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【海外サイエンス・実況中継】アラバマ大学院航空宇宙工学プログラム

posted Dec 8, 2012, 8:28 PM by Yohei Ishii
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_/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』
_/ Dec 2012, Vol. 54, No. 1
_/ カガクシャ・ネットワーク → http://kagakusha.net/
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-----------------What's New?--------------------------------
1. 日経ウーマンオンラインとカガクシャ・ネットのコラボ企画が
正式に開始。カガクシャ・ネットスタッフ大矢が執筆。
http://blog.nikkeibp.co.jp/wol/rikejo/

2. 国際人材創出支援センターICBとのコラボ企画
スタッフ大矢がインタビュワーとして参加しました。
「フロンティア開拓への挑戦」 今井章子さん
http://www.icbjapan.org/interview.html
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---------------講演会のご案内-------------------------------
 12月11日(火) 第17回ICB講演会 19:00~20:30

「高まる国際社会での "Civil Society"の存在感」
講師:会津 泉氏(多摩大学情報社会学研究所主任研究員・教授) 

申し込みはこちらから
http://www.icbjapan.org/forum.html

【日時】2012年12月11日(火)19:00~20:30
【場所】
 東京都千代田区神田錦町3-21
 千代田プラットフォームスクウェア 504会議室
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今回はアラバマ大学院航空宇宙工学についてのプログラム紹介です。
前回配信の就職活動記事とあわせてお楽しみください。
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アラバマ大の大学院プログラム(航空宇宙工学)について

<はじめに>
高橋大介と申します。私は高校卒業後渡米し、2007年にアラバマ大学卒業、
2008年にアラバマ大学大学院の修士課程を修了しました。(大学・大学院共に
専攻は航空宇宙工学)その後、帰国し(株)IHIに就職し、航空機エンジン
の整備/製造の生産技術を担当しております。

<アラバマでの生活>
アラバマ州は米南部に位置し、夏(5月~9月)は日差しが強く、湿度が高く、
気温も40℃近くに達し、非常に熱いです。私が通っていたアラバマ大学
は、アラバマ州西部のタスカルーサ市に位置し、州内最大の都市
バーミングハム市より、車で西に1時間程度です。大学の周りには
多数の学生が住み、飲食店、スーパーも充実しており、学生の街と
いう雰囲気が漂います。週末になると、バーやレストランがにぎやか
になり、大学生活を楽しむ学生などでとても活気があります。私も
日曜日の午後から金曜日まではしっかり勉強し、週末は思いっきり
楽しむという生活をしていました。このようなメリハリをつけた生活
は米の大学の特徴ではないでしょうか。
また、ウォールマートといった大型スーパー、ホームセンター、
ショッピングモールなども、車で10分~15分程度で行ける所にある
ため、日常の買い物では不自由はしません。
アラバマ大学のフットボール部は、地元の根強い人気と、2010年、
2012年に全米チャンピョンに輝いたという実績があり、ホームで
試合があるときは、大学周辺がフットボール観戦者であふれ、
通行止めになる道路もあるほどで、とてもにぎやかです。日本で
言うならば、コンサートやライブからの帰りか、大きな花火大会に
行ったかのような人ごみです。フットボールスタジアムは約10万人を
収容でき、試合中はスタジアムが揺れているかのように感じられる
ほどの応援で、日本では経験できないほど熱狂的な応援を体感できます。
その他、新体操部、陸上部をはじめ、各種運動部が盛んで、母校の
スポーツ観戦が楽しめます。
アラバマ州は自然豊かで、ラフティング、カヤック、ロッククライミング、
釣りなども楽しめます。また、アラバマ州北部のハンツビル市には
NASAのマーシャルスペースセンターがあり、施設の見学ができるため、
宇宙に興味のある方は非常に楽しめると思います。最近では、
大手航空機メーカーのエアバス社がアラバマ州南部のモービル市に
航空機の組立工場を建設する予定があります。


<アラバマ大学>
アラバマ大学はアラバマ州に3つのキャンパスを持っており、
タスカルーサ市にあるメインキャンパスのタスカルーサ校の他、
バーミンハム市にバーミンハム校(医学部が有名)とハンツビル市に
ハンツビル校があります。アラバマ大学タスカルーサ校(以下、アラバマ大学)
は総合大学で文学部、政治経済学部、芸術学部、理学部、工学部、
看護学部、体育学部など幅広い教育ブログラムを備えています。
大学院では、これらに加え、MBAやLow Schoolも併設しています。
南部の大学ということもあり、アフリカン・アメリカンの学生の
割合が他の大学と比べ高めになっています。大学生は約27000人、
院生は約3700人を受け入れており、留学生は世界90カ国以上から
集まっており、国際色豊かな大学です。


<アラバマ大学大学院航 空宇宙工学プログラム(修士課程)>
アラバマ大学大学院航空宇宙工学科のプログラムですが、30単位の
授業の履修、修士論文作成、修士論文のディフェンスを行い、
合格すれば、修士課程終了となります。大学院申し込みから、
修士課程終了までの流れを以下に記載しましたので、御覧ください。

1)    大学院申し込み
大学院申し込みの際に必要な書類は、他大学同様、次の書類となります。
大学時代の成績証明書、TOEFLの点数、 GREの点数、
志望動機書(Statement of Purpose)、推薦状(3通),が必要になります。
また、大学院への申し込みの時期には、応募を募っている奨学金も
ありますので、確認してみることをお薦め致します。てはいかが
でしょうか。私の場合は、同じ大学の大学院に進むということで、
提出書類としては、成績証明書、志望動機書、推薦状の3つで、ほぼ
同時期に奨学金への応募もしました。
大学院生のほとんどはTA(Teaching Assistant)として、学部の授業を
教えたり(主にラボ)、RA (Research Assistant)として教授の研究の
手伝いを行い、授業料の免除を受けています。その他に、大学院
もしくは研究機関などの団体から奨学金を取得するケースもあります。
TAの場合、授業の準備や生徒の宿題の採点などに時間が取られて
しまいますが、RAの場合は、行なっていることが直接自分の研究に
関わることなので、個人的にはTAよりRAの方が薦めです。奨学金は
学費のみ支払われるもの、生活費も支援してくれるものなど、
応募する奨学金によって異なります。まちまちです。私の場合は、
幸運にも、大学院からいただいた奨学金でをもらい、学費、保険代、
生活費など、幸運にも学生として生活するための費用をは全て
カバーすることができました。このため、含まれていました。
米国は奨学金を付与寄与し、未来の発展のために学生に投資してい
るのだという事を強く感じました思いました。逆に言うならば、
我々は投資をしてもらっているため、将来の社会発展に貢献する
べくしっかりと成果を出すことが求められていると思います。

2)    授業
アラバマ大学の修士課程は、コースワークのみで、研究を行わずに
修士課程を修了するコースと、研究を行い、論文を作成して
修士課程を修了するコースの2つに分けることができます。
私は大学時代からの研究を引き続き行いたかったため、後者を
選択しました。なお、博士課程にはコースワークのみのコース
はありません。
(Masters: http://aem.eng.ua.edu/graduate/ms-program/ ,
PhD: http://aem.eng.ua.edu/graduate/phd-program/ )
 
航空宇宙工学科のプログラムには、大きく分けて以下の3つの
専攻があります。

①    Dynamics, Flight Dynamics, Controls
②    Solid mechanics, Flight Vehicle Structures and Materials
③    Fluid mechanics, Aerodynamics and Propulsion

この中から自分の専攻を選び、必須科目である、航空宇宙工学
12単位及び数学6単位に加え、自分の専攻から6単位の選択科目
を受講します。研究として6単位取得するため、計30単位に
なります。必須科目からは、航空宇宙工学について一般的な
基礎を学ぶことができます。数学のクラスは航空宇宙工学科
以外の工学部の学生も受講するため、他学科の学生とも交流を
持てる良い機会でした。
私の、研究内容が“発光塗料を用いた光弾性の非破壊検査技術
の開発”であり、構造・材料の分野に近いため②を専攻先行と
して選びました。プログラムの中でアメリカ人も在籍していま
したが、中国人、インド人が多い印象を受けました。もちろん、
その他の国からの留学生も数名も在籍していました。授業は
一日に1、2科目あり、その他の時間は研究室で研究に取り組んで
いました。トライアスロン部に所属していたため、シーズン中は
1日2~3時間程度は練習に当てていました。セメスターによって
は、授業がない日もありました。各授業の成績の付け方は教授に
よってまちまちですが、例として、以下で紹介する
Experimental Aerodynamicsの場合は、合計100%を実験10%・宿題20%
・レポート50%・試験20%に割り振り成績をつけていました。
特に印象的だった授業は、Experimental Aerodynamicsと
Experimental Mechanicsという実験系の授業でした。これらの
授業では、1週間に2回授業があり、基本的には最初の授業で
理論を学び、次の授業で実験を行い、レポートを提出すると
いう流れでした。授業で学んだ理論を、実験を通して活用でき、
その現象に対する理解がより深まり、実験の準備や実験を2人~3人
のチームで行い、考察結果について議論し結論をまとめることで、
コニュニケーション能力や、自分の考えをどのように理解して
もらうかという理論的説明能力も身についたと思います。学生に
基礎をしっかりと教え、現象を考察させ、グループディスカッション
やレポートで自分の考えを表現させるということが、米国教育の
一つの特徴ではないでしょうか。

3)    研究
研究について(2)の①、②、③の分野で教授が在移籍しており、
どの分野でも研究が可能です。アラバマ大学は1831年創立で
歴史があり、地元地域との結びつきが強い大学であるため、
地元企業との共同研究や、他大学との共同研究も行なっております。
また、アラバマ州北部のハンツビルにNASAマーシャルスペースセンター
があることから、NASAとの共同研究を行なっている研究室も
あります。教授陣の中には、以前NASAでの勤務経験がある方も
がいるので、将来の宇宙開発についてなど、非常に興味深い話を
拝聴することができました。してくれた教授もいました。
修士課程は2年が一般的であるため、最初の1年半程かけ実験
を行い、仮説と検証を繰り返し、結論を導きます。その後、
3~4ヶ月をかけ論文を完成させ、ディフェンス(論文の発表)
に向けて準備を行います。思うような結果が出なかった場合
ときは、実験と論文作成を並行して行います。論文発表に
向けて、まず審査委員の選出を行います。通常は、自分の
担当教授、同学科の専門が近い教授、他学科の教授の3名が
審査委員になり、論文及びディフェンスの審査を行います。
論文の合否は、論文・ディフェンスの完成度と、ディフェンス時の
質問に対する回答が判断基準になります。ディフェンス後に
論文の指摘箇所を修正し、大学院に提出し完了となります。
論文のディフェンス完了までの流れは、アラバマ大学大学院では、
どの学科も基本的には上記と同じです。

4)    私の研究
私はDr. Paul Hubner ( http://phubner.eng.ua.edu/research.htm )
の元下Luminescent Photoelastic Coating(LPC)の開発
(発光塗料を用いた光弾性の非破壊検査技術の開発)を
行なっていました。Dr. Hubnerはこの研究で米と日本で
特許を取っており、感圧塗料 (Pressure Sensitive Paint [PSP])
 及び感温塗料 (Temperature Sensitive Paint [TSP]) の研究発表で、
来日した経験もあることから、非常に親日的な教授でした。
LPCとは非破壊検査方法で、3次元の物体に対して歪分布、
最大/最小応力分布、フェーズの検出が可能で、部品設計時に
適応され、設計工程の時間短縮・コスト削減を可能にします。
研究を始めたのは大学3年生の時で、修士課程修了まで計3年間、
本研究を行いました。私の場合、大学・大学院が同じで、
大学4年時から大学院の授業を履修していたため、大学卒業後1年で
修士課程を終了できましたしました。大学・大学院が同じ場合で
あれば、このようなメリットがあります。
最初の1年間はLPCの基礎の勉強と、教授が異動移動してきたばかりと
いうこともあり、研究室の立ち上げを行いました。4年時から
本格的に研究を始め、様々な対策を打ちながら何度も実験を
行いましたが、なかなか予想通り実験結果が得られませんでした。
時間は経過するばかりで、目標期限としていた時までには、
思うようなデータを得ることができませんでした。そのためよって、
修士課程の後半は実験を並行しながら、論文を作成するという
日々が続きました。結局、理想としていたデータは得られず、
論文を作成しディフェンスに望みましたが、なんとか無事に乗り切り、
論文が合格することになりました。その際に感じたことは、
”今ある手持ちのデータをで、いかにどのように纏め、表現し、
論理立てて説明す語れば、その時点現段階で可能な限りの
最高のアウトプットを出せるか” を考えることの大切さ。
正直、求めていたデータが得られなかったため、悔しさは
ありましたが、その時点では最高のパフォーマンスができた
のではと思います。2008年5月の卒業式後、3ヶ月間研究室に残り、
引き続き研究を継続し行った結果、ようやく求めていたデータを
得ることができました。この時の感動は今でも忘れることが
できません。2008年の夏にSociety of Experimental Mechanics (SEM)
の学会に参加し、研究成果を発表し、Journal Paper (SEM Journal)
を提出し、大学院での研究に幕を閉じました。困難に直面した
時期もありましたが、諦めず最後までやり遂げてよかったと思います。
研究で非常に印象的だったことが、帰国直前にスペースシャトルの
エクスターナルタンクに用いられている材料の強度試験をLPCの技術
を用い行う機会があったことです。留学当初からの夢でもあった、
“宇宙開発に携わる”という事に近づいた瞬間でした。


<卒業後 ~就職~>
卒業後の進路は日米両方を当時考えていました。しかし、米の
航空宇宙業界は”US Citizenship(市民権)”が要求されており、
市民権がない私にはとても高い壁でした。私が興味を持ち調べた
企業は、全て市民権が要求されていました。もし卒業後、米の
航空宇宙業界への就職を希望されて考えている方は、市民権取得
についても検討することをおすすめします。日本での就職活動
については前回配信のメルマガ、就職活動記事(航空宇宙工学)
に詳細を記載しましたので、ご参考にして下さい。


<最後に>
現在航空宇宙分科会の設立に向けて準備中です。同分科会の
目的は、航空宇宙系の分野の留学経験者、留学中の大学院生、
希望者で、留学中に形成したネットワーク(友人・先輩・後輩・教授)
と、カガクシャ・ネット内の該当メンバーとの相乗効果を図る
ことです。興味がある方は staff<at>@kagakusha.net (<at>を@に変えてください)
までご連絡下さい。


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