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5/21【海外サイエンス・実況中継】Duke Univ. Biomedical Engineering Dept.

posted Jan 30, 2012, 12:20 PM by Yunke Song   [ updated Apr 20, 2012, 7:19 PM by Yuji Takeda ]
メルマガ原稿
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_/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』
_/ June 2009, Vol. 47, No. 2
_/ カガクシャ・ネットワーク → http://kagakusha.net/
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こんにちは、5月のメルマガを担当させていただく、Johns Hopkins 
Univ., Biomedical Engineering Dept. 博士課程三年の宋云柯(そう
うんか)です。
今週のメルマガでは、私の大学時代の先輩にあたる田内悠さんに、
Duke Universityへの留学について紹介していただきます。Duke University
は文理の多くの分野においてアメリカトップレベルの研究や教育シス
テムを擁しながら、スポーツにも力を入れているアメリカ東海岸の有
名大学のひとつです。田内さんの記事がアメリカ留学を志す読者の方
々にとってよい参考材料になれば幸いです。



Duke University Department of Biomedical Engineering (BME)のPh.D.
Programに在籍している田内悠(たのうちゆう)と申します。2006年秋に
同大学、同学科のMaster Programに入学。翌年Ph.D. Programに 合格して
現在に至ります。さて、このメルマガでは自分の実体験を通して、私が
所属している大学、及び学科の紹介をさせていただきたいと思います。



Duke Universityについて
 Duke Universityはアメリカ東海岸North Carolina州Durhamにある、大
学生約6500人、大学院生約7700人と大学院生の割合が大きい私立大学で
す。周囲にはUniversity of North Carolina at Chapel Hill(UNC)と
North Carolina State University(NC State)とそれぞれ研究で有名な
大学があり、それぞれのある都市(Durham、Chapel Hill、Raleigh)を
結んだエリアはTriangle Areaと呼ばれています。このTriangle Areaに
はResearch Triangle Park (RTP)と呼ばれる、全米有数のハイテク研
究、開発拠点があり、日本企業を含め、全米の多くの企業が集まってい
ます。
 Dukeでは大学バスケットボールが非常に有名で、昨年は全米チャンピ
オンにもなったほどの実力です。あのマイケル・ジョーダンを輩出した
UNCも強豪校で、一昨年の全米チャンピオンです。DukeとUNCの は全米で
も有名なライバル関係にあり、二校が対決する試合では街全体が盛り上
がります。毎年シーズン前の9月になると、 バスケットボールの年間チケ
ットをかけて、体育館前の広場に大学院生が3日間テントで寝泊まりする
「Campout」というイベントが開かれ、毎年多くの人が参加しています。 



Duke BME Ph.D. Programについて

 Duke BME Ph.D. Programはアメリカ国内でもトップクラスのプログラム
で、世界初のリアルタイム3D超音波診断システムや人口血液の開発に大
きく貢献した学科です。他の多くの博士課程と同じく学生は全員が学費
を免除され、それに加えて 年額$26,000ほどのStipendを受け取り、さら
に健康保険もカバーされます。DukeのあるDurhamは物価が全般的に安い
ため、この額でも不自由なく生活することができます。
 Duke BME Ph.D. Programの一つの特徴はRotationがないことです。
Rotationとは、学生が自分の所属する研究室を決めるための制度の一つ
で、入学後1年目に学生が数週間ずつ複数の研究室で 実際に過ごしま
す。最終的に学生側と研究室側の希望をすり合わせる形で配属が決まり
ます。Duke BME ではこのRotationがないため、入学後、すぐに決まった
研究室で研究を始めることになり、より長い期間、決まったプロジェク
トに打ち込むことができます。しかしながら、研究室である程度の期間を
過ごすうちに、 様々な理由(研究の興味対象の変化、研究室のメンバー
、教授との関係)で研究室を移りたいといったこともでてきます。その場
合には、新たな研究室探しを、学科がFundingも含めて サポートしてくれ
ます。実際に私が所属する研究室から他の研究室の移った学生もいます。
 もう一つの特徴としては、多くの大学、学科によくあるQualifier
Examinationがないことです。Qualifier Examinationとは一般的に、研
究を行うにあたって必要最低限の知識が問われる試験で、筆記もしくは
口頭試問といった形式で行われます。Duke BMEでは前の学科長が「Dukeの
BMEに選ばれて入ったからには、Qualifier Examinationをやる必要はない
」と言ったという逸話があります。よって、博士課程に入った学生の卒業
までの大まかな道のりは、授業→Thesis Proposal→Thesis Defenseとなり
ます。以下ではこの3つのステップをそれぞれ説明していきたいと思います。

授業
 授業にはいわゆる必修科目というものがほとんどありません。実質的に
は、Advanced Mathとみなされる授業3単位(つまりは1コース)とLife
Scienceとみなされる授業3単位を含めて計36単位を取得すればよく、かな
り自由に自分の研究に必要な授業をとることができます。この「みなされ
る授業」というのもかなり流動的で、最終的には自分のThesis Committee
Memberである教授陣がOKを出せば問題ありません。私の場合、Mathematics
、Statistics、Molecular Genetics and Microbiology、Cell Biology、
Biochemistryなどの学科から授業をとりました。これらとは別に、入学直
後に受ける留学生用の英語の試験で必要と判断された場合は、Academic 
WritingやAcademic Presentationなどを別途受講することになります(
私は両方とも受講しました)。

Thesis Proposal
 授業をほぼ取り終え、学位論文にむけた研究テーマがかたまってきた
段階でThesis Proposalを行います。これは自分の研究計画を研究費申請
フォーマットに従ってThesis Committee Memberである教授陣の前で1
時間弱の発表し、質疑応答を行う試験です。このThesis Committee 
Memberですが、自分の研究室の教授以外に、BMEから2人と他の学部、
学科から2人を選びます。 質疑応答は1時間ほど続き、そこでは結果
よりも、自分の研究の意義をきちんと理解しているか、研究計画がど
の程度よく練られているかといったことが中心に問われます。要する
にここでは「この学生はきちんとPh.D.に値する研究を行うことができ
るか」ということが評価され、この関門を無事にパスするとPh.D. 
Candidateとなることができます。自分の研究室の教授と常日頃しっ
かりコミュニケーションをとって研究計画をたて、教授がGoをだして
いれば、基本的には大丈夫だと思います。
 Thesis Proposalを行う時期は特に決められているわけではありま
せん(学科としてはなるべく早い時期に行って欲しいようですが)。
早い人は2年目すぐ、遅い人では卒業の半年前に行ったという話を聞
いたことがあります。私は3年目の途中で行いました。質疑応答では
、「もしこの方法がうまくいかなかったらどうするのか」、「期待し
ている結果とは反対の結果がでたらどうするのか」など計画通りに
研究が進まなかった場合のリスク管理をよく質問されました。研究
には不測の事態がつきものです。いわゆる「プランB」をどこまで
しっかり考えているかが重要だということですね。


Thesis Defense
 学位取得への最後の関門です。大学院生生活の集大成である博士
論文をThesis Committeeの前で発表します。発表自体はオープンで
、誰でも発表を見ることができるので、 研究室のメンバーだけでな
く、友人、家族などを呼ぶ人もいます。発表後、学生とThesis Committee
だけで質疑応答、審査が行われ、これに通れば、晴れてPh.D.を取得
することができます。私は まだThesis Defenseは行っていません。
しかしこれまで周りの友人のケースを見る限りでは、Thesis Defense
までこぎつければ卒業はほぼ確実 といった印象です。Duke BMEの
場合、投稿論文をだしていなければならないといった卒業条件はあ
りませんが、おそらく研究室によって教授が投稿論文を求めること
があると思います。私の研究室の場合、卒業までにFirst Authorで
2本という目安があります。これを易しいととるか厳しいととるか
は人それぞれだとは思いますが、自分の博士論文が投稿論文として
通っていれば、Thesis Defenseが楽になるでしょうし、その後の就
職活動(特にAcademiaを目指す場合)にも有利です。


Durhamについて
 Durhamは人口23万人程のそれほど大きくない都市ですが、比較的
安価な生活費、Duke、UNC、NC Stateといった大学、そして前述の
RTPの存在もあって、Durhamを含むTriangle Areaは近年人口が増
加し、めざましい発展を遂げています。一年を通じて晴れの日が
多く、はっきりとした四季の移り変わりを感じることができ、日
本人には過ごしやすい気候だと思います( 気温の変化は東京に近
いです)。東に2時間行けば海、西に2時間行けば山と様々なアウ
トドアアクティビティが楽しめるのも魅力です。その他American
Dance Festival、 Full Frame Documentary Film Festivalなど
のイベントや、大学での著名ミュージシャン、オーケストラのコ
ンサート、近年完成したDPAC(Durham Performing Arts Center)
でのミュージカルなど、質の高い芸術に触れることができます。そ
して「ゴルフ場の中に町がある」といわれるほど、周辺にゴルフ場
が多く、手頃な場所では$20程でプレイできるため、ゴルフをぜひ始
めて見たいという方には最適な場所です。

最後に
 大学もしくは大学院に留学期間中、留学先の国、地域のことはも
ちろん、それを通して日本という国や、日本人であることを強く意
識させられます。さまざまな国の人と出会い、時間を共有すること
はとても刺激的で留学の大きな魅力の一つだと思います。もちろん
留学先での学業・研究は重要です。しかしそれだけではなく、積極
的に交流の輪を広げ、ホームパーティに参加したり、一緒にスポー
ツをしたりすることで、留学生活がより一層充実したものとなると
思います。留学を考えている方、またすでに留学を控えている方、
大変なこともいろいろあると思いますが、ぜひ頑張ってください。



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