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3/24 【海外サイエンス・実況中継】ジョージア大学USDA Forest Service

posted Apr 20, 2012, 6:51 PM by Yuji Takeda   [ updated Apr 20, 2012, 6:56 PM ]
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_/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』
_/ June 2012, Vol. 47, No. 2
_/ カガクシャ・ネットワーク → http://kagakusha.net/
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今回メルマガ配信を担当させていただくアリゾナ大学の鈴木です。
今回は日本学術振興会特別研究員であり、森林総合研究所に在籍中の
池田博士に、ジョージア大学USDA Forest Serviceでのポスドク生活を
紹介していただきます。ポスドク(Postdoctoral Fellow)というのは、
大学院の博士課程卒業後、大学の教員職前の、大事なキャリアパスと
して知られる博士研究員のことです。日本ではまだポスドク制度に
馴染みが薄いかもしれませんが、将来特にアカデミアで活躍したい
なら、海外ポスドク挑戦は大きな価値があると思います。ミミズ、
シデムシ、地表生甲虫の生態学が専門の池田博士の記事を、どうぞ
お楽しみください。

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ジョージア大学USDA Forest Service
ポスドク紹介
池田 紘士 (農学博士)
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日本学術振興会特別研究員として、茨城県つくば市にある
独立行政法人森林総合研究所に在籍している池田紘士と申します。
研究分野は生態学です。2011年の4月から2012年の3月までの1年間、
アメリカのUSDA Forest Serviceでポスドクとして研究をしてきましたので、
それについて紹介させていただきます。ポスドクとしてアメリカへ行こう
と考えていらっしゃる方の参考に少しでもなれば幸いです。
僕は日本で博士号をとり、なかなか通らなかった日本学術振興会の研究員に
2010年度からようやく採用され、森林総合研究所に在籍しています。日本では、
ポスドクというと、生態学の分野ではこれにまず応募する人が多いです。
僕も通ることを目指して何度も出しました。学術振興会のポスドクは、
3年間国内で研究するための研究員と、2年間海外で研究するための研究員の
制度があります。ともに国の方針やその時の首相によって採択率が変動し、
仕分けが行われたあとはどうなる事かと思いましたが、最近では管首相のおかげで
採択率が増えました。今後も採用枠が増えることを願いたいです。僕は
そのうちの国内の研究員に採用していただきました。国内の研究員の制度にも、
1年半までは海外で研究をしてよいという制度があるため、それを利用して、
USDA Forest Serviceで研究をさせていただきました。

USDA Forest Serviceについて
USDAというのは、United States Department of Agricultureの略称です。
USDA Forest Serviceを無理やり和訳すると、”アメリカ合衆国農務省林野局”
というような訳になるようです。国の研究機関であり、日本でいうと
独立行政法人の研究機関にあたります。ですので、USDA Forest Serviceは、
日本でいうと、私がまさに日本で在籍している森林総合研究所にあたると
思います。
USDA Forest Serviceは国の研究機関であるため、大学の研究室に比べて
より応用的な研究をすることが求められます。その点は日本の独立行政法人と
同じです。USDAの研究機関はアメリカのいろいろなところにあり、私は、
その中でもジョージア州のアセンズにあるUSDA Forest Service,
Southern Research Station, Center for Forest Disturbance Science,
Forestry Sciences Laboratoryに滞在していました。
ここは2つの建物からなり、全部で数十人の研究者が在籍しています。
全ての方々の研究を把握しているわけではないですが、僕の周りの方々は、
森林の害虫や外来種、および森林管理といったことをテーマに研究を
行っていました。僕も、日本から侵入し、アメリカの森林等に幅広く分布を
拡大してしまったとされるミミズの生態とその管理に関する研究を行って
いました。
 USDA Forest Serviceに来て驚いたのは、この研究施設自体がジョージア大学
のキャンパス内にあるということでした。日本でも森林総合研究所は
つくばにあることで他の研究所の方々や筑波大学の方と研究の話ができる
のは刺激になりましたが、大学構内にあるというのにはさすがに驚きました。
これによって、大学内の研究者の方々との共同研究は非常にしやすく、
周りの研究者の方々も多くの共同研究を大学の方と行っていましたし、
さらに学生さんも受け入れて研究を行っていました。これは、研究を
すすめる上で非常に良い刺激になると思います。特にジョージア大学は
関連する分野がまとまっており、Forest Serviceの周りには、
Plant Biology、Ecology、Forestry、Geneticsの建物があり、歩いていく
ことができました。僕も、遺伝子解析を行うための設備がUSDA Forest Service
にはなかったため、ジョージア大学のEcologyの研究室にお邪魔して
実験を行っていました。
ジョージア大学は生態学の分野が非常に有名で、Ecologyの建物には、
生態学の権威であり、ジョージア大学にかつていらっしゃったOdumさんの
名前をとって、Odum School of Ecologyという名前が付けられていました。
そして、授業がある期間中は毎週外部から招待された方がセミナーで
発表されていました。ですので発表のレベルが非常に高く、興味深い発表も
多かったです。Forest Serviceの周りには、他にも関連のあるそれぞれの
Departmentでは毎週セミナーが開かれていましたので、Ecologyの他にも
Plant Biology、Forestry、Genetics、Entomologyのセミナーの情報は
確認して聞きにいっていました。
そして、僕が生活していたアセンズの町はどういうところかというと、
大学を中心にして成り立っている街です。大きな町ではないですが、
非常に治安はいいので海外から来た方が住むのにはよいところだと思います。
ルームメイトの一人は、家のカギを一度もかけたことがないと言っていました。

ポスドクとして海外に行くことについて
僕がなぜUSDA Forest Serviceにお邪魔することになったかというと、そもそも
僕は海外に住んだ経験が一度も無く、アメリカで英会話の勉強も兼ねて、
ミミズ研究の権威であり、ジョージア大学にいらっしゃったPaul Hendrix先生
のもとで1年間研究をしようと思い、Paul先生とお知り合いの方に連絡を
取っていただいたのが始まりでした。ですが、Paul先生はちょうど
2011年12月で退官されてしまうということで、残念ながら僕の受け入れ先に
なっていただくことができませんでした。しかし、その先生と長い間共同で
研究をされていたMac CallahamさんがUSDA Forest Serviceにいらっしゃり、
そのMacさんが僕を受け入れてくださるとの連絡をいただき、USDAに
お邪魔することになったのでした。
それで、では実際ポスドクになってから初めて海外に滞在するのは
どうかというと、正直なところ非常にしんどいものでした。英語を勉強する
ことがメインでアメリカに来ているわけではなく、やはりメインが研究
になってくるため、最初はMacさんとのコミュニケーションもなかなか
とれず大変でした。Macさんとある程度研究の話ができるようになるまでは
半年ほどかかりました。そのため1年間はあっという間に終わってしまい、
もう少しいたかったなあと感じています。偶然にも、森林総合研究所から
短期間の滞在でEcologyに来ていらっしゃっていた研究者の方がいらっしゃり
初めての海外生活であたふたしている僕を助けてくださいました。
いきなり新しい国で言葉も通じない状態で新しい研究を始めるというのは
非常にしんどいものでしたので、助けていただき、非常にありがたかった
です。
ポスドクで来ると一人で実験や調査に出かけることも多く、また授業も無い
ため、英語を聞く機会、さらには話す機会も限られます。セミナーを
聞きにいくことで英語を聞く機会を増やそうとしたり、Macさんに研究の相談に
頻繁に行くことで話す機会を増やそうと努力しました。それによってある
程度は補えたかとは思いますが、研究との両立というのはやはりなかなか
難しく、研究が忙しくなってくるとどうしても英語の勉強は後回しになって
しまいました。
ポスドクとして海外に行くことを考えられている方がいらっしゃいましたら、
海外に行くのは早ければ早いほどいいと思います。年をとるごとに英会話の
上達はやはり遅れるものだというのを感じました。こちらに来て、
日本人のポスドクの方や学生の方が少ないということをやはり思いました。
ぜひ早いうちに海外に出てみてください。


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編集者自己紹介
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鈴木 太一
2009年 日本大学 生物資源科学部 動物資源化学科 卒業
2009-2011年 The University of Arizona, Ecology and
Evolutionary Biology (Masters)
2011年-現在 The University of Arizona, Ecology and
 Evolutionary Biology, Ph.D. Program

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編集後記
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ポスドク留学と大学院留学には大きな違いがあります。ポスドク留学
は一般的に、短期(平均2年間?)で、研究の財源や専門分野をもって
いることが望ましいもしくは必須。大学院留学(アメリカ)は一般的に、
長期(5年強)で、研究の財源や専門分野をもっている必要がない
(あるにこしたことないですが)。言語、専門分野、またその学び方まで
学ぶことのできる大学院。もっている知識、スキルを活用して新たな
スキルを得るポスドク。どちらの留学もメリットがありますが、
英語を身につけるという点では早いうちに留学するにこしたことな
のかもしれません。

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