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【海外サイエンス・実況中継】Ph.D. 取得後のキャリアを成功させるには・総集編(後)

posted Jan 30, 2012, 11:41 AM by Yunke Song   [ updated Nov 25, 2012, 9:15 AM by Yuji Takeda ]
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_/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』
_/ June 2009, Vol. 47, No. 2, Part 2
_/ カガクシャ・ネットワーク → http://kagakusha.net/
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今号は、「Ph.D. 取得後のキャリアを成功させるには~様々なケースから学ぶ
こと」の総集編・後編です。興味を持たれたエッセイには、クリックして元記
事へアクセスしてみて下さい(無料ユーザー登録が必要です)。

2008年4月より始まった、第二弾メールマガジンも、今回を持って終了となり
ます。今までご愛読ありがとうございました。今度は、7月上旬開始を目標に、
第三弾のメールマガジンを予定しております。今年1月に実施させて頂いた読
者アンケートの結果をもとに、下記2つのテーマで検討しています。
・最近発表された論文の簡単な紹介とその将来的な可能性など
・大学院留学を実現するノウハウ集

引き続き、みなさんのご期待に添えるような情報を配信していければと、カガ
クシャ・ネット一同考えております。今後ともどうぞよろしくお願い致します!


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Ph.D. 取得後のキャリアを成功させるには~様々なケースから学ぶこと
総集編(後)
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【特別エッセイ】ノーベル賞学者から学ぶこと
杉井 重紀(ダートマス大修了、現ソーク研究所)

『このエッセイでは、筆者がこれまでお会いしたノーベル賞学者や、今年受賞
した科学者から、どういった特徴が共通しているのか考察することにします。
・・・ノーベル賞に当確になるということは、成功した研究者の中のさらに一
握りに過ぎず、まさしく宝くじに当てるようなもので、かなりの運も必要になっ
てきます。・・・「確率」を高めるための項目を主に4つ、挙げてみたいと思
います。・・・その4つとは、NoBEL(ノーベル)の頭文字を取って、NOvelty
("新規"の発見)、Belief(成功を"確信"している)、Environment("環境"
に恵まれる)、Love(本当に"好きなこと"をやっている)、です。』



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サイエンスの Ph.D. はサイエンス以外にも活躍の場はある!
小池幸弘(南カリフォルニア大修了、現米投資銀行)

『科学というのは、いわば知的好奇心に基づいて新たな発見に意義を求めます。
そしてその「発見」するに至ったプロセスを詳細にまとめ、論文という形で世
に公表します。ところが、その「発見」は、現在世の中が求めているものとあ
る程度の相関がなければ、そのインパクトは希薄なものとなってしまいます。
・・・外資系証券業界において、理系の博士号取得者が活躍できる場は意外に
も数多いです。・・・投資銀行での業務は次に挙げる点で、これまでみなさん
がサイエンスで培ってきた(or 培ってゆくであろう)スタンスに非常に似て
いると思います。(1)事実を定量的に分析する。現状を把握し、その原因と
なった事柄を究明します。(2)仮説を立て、検証する。リスクやベネフィッ
トを熟慮し、ベストな解決策を考案します。(3)常に頭を柔らかく。新しい
ものを取り込み(input)、また与える(output)ことで互いに知的興奮を味
わうことができます。』


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面接官から見た3つの重要ポイント
佐藤修一(サウスカロライナ大)

『こちらに留学する前に4年間弱会社勤めをしました。その際、多くの学生と
面談し、人事に報告をしたことがあるので、そのときのお話をします。・・・
学生を面談する上で、会社の人事が一番重視していたのは、「その学生と一緒
に働いてみたい気持ちになれるか」でした。・・・2つ目は、学生がその会社
に本当に興味を持っているかを重視しました。・・・3つ目は、学生がどんな
ことをやってきたか、良く耳を傾けるようにしました。・・・対策としては、
恐らくどこの就職ガイドでも書いてあることかと思いますが、自分を知り、相
手を知り、それを短い面談中にいかにうまく伝えることだと思います。』


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ひよこ博士が見た「これから」オプション
HNミユキ(ドイツ)

『日本とアメリカとドイツの大学社会に暮らしてみて感じるのは、大学システ
ムの違い。そこには、大学世界に君臨してシステムを動かしてきた老獪狡猾な
研究者達の姿の違いと、そうやって作られてきたシステムに対するお上の態度
の違いが見え隠れし、どこを見ても野望をあからさまに、またはこっそり持っ
た人たちの目がきらりと光り、藁をつかもうとする手があちこちに伸び、希望
や失望や欲や妥協なんかが渦巻いているのです。・・・外国のしかも社会のこ
となんて、行ってみなきゃわからないのに、行く前から選ぶって不可能。その
通りです。だからもう、私は住みたい場所に行くのがいいよ、と言うことにし
ています。行ってからシステムに合わせて自分を強化していけばいい。私生活
が充実してりゃ仕事も頑張ろかって思えるものです。

ばかばかしいようだけど場所(国)を問わず、「成功」するためのコツを二つ
挙げておきます。(1)スーツを着ること。・・・(2)趣味を持つ。・・・』


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誰を知っているか、誰が推してくれるか
斎藤広隆(ミシガン大修了、現東京農工大・特任准教授)

『博士取得後の成功は、ずばり「人脈」です。特に斬新な提言でもないですし、
言い古されているところもあるかと思いますが、やはり人脈は博士取得後のキャ
リア形成に欠かせません。これは日本に限らず、アメリカでも同じことです。
・・・アメリカ時代の同僚によると、就職に一番大事なのは「お前が誰を知っ
ているか、誰がお前を推してくれるか、だ」と。

一番大事なことは、当然ですが、自分の「実力」です。ですが、実力を数値化
して、他者と差別化することは非常に難しいことです。・・・結局誰が推薦者
なのか、何か関係があるか、といったことが重要になるのです。

実際の就職活動の中で、通常応募する際には、履歴書や研究や教育に関するエッ
セイに加えて、推薦書が必要となります。この推薦書が非常に重要で、誰が推
薦書を書くのかによって、結果は大きく変わってくるといっても過言ではあり
ません。・・・これは、どこかの国の話ではなく、あらゆる分野で世界共通の
話だと思いますし、アメリカでもその傾向は強いように思います。やはり試験
の点数や、研究成果だけでは、人間の評価は難しいということなのでしょう。

結局何が言いたいのかというと、「とにかく人脈作りをしてください」という
ことです。この一言に尽きます。人と知り合うチャンスがあれば、積極的に活
用するということが大事です。学会に行く目的は、自分の研究発表だけでなく、
人脈作りにあると思います。積極的に質問する、ソーシャルイベントにも欠か
さず足を運ぶ、といった地味な活動が、皆さんの将来のキャリアに大きく影響
するかも知れません。 』


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アメリカ企業就職サバイバルのためのアドバイス(1)
青木敏洋(アリゾナ州立大修了、現JOEL USA, Inc.勤務)

『アメリカ経済は、サブプライムの問題に端を発し、世界経済を大混乱に陥し
入れました。・・・しかし、まずお伝えしたいのは、このような不況の中でも、
人を探している会社はある、と言うことです。・・・仕事を見つけるための鍵
は、ネットワークです。特にこのような不況下では、ネットワークは益々重要
性を増すものと思われます。ネットワークとは、日本でいう「コネ」に近いも
のがありますが、日本でのようなマイナスイメージは全くなく、むしろ必要か
つ優秀な人材をハズレなしに雇う手段として、非常に好まれています。アメリ
カでは知っている人を雇う、知っている人の紹介を最優先する傾向があるから
です。

ネットワーク作りの次にお勧めすることは、今すぐレジュメを書くことです。
仕事を探しているときに、学会などでお会いした方にレジュメを送ってくれ、
と言われたことが何度もありました。・・・そこで、アメリカ企業に応募する
際のレジュメの書き方について、実体験から学んだことを少し紹介したいと思
います。』


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アメリカ企業就職サバイバルのためのアドバイス(2)
青木敏洋(アリゾナ州立大修了、現JOEL USA, Inc.勤務)

『レジュメを書いたことがあるという人はおられるかもしれませんが、アメリ
カで仕事に応募する上で欠かせないものとして、カバーレター(Cover Letter)
が挙げられます。・・・カバーレターは自己紹介の手紙で、応募するポジショ
ンごとに書く必要があります。日本では、仕事に応募するというよりも、会社
に応募するのが一般的で、応募の段階では、具体的にどのような仕事につくの
か分かっていない場合が多いでしょう。しかし、アメリカの場合は、各ポジショ
ンごとに適任の人を雇います。そして、レジュメとカバーレターにより、自分
がどれほどそのポジションに適しているかを説明する必要があります。

募集先が、レジュメ・カバーレターを通じて応募者に興味を持つと、まず電話
でのスクリーニング、つまり篩(ふるい)に掛けることがよくあります。・・・
ジョブインタビューの際には、グループで面接したり、一人ずつ何人もの人と
面接をしたり、プレゼンテーションを頼まれたりします。・・・面接に行く前、
もしくはオファーを受ける前に必ずやるべきことは、応募しているポジション
のその地域での平均的な初任給・給料についてリサーチをすることです。・・・
オファーを受けたら、給料を含めてオファーの内容をしっかり確認するように
しましょう。

夢の仕事につくために一番大切なことは、実力を身につけることだと思います。
実力とは、ただ単に勉強、研究、仕事が出来ることを指すのではありません。
それらに加えて、人間関係の技術、チームワーク力、リーダーシップ、幅広い
知識、語学力など、様々な面でプロフェッショナルあるいはビジネスパーソン
としての力をつけていくことであり、その努力をすればきっと道は開けていく
ことと思います。』


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アカデミアで研究を続ける場合:良いポスドク先を見つける方法
杉井 重紀(ダートマス大修了、現ソーク研究所)

『日本でもだんだん一般的になってきましたが、一人前の研究者を目指す場合、
海外では博士号取得後、さらに数年の間、「ポストドクター研究員(通称・ポ
スドク)」として、研究することが普通です。・・・将来設計から、海外でポ
スドクをして研究生活を送りたいというのなら、みなさんがよいポスドク先を
見つけられるよう、私の限られた経験と見聞から、アドバイスしたいと思いま
す。

ポスドクは、大学院生のとき以上に、所属ラボへの依存度が高くなります。・
・・学生の場合とは違って、「大学ランキング」は意味がありません。・・・
ポスドクの生活は、ラボでの研究が9割以上を占めるのが普通です。従って、
そのラボのボスの人格・研究能力・経済力によって、自分の将来までもが左右
されることを頭に入れておいてください。・・・

キャリアを考えたときに最重要なのは、そのラボの出身者がどういった進路に
行っているか、ということです。・・・それから、ボスの人間性です。・・・
自分がある程度フレキシブルであれば、優秀なボスというのは、サイエンスの
分野でホットになるトピックを選別している、もしくは自ら作り出しているこ
とが多いので、こういったボスのもとで働いている限り、将来の研究内容を選
ぶうえで困ることがあまりないのです。・・・さて、そうやって希望研究室を
リストアップしたあとは、 自分が各々のラボにどうやって「コントリビュー
ト(貢献)」できるか考えます。』


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アカデミアで研究を続ける場合:カバーレター作成と面接時に見るべき点
杉井 重紀(ダートマス大修了、現ソーク研究所)

『希望ラボがいくつか決まったら、アプライの手紙を書きます。このときのカ
バーレター作成は、非常に重要です。重要ポイントは、(1)なぜその研究室
に興味を持ったか、(2)自分の簡単な研究歴、(3)その経験と知識がどう
して志望ラボに貢献できるのか、です。これを簡潔かつ網羅的に、1ページに
まとめます。

運良く良い返事が来たら、次にインタビューとなります。・・・良い印象を与
えるためには、万全の準備をして、良いセミナーをするのは当然のことですが、
ポスドクインタビューの場合、実はかなり重要なのが、メンバーとの個別面談
(ランチやディナーを含む)です。・・・家に帰ったあと、面接に呼んでもらっ
たお礼と、再度そこのラボにどれだけ行きたいかをアピールするべく、「サン
キューレター」を書いてEメールで送りましょう。

もし「ポスドクの就職活動を成功させる秘訣」を一言で表現してください、と
聞かれたら、私は「相手の立場に立って考えること」と答えます。これは、ポ
スドクに限らず、他の就職活動にも言えるかもしれません。』


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Ask big questions(前)
出雲麻里子

『毎年1月から4月まで、新しいファカルティを選ぶためのジョブインタビュー
が行われます。幸いにも、私は、アカデミアでの職を希望する人に囲まれてい
ることもあって、約4年ほど前から、身近な人の経験を直に見聞きするように
なりました。・・・留意する点や教訓的なことはたくさんあり、一言ではとて
もまとめきれないのですが、一連の出来事を通して強く感じたことの一つは、
研究室主宰者になったら何をやりたいか、これを明確にする必要がある、とい
うことです。

まず、アカデミアでの就職活動の一般的な流れを書き留めておきます。・・・
では、どのタイミングで職探しに踏み切るか。いろんな意見があると思います
が、・・・自分の「売り時」がホットな間、というのが一番良いタイミングの
ようです。・・・大きな夢を語るだけではありません。同時に、自分の話すこ
とが実現可能かどうか、論拠のあるデータを示すことができるかどうか、研究
資金の目処は、などなど、かなり具体的なことも問われることになります。

肝心要のタイトルにつながる話ですが。自分がどんな問いを発するか、という
のは、どのような実験をするのか、ということにつながります。ましてや、ポ
スドクも後期になって考え始める「問い」というのは、自身の研究の方向性を
決める上でとても大事なことだと思うのです。』


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Ask big questions(後)
出雲麻里子

『誰にも興味のある研究というのはあります。が、それをサイエンスとして追
求していくためには、アプローチしやすい「クエスチョン」の形にする必要が
あります。・・・うまいなあと思う人のよどみないトークを聞いていると、実
験可能なプロジェクトが、ごくごく自然に流れてきます。しかも、その積み重
ねを聞いていると、どういう方向にその人の研究が行こうとしているのかが分
かる上、次にどう発展していくのか、とても大きな期待を寄せることがよくあ
ります。・・・この中で一番学びたいと思ったのは、根本にある「クエスチョ
ン」の立てかたです。何が知りたいのか。何がやりたいのか。どうしてそれが
重要だと思うのか。その大元さえしっかりしていれば、後は比較的小さな問題
だと思うのです。具体的に言うと、どういう目的で研究をしているのかをはっ
きりさせていると、技術開発や最初の試み的な実験で少々横道にそれても、大
きな流れの中で動いていることを常に認識できると思うのです。

目標を大きく持つことは大事です。しかし、いざ、実験ベンチの前で手を動か
すとなると、実際に問題となるのは、個々の実験の計画や、工夫、実現性、解
釈の仕方など、細かいことになります。一つのプロジェクトを仕上げるために、
どれだけの「細かいクエスチョン」が必要か。研究の経験のある方はよくご存
知だと思います。ですので、ここでは敢えて、ジョブ・インタビュー(就職時
の面接)にからめた話をしようと思います。・・・

無理矢理まとめると、「問いは大きく、計画は現実的に」ということになるで
しょうか。問題は、「問い」を「(実験)計画」に変換する部分です。・・・
アメリカの大学院を見ると、あちこちにこうした「訓練」の場が設けられてい
ます。』


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編集後記
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私の指導教官がサバティカル(研究休暇)に入りました。夏休み中はもちろん、
12月まで定期的な研究室ミーティングや研究進捗ミーティングがキャンセルに
なりました。来春の卒業を目指している私にとって、これはなかなか厳しい状
況なのですが、逆にそこをプラス思考で乗り切って、主体的に研究を進めてい
けるよう、頑張っていきたいと思います。また、前号の総集編でも取り上げた、
今村さんが執筆して下さったような、「横軸」の研究者たちを巻き込んで、ま
ずは卒業まで辿り着ければと思います。(山本)


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