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【海外サイエンス・実況中継】合否決定のプロセス

posted Jan 30, 2012, 11:51 AM by Yunke Song   [ updated Jan 30, 2012, 11:51 AM ]
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_/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』
_/ March 2010, Vol. 53, No. 8
_/ カガクシャ・ネットワーク → http://kagakusha.net/
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三月を担当させて頂きます、布施紳一郎です。
「大学院留学を実現するためのノウハウ」の一環として、今回は大学院合否
決定のプロセスについての記事を掲載致します。この文章は、主に私がダート
マス大学院在学中にadmissions committeeの一員として合否審査に加わった経験
を元に書かれております。2月に続き、この文章は3月25日発刊予定の「理系大
学院留学を実現する方法 (仮)」に掲載される予定です。
この文章に関して、ご意見などございましたら、カガクシャ・ネットホームページ
経由でも、Eメールでもご連絡をお待ちしております。今後配信して欲しい内容や、
その他の要望など大歓迎です。

http://kagakusha.net/modules/weblog/details.php?blog_id=160
EMAIL:shinichiro.fuse [AT] gmail.com

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大学院留学を実現するためのノウハウ
合否決定のプロセス
布施 紳一郎
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ここまで、アメリカ大学院の入学審査に必要な基本要件を確認し、どうすれ
ば魅力的な出願書類に仕上げられるのか、どのようにTOEFLやGREなどの試験
に備えるべきか、また、日本国内で応募できる奨学財団や、出願後から合否通
知をもらうまでにできることを紹介してきました。本節では、この章の最後と
して、合否決定のプロセスに関して、カガクシャ・ネットメンバーの経験から
探ってみます。
以下は、生物医学系を専攻していた筆者の一人が、大学院生時代に学生代表
の一人として、審査委員を務めた経験をベースにしています。各プログラム、
または専攻などによって大きく異なることもありますのでご了承ください。

合否決定プロセス
出願書類の審査は、国内(Domestic:アメリカ・カナダ国民、またはアメリカ
永住権を持つ出願者)と海外(International: その他の国籍を持つ出願者)で、
分けて審査が行われます。国内出願者からの書類が時期的に数週間早く集まるため、
はじめにその審査が行われます。そして国内出願者の中から面接に呼ぶ学生を
決めた後、海外出願者の審査が行われます。国内・海外とで、多少は審査の基準が
異なるものの、基本的には似たようなプロセスで選考が行われます。ここでは、
読者のほとんどが該当するであろう、海外出願者の審査プロセスについて紹介します。
海外出願者を大きく分けると、中国からの出願者とその他の2つに分けられます。
中国からの出願者はそれだけ多く、海外出願者の中でもまた別枠として審査が
行われます。その他の国からの出願者数は、主にインド、韓国が多く、それに
加えて、ヨーロッパやアジア他国から数人ずつ、という順が一般的です。

Step 1: TOEFL、GPA、GRE
審査における最初の判断材料となるのは、TOEFLの点数、GPA、GREの点数の
3つです。特にTOEFLの最低基準点は明記されていることが多く、一般的にiBTで
80~100点(従来のCBTでは213~250点、PBTでは550~600点)が、多くの
大学院プログラムで要求されます。よほど特別なケースでない限り、最低基準点
に達していない学生は、まず審査から除外されます。合格者全員がこの基準を
満たしていたため、TOEFLの必要最低点数は非常に厳格だと考えて良いでしょう。
次に、GPAが3.0未満の学生が除外されます。また3.0以上であっても、専門科目
のGPA が3.0未満の学生は、ほぼ不合格となります。逆に全成績のGPAが2.9でも、
専門科目のGPAが3.5以上と専門に強い学生であれば、考慮される場合もあります。
国内出願者のGPAの審査は必ずしも一定でなく、例えば一流大学の3.5と無名校の
3.5では扱われ方が違います。または、高成績を修めるのが難しいことで知られて
いる大学で3.5を取った学生は、そうでない大学で3.5を取った学生よりも高く
評価されます。海外出願者の場合は、GPAの審査は非常に困難を極めます。GPAが
4点満点ではなく100点満点だったり、聞いたことのない大学出身、ということが
多々あるためです。その場合は、その国出身の学生に聞いたり、出願者の出身
大学の評判を聞くことによって、情報を集めます。日本の場合、科学論文など
でアメリカでも名が広く知られている大学が多いため、それほど大きな問題
とはならないでしょう。
3つ目の判断材料となるのが、GREの試験結果です。GREの基準は、各大学院
プログラムによって異なり、明確に表記されている場合と特に問われない場合
があります。一般的にVerbalとQuantitativeの合計が1200点、というのが最低
ラインとして知られています。しかし、日本を含むアジアの一部やラテンアメリカ
からの学生で、Verbalの点数が非常に低くても、研究で高い成果を出す学生が見ら
れるため、この1200点ラインはさほど厳格ではないでしょう。1150点を取ってい
れば、GPAが高ければ出願書類は考慮範囲内に入っていました。逆に1100点まで
下がると、GPAに加えて推薦状やエッセーが突出しており、さらには教授陣の中
に強力にサポートをしてくれる人がいない限りは、落とされるというのが現状の
ため、最低は1150点は欲しいところです。GREが合計1200点以下の学生でも、
GRE Subjectで高い点数を取得した学生は考慮に入れられる可能性が高い、と
いえます。なお、中にはGREのスコアを全く気にしない、というプログラム
や教授もいるため、出願先においてGREがどれくらい重視されるのか、聞いて
みることをお勧めします。

Step 2: エッセー、推薦状、研究歴、コネクション
最初の選抜を行った後、TOEFL、GPA、GREが突出して優れている学生と、
合格ラインに近い学生とで分けられます。前者に当たる出願者のうち、エッセー
から学問に対する情熱が読み取れ、推薦状もしっかりしている場合、面接へと
振り分けられます。逆に、エッセーがあまりに単調であったり、推薦者がその
学生を推していないケースなどがあれば、後者の出願者と同じグループへと
まわされます。
審査で最も困難であるのが、まさに合格ライン上の出願者の審査です。ここ
で非常に重要となってくるのが、エッセーと推薦状です。エッセーに、学問に
対する情熱や目的意識がしっかり記されている出願者、または強力な推薦状の
ある出願者が有利となってきます。推薦状は、もちろん全員が強く推してくれる
ことが一番良いのですが、一通でも突出した推薦状があれば有利になります。
例えば、GPAが3.5の出願者が二人いたとしましょう。出願者Aはエッセーや
推薦状が平凡だけれどGREは1300点、出願者BはGREは1150点だけれど、
エッセーや推薦状が優れている。このような場合、後者の出願者Bの方が面接
に進む可能性が高いといえます。
これらの出願書類に加えて、さらに重要となってくる要素が、ほかにもいくつ
かあります。1つ目は研究歴です。アメリカの大学では、理系専攻者であっても
、卒業研究を行うことは必須ではありません。一方日本の大学では、大学4年次
の1年間、みっちりと研究を行い、卒業論文を書き上げて口頭発表をします。
特にPh.D. 課程へ出願する場合、これは大きなアドバンテージとなります。
さらに、共著であっても、論文や学会発表などを行っていれば、十分にアピール
すべきポイントでしょう。修士課程を修了してから出願する場合、学部出身の
出願者に比べてさらに2年間の研究経験を積んでいるため、非常に大きなアピール
ポイントとなります。大学・大学院での研究歴に加えて、社会人経験がある出願者
は、異なる視点から研究の重要さを認識しているため、これも十分にアピール
するべきです。逆に、大学卒業後に数年間のブランクがある場合は、マイナス
材料となってきます。出願に至るまで、そして現在はどのようなポジションに
所属しているのか、出願書に明確に記すことをお勧めします。
2つ目は、出願先とのコネクションです。日本の指導教官とそのプログラムの
教授が親しかったり、共同研究を行ったことがあったり、または、以前に大学訪問
を行い教授陣と会ったことなどがあれば、遠慮なくエッセーを通じてアピールして
ください。それが審査員の目に留まれば、該当する教授に意見を聞き、それが審査
の重要なポイントとなってきます。つまり、内部に推してくれる人がいることは、
かなり大きなプラス材料となってきます。

Step 3: 面接
書類審査を通って面接まで進んだ応募者は、ほぼ合格したといえるでしょう。
しかし、ここまでたどり着いても油断はできません。
国内出願者は、大学の経費で大学のキャンパスまで面接に呼ばれ、面接に加え
て、出願先プログラムの学生との交流、大学キャンパス案内などを受けます
(Interview Weekendなどと呼ばれます)。プログラム側からすれば、予算を
使って遠くから学生を招待しているため、ほぼ受け入れると決めた学生以外は
招待しません。むしろ、訪問者たちに入学してもらえるよう、プログラムが
アピールする場ともいえます。その一方、書類審査で最後の最後まで合格ライン
上の出願者は、教授陣との面接結果や学生との交流などの内容が、最終合否判断に
影響を及ぼしてきます。例えば、エッセーから熱意を読み取れなかった出願者には、
モチベーションを探るような質問を、学力が問題となりそうな場合には専門的な
質問を、人格的に問題のありそうな応募者は在学生との交流具合を、英語力に
疑問のある人は英語力を把握するなど、多くの場合はポイントを絞って面接を
進めます。そうは言っても、面接まで呼ばれたのであれば、よほどひどい結果
でない限りは、合格通知が出るでしょう。
海外出願者の場合も、書類審査を通れば合格の確率はかなり高くなります。
日本からの出願者の場合には、面接の目的はほぼ1つ、英語力を試すためである
と予想できます。発音は、相手が理解できる程度であれば良いでしょう。面接官
の質問をしっかりと把握でき、適切な答えを丁寧にわかりやすく伝えられるか、
ということがポイントになると考えられます。英語でサイエンスのディスカッション
ができるか、ということを試す面接もあれば、動機などをうまく説明できるかを
試す面接もあります。
日本からの出願者であれば、現地でインタビューを行うことは難しいため、
多くの場合は電話面接となります。しかし、可能であれば、現地まで足を運び、
直接会って面接を行うことに越したことはありません。他の在学生を交えた
イベントなども多く開かれるため、それらを通じて、他の学生と上手くやって
いけることをアピールすることも重要ですし、逆に、本当に自分に合ったプログラム
を評価する意味でも有意義でしょう。もし、複数のプログラムから面接の依頼が
あれば、一度の渡米で済ませられるよう、上手く各プログラムに設定してもらう
ことも可能です。プログラム側からすれば、審査が行いやすくなるため、喜ば
れることが多いと思います。出願前に、既にキャンパス訪問を行ったことのある
場合は、現地に行って面接を行うことは、大して重要ではないかもしれません。
ただ、その訪問の際にプログラムの審査委員会のメンバーと会っておくことが
ポイントとなるため、あらかじめプログラム側にコンタクトを取って設定して
もらうことをお勧めします。

ライバルに差をつけるには
日本からの出願者が、他国からの出願者に差をつけるには、どのようにすれば
良いのでしょうか。これは非常に難しい質問です。当然ながら、その応募者に
よって答えが異なってくるでしょう。一般的には、日本からの出願者は、他国
からの出願者に比べて英語力に苦しみ、GREのVerbalの点数が低いことが不利
になるといえます。エッセーにおいても、英語力に加えて、欧米型のエッセーの
形式に不慣れな応募者が比較的多いため、総合的に若干不利であると予想され
ます。さらには、日本の大学の教授は、英語で推薦状を書くことにあまり慣れて
いない方が多いため、推薦状にも苦労することが多いでしょう。
その一方で、日本が他国に比べて有利なのは、科学教育の質と研究レベルの
高さにあります。日本の科学教育の質の高さは、アメリカの研究者も当然ながら
知っており、日本でしっかりと教育を受け、良い成績を残した学生は、非常に
高く評価されます。そのため、学部・修士の成績証明書を翻訳する際にも、講義
の内容がしっかり伝わるように翻訳することが重要です。さらには、日本は
アメリカの大学と異なり、早くから専門化し、その専門を細かいレベルまで学ぶ
機会があります。その機会を十分に活かし、理解の深さをアピールすることも
可能でしょう。先にも触れた通り、日本の理系学生は、大学4年生の1年間、
大学院生と同様に研究室で研究活動に従事し、卒業論文を書き上げます。逆に
アメリカでは理系でも卒業研究を行わない学生も少なくありませんし、研究
経験が比較的少ないといえます。この点はしっかりアピールすることをお勧め
しますし、身に付けた知識・技術・研究プロジェクトの内容と成果を十分に
伝えることは、出願に大きなプラス材料となるはずです。

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自己紹介
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布施 紳一郎
慶応義塾大学理工学部卒(2001年)、東京大学院医科学修士(2003年)。
米国ダートマス大学院博士課程修了(2008年5月・微生物学・免疫学専攻)。
モルガン・スタンレー・夏季インターンを経て、2008年9月より米国ボストン
にてヘルスケア専門の戦略コンサルティング・ファームに勤務。欧米大手製薬
企業、米国バイオテック企業を相手に新規医薬の開発・商業化、提携・M&A戦略
支援、新規市場開拓、営業体制改善などプロジェクトに参画。

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編集後記
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現在アメリカは春季リクルーティングの真っ只中です。コンサルタントとして、
主にアイビーリーグ校やMITからの大学生・大学院生(Master’s, Ph.D., MBA)の
面接・審査を行なっています。企業と大学院では学生に求められる資質が異なり、
自分を見つめ直すいい機会になっています。将来この経験に関しても執筆でき
たらと思います。



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