_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ _/ _/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』 _/ June 2009, Vol. 47, No. 2 _/ カガクシャ・ネットワーク → http://kagakusha.net/ _/ _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ 今年度のメルマガを担当させていただく、杉村(ストワーズ医学研究所)、 鈴木(アリゾナ大学)、石井(ブラウン大学)です。 トップニュースです。 OxfordのMedical Sciences DivisionのNuffield Department of Clinical Science で日本人の学部生向けに夏のインターンシップを募集しています。将来博士課程 に応募したい学生、さらにはPIになりたいという学生を募集したいそうです。 締め切りは3月末。今年度は4つの大学に限られていますが(東京大学、京都大学、 北海道大学、熊本大学)、各大学の現大学生はぜひ募集要項をご覧になって ください。詳しくは下記のリンクをご覧になってください。 http://www.ndm.ox.ac.uk/internships 今年7月に東京国際フォーラムでカガクシャ・ネット総会を開催予定しています。 新メンバーの参加も大歓迎です。詳細は随時メーリングリストにて告知します。 開催のため、以下の方々から寄付金をいただきました。この場を借りて、お礼申し上げます。 小林久志先生(プリンストン大学、10万円) 小葦泰治さまご夫妻(カガクシャ・ネット代表、5万円) 青木敏洋さま(アドバイザー、5万円) それでは、記事をお楽しみください。 今回は、最近メーリングリストにで行ったアンケートに基づいて記事をつくりました。 大学院生の論文発表について、大事なのは、 「質より量派」or「量より質派」? カガクシャネット、アンケート企画第一弾に関するアンケート結果が まとまりましたので、鈴木太一が報告します。 <結果> スタッフ(15名):質派 (66.7%)、量派 (33.3%) メンバー(15名):質派 (73.3%)、量派 (26.7%) 合計(30名):質派 (70.0%)、量派 (30.0%) スタッフは留学中の院生と卒業生で構成されています。メンバーは、 カガクシャ・ネットに参加されている学部生・院生・ポスドク・教員 などで構成されています。 「質」支持派が約7割と「量」支持派を上回りました。スタッフと メンバー間に大きな違いは見られませんでした。(メンバー回答者の 53.3%が学生ですが、学生のみの回答を閲覧することができなかっため、 今回は学生と博士号取得者の比較はできません) <コメント結果> 「質」支持派: (スタッフ)アカデミアの就職に有利。業界での知名度が上がる。 無駄な論文は労力の無駄。オリジナリティーが大事。 (メンバー)再現性が大事。科学の発展の観点から価値がある。 評価者が評価する雑誌へ投稿すべき。 「量」支持派: (スタッフ)失敗を繰り返し学ぶことができる。就職活動時に有利。 レジュメの見栄えがよい。他のグループとの競争に勝つため。精神的に良い。 企業就職かつアカデミア就職に有利。質派は生産性が低い言い訳にすぎない。 (メンバー)論文発表のトレーニングになる。 その他: (スタッフ)ファーストで2報以上を確保した上で論文の質。 若いうち数、そのうち質。 (メンバー)分野によって異なるため比較できない。結局どちらも大事。 大学院生は数、博士取得後は質。 (すべてのコメントを反映することはできませんでしたが、代表的なものを取り上げました) <考察> 論文の質と量、共にメリットが存在することがよくわかる結果になりました。 またその他の意見で紹介されているように、学者としてのキャリアのどの位置 にいるのか、将来どのような分野に進みたいのかによって、質と量のバランスが 左右されるようです。 少し抽象的なので具体例を考えてみましょう。 例えば、ある大学のPhD programに合格したAくんは、論文発表数ゼロ、学者としての スタートラインにいるとします。この学生に極端なアドバイスを送るとしたら、 アドバイスI:論文は量より質だ。一本でいいから一流雑誌に載るような研究をしなさい。 アドバイスII:論文は質より量だ。学生時代は一本でも多くの論文を出せるよう研究しなさい。 だれも質の悪い研究をしたいわけではないですから、アドバイスIで学生の モチベーション、研究者としてのあり方を問うのも悪くないと思います。かといって、 論文を一度も発表したことのない学生がみんながみんな一流雑誌に載るような 卒業研究ができるのかというと、アドバイスIIの数を出し、失敗を繰り返しながら 論文発表について学べというのも頷けます。 これに対し、就職活動が近い学生の場合を考えてみましょう。 例えば、PhDをたった今取得したB博士は、膨大かつ価値のあるデータを持っている とします。このデータを発表する際、アドバイスを送るとしたら、 アドバイスI:超一流雑誌にデータを凝縮し、1本にまとめて発表すべきだ(質派) アドバイスII:二流または三流雑誌にデータを分割し、4~5本に分けて 発表すべきだ(量派) この例では、すでにデータが手元にある点、就職活動が近いという点で、 Aくんのケースとは少し異なります。もし学者としてのキャリア、就職したい 分野が明確であるのなら、そのゴール(就職先)に応じてそれほど難しい アドバイスの選択ではないかもしれません。(どちらの選択が学術的に インパクトを与えるかというのはまた別の話ですが) 結論として、たとえカガクシャネットのスタッフ、メンバーの7割が「質支持派」 であるとしても、論文発表を一概に「質」と「量」、どちらが大事であると 判断するのは難しいと自分は感じました。このアンケートを通して、 自分は学者として今どの位置にいるのか、?所属している/目指して いる研究室の論文の質と量のバランスに満足しているか?自分の 目指すゴールにはどのような質と量のバランスが要求されているのか、? それぞれが考えるいい機会になれば幸いです 。 アンケートを回答してくださったスタッフ、メンバーの皆様に深く感謝 致します。今後もアンケート企画を配信していく予定なので、 アイディア募集中です。アイディアやご指摘は鈴木([email protected] )までご連絡ください。引き続きアンケート企画へのご協力よろしく お願い致します 。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━ 編集者自己紹介 ━━━━━━━━━━━━━━━━━ 鈴木 太一 2009年 日本大学 生物資源科学部 動物資源化学科 卒業 2009年 The University of Arizona, Center of English as a Second Language 2009-2011年 The University of Arizona, Ecology and Evolutionary Biology (Masters) 2011 年- 現在The University of Arizona, Ecology and Evolutionary Biology, Ph.D. Program ━━━━━━━━━━━━━━━━━ 編集後記 ━━━━━━━━━━━━━━━━━ アンケートを回答してくださったスタッフ、メンバーの皆様に 深く感謝致します。今後もアンケート企画を配信していく予定 なので、アイディア募集中です。アイディアやご指摘は 鈴木([email protected])までご連絡ください。引き続き アンケート企画へのご協力よろしくお願い致します ━━━━━━━━━━━━━━━━━ カガクシャ・ネットワーク http://kagakusha.net/ (上記サイトで無料ユーザー登録後、バックナンバー閲覧可) 発行責任者: 杉村 竜一 編集責任者: 鈴木 太一 メールマガジンの登録と解除: http://www.mag2.com/m/0000220966.html ご連絡はこのメルマガに「返信」または以下のページから: http://kagakusha.net/Mailform/mail.html 友人・お知り合いへの転送は自由ですが、無断転載は禁じます。 転載ご希望の際は必ずご連絡ください。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━ |