posted Jan 30, 2012, 11:14 AM by Yunke Song
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updated Jan 30, 2012, 11:14 AM
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_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ _/ _/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』 _/ February 2008 Vol 30 No 1 _/ カガクシャ・ネットワーク → http://kagakusha.net/ _/ _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
2007年1月に始まった「サイエンス・実況中継」。最先端の研究紹介の みならず、執筆陣による「なぜアメリカの大学院に行くことを選んだか」の エッセイを、特別号としてお送りしました。このネットマガジンの副テーマ として始まったものでしたが、密かに(?)好評を博してきました。
先月は、今まで紹介してきた最先端の研究分野の紹介を、総集編としてまと めてきましたが、今月は、この「米国大学院留学した理由」エッセイ集のハ イライトを、数回に分けてお送りします。各エッセイの本文もハイライトを 一部抜粋してあります。リンク先のエッセイを見るには、簡単なユーザー 登録(無料)が必要です。
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【大学院留学:なぜ日本でなくアメリカの大学院を選んだか。】特別号ハイライト
■2007年1月
まわりに同じ志を持つ人たちがいる環境の中で過ごす 杉井 重紀(ダートマス大修了、現ソーク研究所) http://kagakusha.net/modules/weblog/details.php?blog_id=8
『私が留学しようと思ったのは、きわめて個人的な理由からであり、「英語 で研究発表をしたい!」とか、「生活費をもらいながら在学できる」とか、 「世界の一流の研究者と肩を並べて研究したい」などという、高尚な理由が 主ではありません。結果的に、留学できてはじめてこれらの利点に気がつい て、自分は何とツイていたのだろうと思います。』
■2月
人のための学問:学際領域への興味 今村文昭(タフツ大学) http://kagakusha.net/modules/weblog/details.php?blog_id=10
『アメリカは特に人と学問の流動が盛んな国です。物理を勉強した人が経済 で修士を取り、文学を勉強した人が生物学のPh.Dを目指します。 社会的な 流れが、分野をまたいでこそ成り立つ学問が成長するようになっているの です。そして、そういった学問の専門家を育てる大学院レベルの教育機関が たくさんあります。自然に魅力を感じ、アメリカで勉強するということに ついて具体性が帯びるようになりました。』
日本の博士課程との違い。企業で研究することとの違いとは? 田辺克明(カリフォルニア工科大学) http://kagakusha.net/modules/weblog/details.php?blog_id=12
『 日本では、博士号を取る人は、日本の大学で博士課程を修了後にポスドク として1、2年間留学するというケースが一般的であるようですが、若い時の 方がいろいろな物事に対しての吸収力が強くていいだろう、と考えたり、な んとなく人とは一味違う道を行きたい、といった思いがあり、留学すること にしました。なんともいい加減で説得力に欠ける理由ではありますが、とも かく、僕は日本で修士1年の冬に、就職、進学、留学の中から留学を選びま した。』
■3月
日本からドイツ、ドイツからアメリカ、そしてアメリカからドイツへ HNミユキ(ドイツ) http://kagakusha.net/modules/weblog/details.php?blog_id=15
『私は日本の地方国立大学で、獣医学を学びました。・・・そうしているう ちに、うっかり「文部省派遣交換留学制度」を見つけてしまい、好奇心から テストを受け、合格してドイツに留学しました。・・・ 実験自体は夏休み の自由研究をちょっと小難しくした感じでしたが、それが認められて、アメ リカで博士号をとらないかとお誘いがかかり、二つ返事で日本の大学卒業後 に渡米となりました。・・・ 一応アメリカのほかに、日本とカナダとオラ ンダとドイツの大学院を調べたのですが・・・学費、奨学金が出ないかもと いう点で、日本とカナダの一部が脱落。基礎となる勉強を授業としてオファー してくれない日本とカナダとオランダとドイツとアメリカの一部が脱落。 残ったのはいくつかのアメリカの大学院のみ。』
日本の大学院入試に失敗してはじめて見えた選択肢 山本智徳(ジョンズホプキンス大学) http://kagakusha.net/modules/weblog/details.php?blog_id=17
『・・・番号がないんだけど」という折り返しの電話。確かに試験の出来は 芳しくなかったものの、まさか自分が落ちるとは考えたこともなく、ぼんや りと思い描いていた「6ヶ年計画」が一気に崩壊。まさに自分の将来が真っ 暗になった瞬間でした。・・・ そんなある日、ふと立ち寄った本屋で、大 学院留学という本が目に留まりました。そうだ、何も日本国内だけで考える 必要はないんだ。今まで考えたこともなかった選択肢に遭遇した瞬間でした。 もちろん同じ失敗を繰り返した自分が、些細な気持ちから「海外逃亡」を挙 げても何の説得力もありません。しかし、色々な選択肢を吟味しつつ他国の 大学院を調べるうちに、海外に行って一から自分を鍛え直したい、という思 いが強くなってきました。そして不合格の日から1ヵ月後の9月下旬、両親や 指導教官に自分の気持ちを伝え、大学院留学を目指すことを決意しました。』
■4月
アメリカで学んだ大学院制度を日本に取り入れる 斎藤 広隆(ミシガン大学修了、現東京農工大・特任助教授) http://kagakusha.net/modules/weblog/details.php?blog_id=21
『 こうして振り返ってみると,私の大学院留学は,「人材の流動性」やそ れに伴う「専門教育の柔軟さ」や「細かい大学院教育」などで表現される 「アメリカの大学院」というシステムの中で,研究者・教育者として生きて いく力をつけたいという,強い思いによるものだったと思います。果たして 留学という選択が結果的によかったのか,まだ結論は出ていません。ただ これまでのところ悪かったとは思えないので,まあよかったということに なるのでしょうか?また,大学院留学を通して,大学院における教育・指導 の私の理想像というのができつつあるので,この点に関してはよかったと 思っています。自分の描いた理想像について,将来実践で試す機会が得られ ればいいなと思います。』
■5月
企業で働いた経験を生かしてアメリカの博士課程へ 杉尾 明子(カンザス州立大修了、現英ジョンイネスセンター) http://kagakusha.net/modules/weblog/details.php?blog_id=26
『 会社で働いていれば、とりあえず安定は得られると思っていましたが、 会社の再編成で数人が解雇されて、安定ですらないということを思い知らさ れました。・・・将来的に不安定であっても自分のやりたい研究テーマを選 び、多少なりとも世の中の役に立つような研究をできたら、もう少しハッピー で満ち足りた老後を過ごせるんじゃないだろうか、と思うようになりました。 一研究者として働いて研究結果が世のため人のためになるほどの能力が自分 にあるかは疑問でしたが、きちんと学位を得て、研究を積み重ねていくこと で、自分の後から来る若い人の教育や、科学とは無縁の人とのコミュニケー ションにも役に立つことができるのではないか、といった考えをもちました。 そこで、もう一度大学に戻って、学位を取得して、少なくとも研究者として 一人前になって出直したいと考えました。植物病理学を選んだのは、農業の 役に立てると思ったことと、植物と微生物の戦争を研究するのは、まるで スターウォーズを観るようで、とてもおもしろそうだと思ったためです。』
給料がもらえる院生とフレキシブルな就職口 青木 敏洋(アリゾナ州立大、現JOEL USA, Inc.) http://kagakusha.net/modules/weblog/details.php?blog_id=30
『友人から、アメリカでは理系の大学院生の授業料はただ、さらに給料まで もらえる、という話を聞いて、ぜひアメリカの大学院に行きたい、と思い 色々と調べました。そしてアメリカの大学院でティーチングアシスタント (TA)かリサーチアシスタント(RA)をすると、TAの場合は学科が、RAの場合は 教授が授業料と給料を支給してくれるということがわかりました。まるで夢 のような話で、すぐにリサーチをはじめました。・・・アメリカにおける サイエンス・工学系博士号取得者の就職は、日本に比べ非常にフレキシブル です。Ph.D.をとった後、すぐ企業に就職する人、数年ポスドクをして企業 に就職する人、企業に就職してから数年たってアカデミアに戻ってくる人と、 さまざまです。このように博士号取得者の就職が多様であるのは、アメリカ の企業が積極的にサイエンス・工学系のPh.D.を高給で雇うからです。』
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 編集後記 ─────────────────────────────────────
アメリカでは大統領予備選で大盛り上がりですが、アカデミア界ではひっそ りと重要な「選考」が行われている最中です。多くの人にはなじみがないか もしれませんが、今の季節(1月と2月)は、アカデミアで助教授の職を探 している人たちの、インタビュー・シーズンの真っ最中でもあります。バイ オ医学系のトップ校では1つの助教授のポストに、だいたい200から300人 の応募があるのですが、そこから5-8人程度インタビューに呼び、1人当 たり1.5 - 2日かけて、インタビューが行われます。
インタビューに呼ばれた人は、教授陣や学生との会食(朝・昼・夕食)、 セミナー発表、チョークトーク(教授陣の前で将来の研究計画を議論する もの)、教授十数人との個別面談などを行います。狭き門ですから候補者は 必死になるのは当然ですが、大学・研究機関にとっても、より優秀な学者を 確保しようと、お金と時間をたっぷりかけて、候補者を高待遇し、気に入っ てもらおうとします。候補者もほとんどの場合、複数の箇所に面接に行って いるので、双方が「インタビュー」しているわけです。私の研究室でも、 何人かが就職インタビュー中ですが、ほとんどが幾つも大学をまわっている 訳で、複数の大学からオファーをもらったりすると、その辺の駆け引きとか には興味深いものがあります。 (杉井)
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