistant(TA)という奨学金、研究を行うResearch Assistant(RA)という奨学金を
獲得することで、授業料免除に加え生活費が支給されるためです。では実際、いつ応募し、
どのような仕事をして、いくらほどもらえるのでしょうか。

[質問]
 TA/RAに申し込んだ時期(または、留学先大学に希望する旨を伝えた時期)について、
 一番近いものを選択してください。

[回答]
 大学選びの時期    3
 出願の時期      6
 合格後・渡航前    1
 渡航後・ 1年目    2
 渡航後・ 2年目以降  0
 セメスターごとに応募 1
 TA/RA をしていない  2

出願時または大学選びの時期という解答が最も多くみられます。PhD program に応募する
場合、合格通知とともに自動的にTA/RAを獲得できる場合が多いですが、Master programに
応募する場合、出願時に条件として提示または交渉しなければTA/RAを得ることが難しい
場合が多いです。このため、Masterで応募する場合、事前にTA/RAを得られるか確認する
ことが特に大事です。TAは学科のスタッフに、RAは担当教授に質問するのがいいでしょう。

理系の分野の場合、PhD programなら5年間TAが保証されていることが多いですが、それでも
セメスターごとに応募することが普通です。文系の分野の場合、TA/RAの獲得が理系に比べ
難しい印象を受けます。TA/RAはpart timeと呼ばれる週20時間労働(F-1ビザの学生は
これ以上働くことはできません)が普通です。TA/RAは個人の研究時間を割かれてしまうので、
外部の奨学金で学費、生活費をカバーできるのがベストです。そのためTA/RAが保証されて
いるPhD programでは、TA/RAは保険のように考えられ、外部の奨学金で生計をたてる方が
研究効率上良しとされています。海外の大学院では学費+生活費をカバーするTA/RAは
当たり前の制度なのです。

【TA/RAの仕事】
では、実際にTA/RAはどのような仕事をするのでしょうか?
TAの仕事内容は分野によってもちろん異なりますが、採点、実験補佐、小授業、ディス
カッション、課題作り、試験監督、課外学習などの組み合わせです。生徒が質問できる
オフィスアワーをもうけるのが普通です。クラスの生徒数は20人前後から100人以上まで
まちまちで、それによってTAの人数も1人から30人ほどまで様々です。内容も採点だけの
クラスから、lab sectionと言われる小グループに対し実際に授業を行うクラスまで
様々です。

筆者の在籍するアメリカの大学ではクラスがレベル分けされており、そのレベルやクラスに
よって仕事量が異なります。例えば、筆者は哺乳類学や集団遺伝学のような40人ほどの
大学院生も受講する高いレベルのクラスから、一般生物学という850人ほどの新入生が
受講する入門的なクラスまでTAを経験しましたが、高いレベルほど「準備に費やす時間は
多いが生徒を良く知ることができやりがいがある」、入門レベルほど「形式化されている
ので教えるのは簡単だがやりがいにかける」という印象を受けます。簡単にまとめれば
クラスによって内容も仕事量も大きく変わると言えます。

RAは一般的に理系の分野に限られますがその仕事内容は様々です。個人の研究活動、
実験室の試薬/機材購入、担当教授の研究助成金(グラント)の資料作成、予備データの
取得などの組み合わせです。TAの給料は学科/大学が負担していますが、一般的にRAの
給料は担当教授のグラントから負担しています。 このため、担当教授がお金(グラント)を
もっているかどうかで、RAが存在するかしないかが決まる場合が多いです。自分の所属する
担当教授がRAを採用していなくても、他の研究室や他学科でRAをすることも可能です。
お金をだしているのが教授なので、仕事内容はその教授からだされた課題ということに
なります。もし担当教授が自分の所属する研究室なら、仕事内容が卒業研究の一部として
つかえる場合が多いので一石二鳥です。個人的にはRAをした経験がないですが、アンケートに
よるとPhD programの分野によって入学時に基本的にRA採用されるという大学院もあるようです。

【TA/RAの報酬】
気になる給料はいくらほどもらっているのでしょうか。一般的にTA/RAの給料は、月に
1500~2200ドル程度です。幅があるのは、物価、地価の違いに地域差があるためで、
給料が変わってくるためです。例えば、生活費の高い地域では、2000ドルを超えることも
あります。贅沢をしなければ不自由なく生きていける金額です。この給料に加え、学費や
保険料が免除されます。留学生は最低取得単位が決められており、一学期の学費はたちまち
100万円(200万円以上の私立も)を超えてしまうため、この学費の免除は非常に助かります。
現地の学生の学費は格段に安いので外部の奨学金で学費をカバーできることが多いですが、
留学生はPhD programの5年間TA/RAをやり続けるという場合も少なくないのはこのためです。

【TA/RA制度のまとめ】
PhD programによってはTAを必修としている大学も多く、TA制度は単に学生を援助するだけ
ではなく、「教える」ことのトレーニングを兼ねている場合が多くあります。R-1 Universityと
呼ばれる研究重視の一流大学の大学院は、研究者を育成することを目的としており、教育者を
育成するという面に欠けていますが、TAをすることで教育に目覚め、高校やCommunity College
(短期大学)で研究者より講師を目指したいという学生や、博物館や企業などで広く教育活動に
携わりたいという学生が生まれたりします。もちろん、人に何かを教えることは自分がその分野を
より深く勉強するきっかけにもなります。

お金をもらって研究するRAは、日本ではあまりみられない制度です。同世代の人間がバリバリ
働いている中、親のすねをかじりながら学生をしているという一般的な日本の大学院生の心情と、
自分は研究をしながら生計を立てているというアメリカの大学院生の心情では、研究者としての
プロ意識に違いが生まれるように思います。TA/RAという制度は、お金の心配をしなくて良い
という面だけでなく、人間としての成長が期待できるという面でも魅力的な制度と言えるでしょう。

━━━━━━━━━━━━━━━━━
カガクシャ・ネットワーク http://kagakusha.net/
(上記サイトで無料ユーザー登録後、バックナンバー閲覧可)
発行責任者: 石井 洋平
編集責任者: 鈴木 太一, 日置 壮一郎
メールマガジンの登録と解除:
http://www.mag2.com/m/0000220966.html
ご連絡はこのメルマガに「返信」または以下のページから:
http://kagakusha.net/Mailform/mail.html
友人・お知り合いへの転送は自由ですが、無断転載は禁じます。
転載ご希望の際は必ずご連絡ください。
━━━━━━━━━━━━━━━━━

7/29 【海外サイエンス・実況中継】アメリカ就職活動Q&A

posted Jul 27, 2013, 10:53 PM by Souichiro Hioki   [ updated Jul 27, 2013, 10:55 PM ]

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
_/
_/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』
_/ July 2013, Vol. 61, No. 2
_/ カガクシャ・ネットワーク → http://kagakusha.net/
_/
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

-----------------What's New?--------------------------------
カガクシャ・ネット ウェビナー「研究留学からのプロフェッショナルキャリア」
(8月18日(日)10:00〜)の参加登録が始まりました。皆様のお申し込みをお待ちしています。
詳しくはこちらから ==> http://www.kagakusha.net/webinar_2013_01
------------------------------------------------------------
- From editors --
今週のメールマガジンでは、アメリカでの就職活動における一連の流れについて、
アメリカ大手IT系企業にてご活躍されている方からの生の声をQ&A形式で
お送りします。就職活動の流れや面接でよく出会う質問など、就職活動を
検討されている方には必見です。じっくりお楽しみください。
------------------

Q1. 大学院留学先学部学科を教えてください。
A1. コンピューターサイエンス

Q2. キャリアプランについてはいつごろから考えていましたか?
A2. 留学数年前から。ただし紆余曲折あり。

Q3. 就職先はアカデミアですか?それとも企業就職でしょうか?
A3. 企業就職
 
Q4. それは、どういった分野ですか?大学院研究との関連性はありましたか?
A4. ソフトウェア R&D / 研究との関連性は非常に高い

Q5. 就職先をそちらに選んだ動機を教えてください。
A5.
  そこで働く人から研究・開発ともに学べそうだったから.
  小回りのきく自由な環境だから(10人程度の小規模な研究開発支部).
  大学での研究との近さ.
 
Q6. 就職活動時期、就職活動のプロセスについてお願いします。
  どういったプロセスを経てオファーをいただきましたか?
A6.
  10 月頃から academia/industry 双方向けに resume/CV, research
  statement, (academia 用に)teaching statement, job talk 等を準備。
  担当教官等と議論して手直しを重ねる。12 月に多数の大学と企業に apply.
  12 月から 3 月にかけて各地で job talk と on-site interview.
  オファーは 1 月から 3 月にかけて。
 
Q7. 実際にあった面接での質問を教えてください。
A7.
  ほぼ全ての面接で自分の現在・将来の研究についての質問が主だった。
  自分の研究と関係ない、知識・頭の回転速度を試すような質問を受けたのは
  一社のみ。その会社は研究所ではなく純粋な start-up だったため。
  大学・研究所での面接に対してはいわゆる algorithm puzzle 等の
  面接対策をする必要は全くないと感じた。
 
  以下に実際の質問例を頻度順に。

   Do you have any questions on <organization>/<city name>/
   <projects>/visa/etc?
  皮肉だがこれが一番多い質問。One‐on‐one面接の数だけ受けて辟易する
  こともしばしば。自分が面接する側になるとどうしても常にこう言って
  しまう訳が分かる。面接官に悪気は全くない。

   What do you want to work on _here_? 
   We have <some constraint>/<some characteristic>/etc,
   are you okay with that?
  面接する側される側ともに最も知りたいのは適材適所かどうか。
  当然こういう質問が多い。

   During your internship/work at XXX, what did you work on there? 
   Your work seems to have issue/limitation/etc on YYY,
   how did you deal with it?
  XXX/YYY はその面接官がよく知っている会社/分野であることが多い。
 
   What was your role in ZZZ project on your resume?
  どちらかというと round-table/phone interview で多い質問。ZZZ は
  その組織の人たちが現在必要としている技術/分野に関連していることが多い。
 
  その他 job talk 時のプレゼン資料に対する質問が多い。ただこれは
  学会発表と同じように回答すればよいので特段気にする必要はない。
 
Q8. 面接で気をつけることを教えてください、また就職活動において
  重要だと思われたことを教えてください。
A8.
  相手が何に興味を持っていて、どういう背景で、何を知りたいのか、
  よく理解すること。そこが明らかでなければ明らかになるまで
  丁寧に質問を重ねること。
 
  On‐site interview に呼ばれている時点であなたの研究は十分に有意義と
  認識されている。自分の成果を強調するような受け答えは必要ないばかりか
  時に有害。一緒に働きたいと思われるように努めること。
 
Q9. 就職活動での苦労、大学院生生活において就職活動準備としてするべきことを
  教えてください。
A9.
  就職活動自体での苦労は特になかった。どの面接官も interviewee に良い
  印象を持ってもらいたいので、例外なく最大限の便宜を図ってくれる。
 
  重要な準備は以下の通り
  ‐ 研究成果を重ねること。
  ‐ Summer intern 等で経験を広げ、自分を知ってくれる人を作ること。
  ‐ 時期が来たら培った人脈を通して「直接」いろいろな人に
   自分が求職中であることを伝えること。
  ‐ Job talk の準備は念入りに。
 
Q10. これから就職活動をする方へのメッセージをお願いします。
A10.
  特に工学/科学では、就職活動は長い大学院生活をやり遂げたご褒美みたいな
  ものと気楽に捉えればよい。自分の研究に多くの人が真剣に興味を持って
  くれて、彼らの目的に向けてどうその知識・経験を生かせるのか前向きに
  議論してくれる。このような状況は文字通り有難い。

貴重なお話をいただき、ありがとうございました。

━━━━━━━━━━━━━━━━━
カガクシャ・ネットワーク http://kagakusha.net/
(上記サイトで無料ユーザー登録後、バックナンバー閲覧可)
発行責任者: 石井 洋平
編集責任者: 石井 洋平
配信責任者: 日置 壮一郎
メールマガジンの登録と解除:
http://www.mag2.com/m/0000220966.html
ご連絡はこのメルマガに「返信」または以下のページから:
http://kagakusha.net/Mailform/mail.html
友人・お知り合いへの転送は自由ですが、無断転載は禁じます。
転載ご希望の際は必ずご連絡ください。
━━━━━━━━━━━━━━━━━

7/07 【海外サイエンス・実況中継】アンケートから見る!学部/大学院教育における日米の違い(後編)

posted Jul 7, 2013, 5:11 AM by Souichiro Hioki   [ updated Jul 7, 2013, 5:16 AM ]

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
_/
_/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』
_/ July 2013, Vol. 61, No. 1
_/ カガクシャ・ネットワーク → http://kagakusha.net/
_/
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

- From editors --
今週のメルマガでは前回に続き、学部/大学院教育における日米の違いについて、
カガクシャ・ネットのメンバーを対象に行ったアンケートをもとに迫ります。
前回のメルマガでは、学部/大学院の教育課程について特徴を分析しました。
2部構成の後編である今週は、教育課程に大きな影響を与えている、日米の
大学経営の特色を明らかにします!
------------------

【 Question 3 】

日米の大学経営を比べて、教育上大事な違いがあると思うことはなんですか?

1位:教員、TAへの給料(10票)
2位:教員のリクルーティング(8票)
3位:研究への投資(6票)
4位:宣伝/広告への投資(4票)
5位:歳入に占める学費の割合(3票)
5位:その他(3票)
7位:施設への投資(2票)
8位:教員と生徒の比率(1票)      (複数回答可)

日米の大学経営上、一番の違いは教員、TAへの給料でした。「日本に比べ、ウハ
ウハである(アメリカ教員)」、「獲得した研究費の大部分は人件費として教員や
TA・RAへの給料となる」など、アメリカの教員の給料が日本に比べ高いことが
挙げられています。

教育上のポジティブな効果では、アルバイト的な日本の大学院生のTAと異なり
「研究において大きな職業意識と責任感が芽生える」、「研究を通じた経済的な
自立=研究者としてのやり甲斐」、自らの研究費から自らの給料が支払うアメ
リカの大学院は「スター教授が生まれやすい土壌である 」、などの点で直接的な
経済的効果だけでなく、特に大学院生の研究意識の向上にもつながっているよう
です。逆にネガティブな効果としては、「良い教授がたくさんいる結果として、
学費の高騰が抑えきれない」などが挙がっています。

教員のリクルーティングが給与に続き、経営上の特色の第2位に挙っています。
アメリカの大学院では「教員候補との会話やセミナーが学生に公開」、「教員の
採用には時間もお金もかける」、「外部の研究者を好んでリクルート」など、
教員を確保したいという意欲の違いが指摘されています。その証拠の一つに、
最近では優秀な教員候補がいる場合、その配偶者も博士号取得者であれば、同じ
大学内でポジションを提供(夫婦そろって同時採用)をするよう努めることは
特筆に値するでしょう。優秀な教員候補は複数校から声がかかることが多いので
大学側も優秀な人材を獲得することに必死なのです。また、一度雇用した教員でも、
数年ごとに研究業績に関する査定があり、採用された教員側は終身在職権(Tenure)を
とるまで安心できません。

研究への投資では、上記の競争型の教員採用や研究室システムがその違いを
物語っています。アメリカの研究室システムでは、日本のように一つの講座内に
教授、准教授、助教という複数の教官がいる訳ではなく、研究予算があって
ポジション(faculty member)がとれれば、独立したラボがもてます。さらに
研究や指導の効率を上げるため、ラボマネージャーという指導専門の役職やテクニ
シャンという雑用専門の役職を置いたり、学部生という労働力を単位と引き換えに
雇ったりと、研究の生産性に重点を置いていることがわかります。一つの研究室が、
まるで小さな会社のようなシステムをとれるのは、 そういった人材を積極的に
採用し、その人材が外部から巨額の研究費をもってくることで労働力を支払う
ことができるためでしょう。特にR 1大学と呼ばれる研究重視の大学ではこの循環
そのものが研究の投資につながっているのかもしれません。

宣伝/広告への投資は、アメリカの大学院は特色かもしれません。「アメリカの
大学には世界中から優秀な学生・教員が集まる」、「日本の大学には日本語や日本
独自の環境が障壁となって、必ずしも優秀な学生・教員が集まるとは思えない」、
「研究成果が日本では日本語主体なので宣伝が弱い」など、アメリカは世界中から
優秀な学生を集め、多様性と生産性を確保することに力を入れています。他にも
大学をブランドとして、企業とコラボレーションして、大学スポーツグッズや
大学グッズを充実させています(日本でも有名大学は大学ブランドを売り出して
います)。地域密着型のイベント(セミナー、お祭り、古本市など)も毎週の
ように行っています。大学の研究成果や魅力を学術業界や地元社会に還元する
ことも大学経営上大事な要素なのかもしれません。


こうしてみると、日本の高等教育を改善する上で米国の高等教育制度から多くの
学ぶべき点があるように思います。米国大学の特色である1.短期間で高度な
専門性と自主性を養う充実したコースワークと奨学制度と、2.教員の質を教育・
研究の両面で高水準に保つ競争的制度は、学生にとって魅力的だからこそ、世界中
から多様な人種、年齢、背景をもつ学生を惹きつけているのではないでしょうか。
今や博士号をとっても就職難の時代だからこそ、国際的に通用する質の高い学位を
取得できるアメリカの大学は価値のあるキャリアパスの一つだと信じています。

------------------
この記事の前編(学部・大学院課程の特徴)は以下のリンクからご覧いただけます。
http://www.kagakusha.net/e-mag/2013-2/623-higer-edu-diff-usjp1

アンケートにご協力くださったメンバーの皆さま、ありがとうございました。

━━━━━━━━━━━━━━━━━
カガクシャ・ネットワーク http://kagakusha.net/
(上記サイトで無料ユーザー登録後、バックナンバー閲覧可)
発行責任者: 石井 洋平
編集責任者: 鈴木 太一
配信責任者: 日置 壮一郎
メールマガジンの登録と解除:
http://www.mag2.com/m/0000220966.html
ご連絡はこのメルマガに「返信」または以下のページから:
http://kagakusha.net/Mailform/mail.html
友人・お知り合いへの転送は自由ですが、無断転載は禁じます。
転載ご希望の際は必ずご連絡ください。
━━━━━━━━━━━━━━━━━
◎海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継
  のバックナンバー・配信停止はこちら
http://archive.mag2.com/0000220966/index.html

6/23 【海外サイエンス・実況中継】アンケートから見る!学部/大学院教育における日米の違い(前編)

posted Jun 22, 2013, 7:15 PM by Souichiro Hioki   [ updated Jun 22, 2013, 7:17 PM ]

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
_/
_/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』
_/ June 2013, Vol. 60, No. 2
_/ カガクシャ・ネットワーク → http://kagakusha.net/
_/
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

-----------------What's New?--------------------------------
米国大使館主催の留学説明会:AmericaEXPO が9/21に開催されます。
カガクシャ・ネットも冊子や広報で協力を行っています。学部留学を
検討している方に特におすすめな説明会です。
ウェブページはこちら:   http://americaexpo.jp/
------------------------------------------------------------
-- From editors --
今週と次回のメルマガでは、学部/大学院教育における日米の違いについて、
カガクシャ・ネットのメンバーを対象に行ったアンケートをもとに迫ります。
留学経験のあるメンバー16名のコメントから、学部/大学院教育における、
日米の特徴が見えてきました。2部構成の前編である今週は、学部と大学院の
課程のそれぞれについて、特徴を分析します!
------------------

【 Question 1 】
日米の学部(4年間)を比較して、教育上大事な違いがあると思うことはなんですか?

 1位:授業(11票)
 2位:学費(6票)
 2位:卒業(6票)
 4位:入学(4票)
 5位:就職(2票)
 5位:課外活動(2票)   (複数回答可)

日米の大学の一番の違いは授業であるという結果になりました。「必要な勉強量が
尋常ではない」、「積極的な参加が求められる」、「宿題の量が違う」、「授業の
質が濃い」、「勉強しない学生は間違いなく留年」、「Teaching Assistant (TA)に
よるサポート体制が充実」など、アメリカの学部生が授業に費やしている時間は
平均的に日本の学生より高いことは間違いないでしょう。それだけアメリカの授業は
授業外で学生に勉強させることがうまいということです。アメリカの授業の質の
高さの理由はいくつかあり、例えば教える側の教授も「学生評価」が昇進に関わる
ので授業の質の向上につながり、教わる側の学生も好成績をとることで多くの
メリットがあるので単位取得や好成績確保への動機づけとして機能しています。
たとえ授業についていけなくても、study groupという生徒同士の勉強グループや
TA(大学院生による授業補佐)に気軽に質問できるdiscussion sectionやoffice
hourなど、「学ぶ」システムが整っているのがアメリカの授業の特徴かもしれません。

学費はアメリカの大学の方が日本の大学に比べて高額であるという意見が多く
ありました。「私立はとてつもなく高い(日本の私大医学部並み)」、「米私立
大学の学費は、年間400万円程」、「州立でも留学生は州内の学生に比べ学費は
2倍から3倍」。学費が高い分アメリカでは奨学金などが充実していますが、
留学生が奨学金を勝ち取るのは相当困難です。学費の安いアメリカ短期大学から
スタートして現地の四年制の大学に編入したり、短期の交換留学でアメリカの
大学教育を経験したりするのも一つの手段かもしれません。

同率で卒業に関しても日米に違いあると指摘されています。アメリカでは、
「単位を取れないこと多々ある」のは事実で、日本の大学と比べ大学側が生徒を
留年させることにあまり抵抗がないように思います。また必要単位さえとれれば
卒業できるので、理系の大学でも「研究論文を書く必要がない」のが普通です
(日本でも卒業研究がオプションの大学がありますが)。また在学中に留学や
休学する学生も多く、入学した同期が同じ年に卒業するというのは日本に比べ
稀な気がします。

入学は日本と同様、共通試験や成績が考慮されますが、課外活動(ボランティア、
リーダーシップ、スポーツ実績など)が重要視されることが多くあります。
反対に大学在学中は授業が忙しく、日本の大学生のような課外活動(部活動、
サークル、バイトなど)は最小限です。むしろ在学中に企業へのインターンシップや
研究経験で特別単位を取得したり、それぞれのキャリア構築に役立つ課外活動が
主です。卒業後の就職は、日本と異なり、新卒が求められているわけではなく、
どのようなスキルをもっているか(大学での成績(GPA)や卒業後の活動)が
評価の対象になります。就職時にどこの大学を卒業したかだけではなく、
GPAが考慮されることが「大学で何を学ぶか」というモチベーションにもつながって
いるのかもしれません。


【 Question 2 】
日米の大学院(修士、博士課程)を比較し、教育上大事な違いがあると思うことはなんですか?

 1位:学費(12票)
 2位:授業(11票)
 3位:就職(6票)
 4位:研究(5票)
 5位:入学(4票)
 6位:卒業(3票)
 7位:その他(2票)   (複数回答可)

日米の大学院の一番の違いは学費でした。 アメリカの大学院は学部と対照的に、
「お金の心配がいらない」、「学費は無料になる」、「給料がもらえる」、
「援助無しで生活できる」、「奨学金が豊富」など学費について楽観的な意見が
多くありました。分野や研究室によって事情は異なりますが、アメリカでの理系の
博士課程は授業を教えるTA制度や研究を手伝うResearch Assistance(RA)制度があり、
学費・生活費がカバーされることが普通です。一方で、修士課程は博士課程と比べて
TA、RAを獲得するのが難しくなります。そのため修士課程だけを比較すると、日本
(特に国公立)の大学の方が学費が安く、奨学金を借りても返すことができる場合が
あるので経済的に分があるかもしれません。しかし、アメリカ大学院の財政的な
援助の充実は、「社会人入学が容易」になり、大学院生の「多様性が確保」され、
「教育上の競争力の向上」に寄与し、経済的に「自立性が育まれる」という
コメントがありました。またアメリカでは研究助成金も多く、競争的研究資金を
獲得できることも利点ですが、その申請プロセスも、研究の目的と方法が非常に
明確化するのに役立っています。

日本の大学院ではあまり重要視されない授業が2位に挙がっています。
「授業で求められる内容は、日本の大学院の授業の数倍に及ぶ」、「日本の大学院の
授業は手抜きな場合が多い」、「日本では授業はほとんどない」など、アメリカの
大学院の授業が厳しいことが伺えるコメントが多くありました。アメリカの大学院は、
アジアやヨーロッパの大学院と異なり、大学院から新たな分野を勉強することができ
るシステムになっているため、大学院の1、2年は厳しいコースワークが求められます。

就職に関して多く上がった意見は「専門性」でした。「米国では専門が就職に直結、
日本では企業がそこまで専門を期待していない(というか、マッチしていない)」、
「日本は、大学・大学院はスペシャリスト(特定の専門に長けた人)を求めるのに、
就職する際はジェネラリストを求める。アメリカは全くこの逆。」、「日本では
博士(大学の人材)をキャリアとして活用できる民間企業が少ない」、「アメリカの
会社では博士も積極的に採用する、日本のメーカーは修士中心」などの意見が
寄せられました。専門性の涵養は授業よりも実践重視の日本の大学院が得意と
するところのように思えますが、それが就職後に求められていないことで、
機能不全になっている実態が伺えます。

研究の違いでは自立性についてのコメントが多く見られました。ここでいう自立性
とは、一人で研究アイディアを生み出し、実験計画を立て、資金を獲得し、論文を
世に送り出す一連の作業のことです。アメリカの博士課程は、コースワークや小
プロジェクトを経て、「博士論文テーマを自分で見つける」のが一般的で、研究者
として何がしたいか考えるトレーニングも兼ねています。それとは対照的に、日本や
ヨーロッパの博士課程、アメリカの修士課程は、一からプロジェクトを生み出す
という作業が欠落している場合が多いように感じます(良いプロジェクトを教授
から与えてもらえることにもメリットはあります)。「博士とポスドクが研究室の
中心であるアメリカの研究室は、プロジェクトに責任感を持っている人が多く、
大学院生=修士学生=テクニシャンという概念が定着している日本の大学と比べると、
大学院生としてのプライドの持ち方が違ってきて、それが研究者としての自信・
喜びに繋がりやすい」という意見があり、共感しました。

アメリカでは、入学時に必ずしも目的の分野の専門知識が必要とされず、学力
試験以外にテクニシャン経験や研究経験など幅広く考慮されます。入学後は
配属する研究室が完全に決定しておらず、いくつかの研究室で小プロジェクトを
行い、所属先を決定できるというシステムが大学によってはあります。また卒業の
難易度に関して、日米で違いがある意見が聞かれました。日本は修士2年、
博士3年の5年間で通常博士号が取得できますが、アメリカの場合は十分な研究成果を
出したときが卒業時期となります。そのような理由から、大学院8年目といった
大学院生もいるほどです。それに加え、アメリカの博士課程中に行う適性試験
(comprehensive exam/qualifying exam/preliminary exam)は博士号取得の
関門の一つです。試験内容は学校、分野によって異なりますが、例えばあるトピックに
ついて7日以内にreview paperを書かせる筆記試験や、教授4人から3時間質問攻めに
あう口頭試験など、世に輩出する「博士の質」を維持するシステムをもつのがアメリカの
大学院の特徴かもしれません。博士課程に入学した生徒のうち半数近くを適正試験で
落とすような大学も中にはあるようです。

------------------
次回のメルマガでは、大学経営の側面から日米の学部/大学院教育の違いについて
分析していきます。次回の配信予定は7/7です。どうぞお楽しみに!


━━━━━━━━━━━━━━━━━
カガクシャ・ネットワーク http://kagakusha.net/
(上記サイトで無料ユーザー登録後、バックナンバー閲覧可)
発行責任者: 石井 洋平
編集責任者: 鈴木 太一
配信責任者: 日置 壮一郎
メールマガジンの登録と解除: 
http://www.mag2.com/m/0000220966.html
ご連絡はこのメルマガに「返信」または以下のページから: 
http://kagakusha.net/Mailform/mail.html
友人・お知り合いへの転送は自由ですが、無断転載は禁じます。
転載ご希望の際は必ずご連絡ください。
━━━━━━━━━━━━━━━━━

6/09 【海外サイエンス・実況中継】アメリカ、イギリスを経由し、フランスで研究者になるまでの道のり(後編)

posted Jun 8, 2013, 10:49 PM by Souichiro Hioki   [ updated Jun 11, 2013, 2:48 AM by Yohei Ishii ]

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
_/
_/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』
_/ June 2013, Vol. 60, No. 1
_/ カガクシャ・ネットワーク → http://kagakusha.net/
_/
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

■  メルマガ前号の編集に関するお詫び  ■
前回配信いたしましたメールマガジン、「アメリカ、イギリスを経由し、
フランスで研究者になるまでの道のり・前編」にて編集に問題があり、
読者の方の環境によってはレイアウトが崩れたり、一部の文字が表示され
なかったりする問題があることが執筆者の方からのご指摘でわかりました。
バックナンバーには、修正した記事を掲載しております。今回のメルマガの
前編ですので、どうぞあわせてご覧ください。
ご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ございませんでした。

-- From editors --
  今週のメールマガジンでは、フランスで研究者としてご活躍されている
杉尾明子さんから、アメリカ・イギリスの研究環境とフランスの研究環境の
違いについてご紹介いただきます。杉尾さんには前回のメルマガにて、Ph.D.
取得後、現在のポジションに到達するまでの経緯をご紹介いただきました。
それでは「アメリカ、イギリスを経由し、フランスで研究者になるまでの
道のり」後編の始まりです!
------------------

【3.フランスとイギリスやアメリカの研究環境の違い】
 [研究チームの構成]
フランスの研究者は一般的にのんびりしていると思われていますが、平均し
てしまえば実際のところそのとおりだと思います。ポスドク以外、ほとんどの
研究者が終身雇用されているため、レベルの高い雑誌での論文の発表等で
目に見える成功を収めようとしている人が少ないのが現状です。とはいえ、
やる気があればいくらでも働くことはできるわけで、日々バリバリと研究
成果を出している研究者も少なくありません。また、イギリスやアメリカの
ように、一人のPL/PIが研究室の運営全てを行うのではなく、複数の研究者、
技術者、テクニシャンが集まったチームで研究活動を進めていくので、一人
当たりの仕事の量が比較的少なくなります。私が所属するチームは、INRA
Rennes, Universite de Rennes, Agrocampus Ouest という3つの高等教育機
関に所属する研究者から構成されているので、非常に大きいものなのですが、
日々顔を合わせるチームメンバーとしては、研究者6人(population biology,
evolutionary biology, genomics, epidemiology, molecular entomology,
plant pathologyと専門が違います)、技術者4人、テクニシャン7人、ポス
ドク2人、博士課程の学生が一人、修士課程の学生が6人くらいいて、皆アブラ
ムシに関わる研究をしています。

私は研究者の一人で、population biologyの研究者でもあるディレクターと
頻繁に情報交換をし、テクニシャンの一人と日々の実験を進め、必要となれ
ば、ほかのテクニシャンにも仕事を依頼します。最近、修士課程の学生も
受け入れました。この先、ポスドクや博士課程の学生を持てるかどうかは、
最近応募した研究費が当たるかどうかにかかっています。私は、私自身の
研究プログラムを遂行しているわけですが、チーム内の研究者にはよく相談
したり、共同プロジェクトを進めたり、データ解析を手伝ってもらったり
しています。

 [頼もしいテクニシャン]
このような研究グループの構成もさることながら、テクニシャンの存在が
INRAの研究環境を多くのイギリスやアメリカの研究環境と異なるものにして
いると思います。イギリスやアメリカでは、終身雇用されているテクニシャン
またはアシスタントと呼ばれる人が一人いればいい方で、そのような研究室の
面倒を見る人がいない研究室もかなりありました。そのため、大事なサンプル
などがよく行方不明になったり、その研究室に不可欠なテクニックが新しい
ポスドクや学生に伝えられず、一から学びなおしになってしまったりします。
その点INRAでは、もともと肉体労働の多い農業研究所であるため、研究者に
対するテクニシャンの数が比較的多く、サンプルの管理が体系的に行われて
います。例えば、私たちの研究チームでは常に100種類を超える世界中から
集められたアブラムシを管理しています。アブラムシは細菌のように冷凍
保存ができないので、常に植物とともに育成しなければならず、大変な手間が
かかります。単純な手作業を手際よくこなしてくれるテクニシャンなしには、
このような大規模なサンプルの管理はできません。また、テクニシャンの多く
は経験豊富で、数々のテクニックを習得しているため、学生、ポスドク、それ
に私のように新しく働き始めた研究者にとっては、実にたくさんのことを教え
てくれるなくてはならない存在です。さらに、時間のかかる手作業がある日に
は、複数のテクニシャンに手助けしてもらうことができるので、大規模な実験
計画を立てることも可能です。


 [研究費]
フランスの研究助成金は少ないといわれていますが、INRA等の国立の研究所に
いる場合は、すでに終身雇用されているテクニシャンやエンジニアたちの給与
を払う必要がないし、研究施設の使用料や消費税をはらう必要もないので、今
のところ特に問題とは感じません。また、獲得した研究資金の一部はチームに
搾取されるのですが、この仕組みによって、研究資金が取れない年でもチーム
の資金で研究を続けられるようになっています。そのため、研究者の心に少し
ゆとりが生まれるように思えます。ただ、この仕組みに甘えて、研究資金の
獲得にたいした努力をしない人が出てきますし、チームというよりは個人と
して成功したい人には不向きな仕組みです。

 [フランス語は必須]
さて、フランスの(というよりは私の属するチームの)よい点をいくつか挙げ
てみましたが、悪い点というと、まず第一にフランス語が不可欠であることと、
そのことによる国際性のなさです。これは南フランスやパリ近郊に行くとずい
ぶん違うようですが、私の所属するRennesのLe Rheuという村にある研究所には
外国人はあまりいませんし、外国人がいても大多数はフランス語の話せる人
たちです。私のようにフランス語も話せずに終身雇用の職を得た外国人はまれ
だといわれています。そのため、ミーティングやセミナーのほとんどはフラン
ス語です。年配のテクニシャンの人や事務の人の中に英語を理解する人は少な
いので、フランス語ができないとどうにもなりません。重要なお知らせも、
全てフランス語で書かれたメールか郵便で届きます。遺伝子組み換え植物を
使う際には国に許可を求めなければならないのですが、これがフランス語で
書かれていなければならないというので、困りました。結局、チームの研究者
の一人に翻訳をしてもらいました。ラボミーティングもフランス語ですが、
英語で何度も質問し続けるとみんな答えるのが面倒になって英語に切り替わる
ことに気がつき、以来、内容に興味のあるときはミーティングのはじめに集中
して英語で質問しています。

さて、私のフランス語の方は週2回個人のレッスンをチームのお金で受けさせて
もらい、読み書きはだいぶ上達したように思っています。会話の方はまだまだ
ですが、辛抱強いテクニシャンを相手に、毎日練習させてもらっています。
私も今では、少し自分の面倒を見られるようになりましたが、それでもチーム
の人には日々助けてもらっています。幸い、グラントの申請書は英語で書くも
のがほとんどです(フランス国外の研究者に評価してもらうためのようです)。
フランス語の習得に努力をしていると、英語力の方が落ちてくるのが気がかり
です。

 [終身雇用]
もうひとつ、フランス特有の問題を挙げるとすると、多くの学生やポスドクが、
将来、研究者としてフランスの公的機関で終身雇用されることを望んでおり、
いい研究をすることよりも終身雇用されることが人生の大きな目標になってし
まっています。そのため、学生やポスドクにあまり野望が感じられず、がっか
りさせられることがあります。終身雇用は扶養家族を持つと非常に魅力的な
制度ですが、あまり若いうちからそれを目標とするのは夢がなくて寂しく思い
ます。

 [最後に]
というわけで、それなりに大変な部分はあるものの、私は親切で温かい職場の
人たちに助けられて、日々研究を楽しませてもらっています。このようないい
人間関係を支えるのは、終身雇用されていることによる生活の安定感と、
年42.5日の有給休暇(それにたくさんの祝祭日)による低ストレス生活による
かもしれません。それに、過去10年のアメリカとイギリスにおける食生活とは
比べようもないような、種類が豊富でおいしい食事ができることは、すばらし
いことだと思っています。

近年、日本の大学や研究機関の仕組みが変わりつつあり、任期のある職が増え
競争も激しくなっているようですが、研究者の不安定な生活や競争の行き過ぎ
は研究の質向上や生産性には逆効果なのではないかと危惧するばかりです。
30代後半になっても任期のある職しか見つからず、2年後に自分がどこにいるか
わからない、などという状態ではなんとも心もとないし、子供を持つことだっ
て躊躇してしまいます。日本の政府や大学には、ぜひ研究者の労働条件を改善
してほしいところです。労働条件の改善は少子化改善にもつながることでしょ
う。

もちろん、アメリカでもヨーロッパでも研究者として独立するためには、任期
のあるポスドクを何回かし、激しい競争を勝ち抜かなければなりません。就職
活動中は、同じ境遇にあった友人と、「こんな思いを子供にさせたくない、子
供たちが研究者にはならないようにしなくては」などという話を冗談半分、本
気も半分でしていました。とはいえ、研究に限らず、どのような職にあっても、
多かれ少なかれ競争があり、時にはうまくいかないこともあるでしょう。がっ
かりすることがあっても、自分を客観的に見つめたり視野を広げることを忘れ
ずに、本当に自分が好きな仕事を目指すことができれば、やがて道は開かれる
と考えています。

-------------------------
【執筆者プロフィール】 杉尾明子
 略歴
 2012   INRA Research Scientist
       Institut de Genetique, Environnement et Protection des Plantes,
       INRA Rennes, France
 2008-2012 Post-Doctoral Training Fellow
       (Maternity leave Nov. 2009-April 2010)
        Department of Disease and Stress Biology, John Innes Centre, UK
 2006-2007 Marie Curie Incoming International Fellow
       Department of Disease and Stress Biology, John Innes Centre, UK
 2005     Ph.D. in Plant Pathology
       Department of Plant Pathology, Kansas State University, USA

-------------------------
カガクシャ・ネットWebページのメールマガジンバックナンバーにて
この記事の前編の
【1.Ph.D. 取得後の進路】
【2.現在のポジションを得た経緯】
がご覧になれます。
http://www.kagakusha.net/e-mag/2013-2/0525-michinori1

5/25【海外サイエンス・実況中継】アメリカ、イギリスを経由し、フランスで研究者になるまでの道のり(前編)

posted May 24, 2013, 9:17 PM by Souichiro Hioki   [ updated May 27, 2013, 3:21 PM by Yohei Ishii ]

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
_/
_/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』
_/ May 2013, Vol. 59, No. 2
_/ カガクシャ・ネットワーク → http://kagakusha.net/
_/
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

-- From editors --
今週のメールマガジンでは、フランスで研究者として活躍されている杉尾明子さん
から、Ph.D.取得後、現在のポジションに到達するまでの経緯をご紹介いただきます。
研究と子育て(家庭)のバランスという難題へのチャレンジも読みどころです。
杉尾さんには、次回のメルマガにてアメリカ・イギリスの研究環境とフランスの
研究環境の違いについてもご紹介いただく予定です。それでは「アメリカ、
イギリスを経由し、フランスで研究者になるまでの道のり」前編の始まりです!
------------------


【1.Ph.D. 取得後の進路】
       私がアメリカ、カンザス州立大学の博士課程にいたころは、毎日の実験や
論文の執筆に追われていたのと研究テーマが非常に面白かったため、卒業を一年
後に控えても、将来の研究課題に関してはあまりはっきりした考えがありません
でした。唯一、はっきりとしていたことは、この先ずっと植物病理学の分野の研
究をしていきたい、だからこそポスドクでは少し違う研究をしてみたいというこ
とでした。また、博士課程では病原菌の方を主に研究したのですが、今度は植物
側の研究の仕方をモデル植物を使って学びたいと思いました。さらに、アメリカ
の文化は楽しくもありましたが、完全にはなじめずに(ちょうど同時テロ攻撃後、
ブッシュ政権のまっただなかでした)、アメリカに比べるとずっと落ち着いて見え
たヨーロッパに行くことに憧れました。

    そのころ、ちょうどイギリスのJohn Innes Centre(JIC)とThe Sainsbury Laboratory(TSL)から次々と新しい発見が発表されていて、JICまたはTSLでポス ドクをすることに興味を持ちました。この二つの研究所は名前も違うし、研究費 の出所も違うのですが、同じ敷地内にあり、共同研究も盛んに行われています。 そこで、私は面白そうな研究をしているJIC/TSLのプロジェクトリーダー(PL)数 人にメールを出し、最終的にきちんとした返事をくれたPLとともにMarie Curie Incoming International Fellowshipに応募しました。そして、運よくこの奨学金 を獲得し、JICで2年間のポスドクを始めることができました。

    この最初のポスドクでは、植物のストレス応答機構を研究したのですが、 2つ目のポスドクでは、その後独立することも視野に入れて、植物と病原菌の両方を 研究したいと思いました。最初のポスドクの契約終了が迫り、次の行き先を考え 始めたところで、JICに新しく採用されたPLが昆虫に媒介される植物病原菌の研究を 始めました。植物と病原菌の相互関係はかなり広範囲にわたって研究されているの ですが、植物と虫の相互関係の研究はまだまだ発展の余地が有ると感じていたので、 私はこの新しい研究室にポスドクとして応募し、採用されました。 【2.現在のポジションを得た経緯】 さて、2度目のポスドクとなるとそろそろ独立を考えて自分の研究テーマを 発展させるべきところですが、ポスドクとしての仕事がとても忙しく、それだけで 手一杯でした。いい研究成果がまとまり始めたとき、いろいろあってどうしても 独立したくなり、若い研究者の独立を支えるフェローシップや大学の教授や講師 の職に応募しましたが、散々の結果でした。問題はいろいろとありましたが、一番 大きかったのは、私が提案した研究テーマだと思います。私のポスドクの研究から 出た副産物的な研究結果を元に、私のボスととは異なる研究プログラムを作り上げ る努力をしたのですが、それが結果的には十分な魅力を持っていなかったためだと 思います。

    そんな就職活動の合間に出産して、産休中も研究の提案書を書き、復帰後は 睡眠不足で働いて、本当に自分はPLになって、次の5年間をテニュアを獲得するために さらに働きたいのだろうか、と疑問に思い始めました。ポスドクの間は自分の面倒を みて、プロジェクトさえ前進していればいいわけですが、博士課程の学生をもったり、 ポスドクを雇うようになると責任も大きくなるので、これ以上の責任を持って子育て と両立してやっていけるのかどうか、やりたいのかどうか疑問に思いました。そんな こんなで、PLとしての仕事は見つからないし、仕事はともかく子育てで後悔するよう なことはしたくなかったので、少しのんびり仕事をする決心をし、その合間に適当に 就職活動をすることにしました。

    そんなときに、フランスのINRA(Institut National de Recherche Agronomique 国立農業研究所)で毎年恒例の大規模な研究者の公募があったので応募してみました。 この場合、ほとんどのポジションはCR2(chargé de recherche de 2ème classe)と いう研究者の入門レベルで、研究内容もすでに決められています。私の応募したポジ ションの研究内容はアブラムシの遺伝子制御機構等々に関するもので、この研究自体に あまり興味はなかったのですが、この経済危機下に終身雇用されるのはなかなか魅力 的であるし、いったん採用されたら自分の興味のある植物と虫の相互関係の研究を始め ればよい、と思って応募してみました。研究以外では、夫がフランス人であるため、 フランスという国自体にはどちらかというと好感を持っていたということを書き添えて おきます。
私はフランス語はほとんど話せなかったし、フランスは日本以上にコネ社会と 聞いていたので、だめでもともとという気持ちで応募して、あまり期待もかけていま せんでした。ところが、応募したことをすっかり忘れたころに、パリのINRA本部で 行われる面接に呼ばれたため、私は受け入れ先となる研究チームのあるRennesの研究 所を訪れ、このポジションに与えられた研究内容についてディレクターと話し合いに 行きました。正直なところ、その日まであまりこのポジションには興味を持っていな かったのですが、いろいろとおしゃべりをしている間に、この研究チームを率いる もう一人のディレクターがpopulation biologyの研究者で、アブラムシが植物に適応 していく仕組みや、共生菌がアブラムシの生態におよぼす影響を研究してることを知 り、この研究ユニットに強く惹かれるようになりました。また、研究チームの歴史が 長く、設備やアブラムシなどの実験材料が非常に充実していることを知りました。 テクニシャンの数も多く、アブラムシのことを知りつくしたようなベテランがそろっ ているため、新しく植物とアブラムシの研究プロジェクトを立ち上げるには最高の研 究所であると感じました。私はこのときポスドクとしてアブラムシを時々使うことは あったのですが、アブラムシについての知識は大して持っていなかったので、この チームに蓄えられた知識は、新しい研究を立ち上げる上で非常に魅力的でした。
さて、INRA本部での面接は英語で行い、とてもうまく行ったのですが、その チームで博士課程を修了した別の候補者に負けました。この大規模な研究者採用キャ ンペーンの後にINRAは毎年数人、CR1(chargé de recherche de 1ere classe)という 経歴の長い(基本的には博士課程終了後4年以上)研究者を募集します。この場合は 自分の興味のある分野の研究計画書を書いて応募することができたので、アブラムシ の植物適応について研究しているディレクターとともに計画書をまとめて応募しまし た。このディレクターが、彼自身の研究から得られたデータや資料を提供してくれた ので、研究の提案書はとてもスムースにまとまりました。ディレクターが専門とする population biologyや ecologyといった分野は、生態系の有り様を記述することが主 になる学問で、私が専門とするmolecular plant pathologyは、もう一歩踏み入って 生物や生物同士の相互関係を分子のレベルで解明する学問なので、二人の専門分野が ちょうどよくつながり、すっきりとした研究計画になりました。さらには、このディ レクターが面接の準備の際にたくさんの助言をしてくれたので、パリの本部での面接も 何とか無事にこなすことができ(この面接はCR2の面接よりもずっと厳しいものでした) INRAの研究者として採用されました。最初に応募したポジションよりは研究者の格が 上ですし、自分がやりたかった研究テーマだったので、回り道をしたようですがいい 結果となりました。 そんな苦難の就職活動と引越しも済ませ、昨年2012年の5月から、INRAの研 究者となりました。日々フランス語と格闘しているのですが、過去10年の研究生活 の中で最もリラックスしつつ、充実した日々を送っています。最初のアパート探しは INRAが手配してくれた会社が手伝ってくれましたが、私の呑気生活を支えているのは、 生活に必要な全ての書類手続きを一手に引き受けている夫であることを、書き添えて おきます。フランス語のできない日本人一家が、フランスの片田舎にやってきたら、 毎日相当な苦労をすることになるでしょう。


------------------------- 杉尾さんには、「アメリカ、イギリスを経由し、フランスで研究者になるまでの道のり」 後編として、アメリカ・イギリスの研究環境とフランスの研究環境の違いについて次回の メルマガでご紹介いただく予定です。次回は再来週の6/9に配信予定です。 どうぞお楽しみに! ------------------------ 【執筆者プロフィール】 杉尾明子 略歴 2012 INRA Research Scientist Institut de Génétique, Environnement et Protection des Plantes, INRA Rennes, France 2008-2012 Post-Doctoral Training Fellow (Maternity leave Nov. 2009-April 2010) Department of Disease and Stress Biology, John Innes Centre, UK 2006-2007 Marie Curie Incoming International Fellow Department of Disease and Stress Biology, John Innes Centre, UK 2005 Ph.D. in Plant Pathology Department of Plant Pathology, Kansas State University, USA 杉尾さんの過去の執筆が、カガクシャ・ネットワークメールマガジン バックナンバーより ご覧になれます。 http://www.kagakusha.net/system/app/pages/search?scope=search-site&q=杉尾明子 ━━━━━━━━━━━━━━━━━ カガクシャ・ネットワーク http://kagakusha.net/ (上記サイトで無料ユーザー登録後、バックナンバー閲覧可) 発行責任者: 石井 洋平 編集責任者: 日置 壮一郎 メールマガジンの登録と解除: http://www.mag2.com/m/0000220966.html ご連絡はこのメルマガに「返信」または以下のページから: http://kagakusha.net/Mailform/mail.html 友人・お知り合いへの転送は自由ですが、無断転載は禁じます。 転載ご希望の際は必ずご連絡ください。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━

1-10 of 17