posted Jan 30, 2012, 11:23 AM by Yunke Song
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updated Jan 30, 2012, 11:23 AM
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「留学本では教えてくれない海外大学院のホント~実際の体験から」第5回は、 今週と来週の2回に渡って、タフツ大学の今村さんにお送りしてもらいます。 カリキュラム構成委員の一員として、今村さんが自ら体験した仕事内容を、3 つにまとめて紹介してくれます。今回の前編では、C&Dとはなんぞや、そし て、評価の確認と講義の改善についてです。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 留学本では教えてくれない海外大学院のホント~実際の体験から 『学生代表として携わったカリキュラム構成委員会』 今村 文昭 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
こんにちは、タフツ大学栄養学大学院大学の今村文昭です。留学本では教えて くれないであろう体験として、Curriculum & Development Committee(以下、 C&D)という、カリキュラムの構成委員会に1年間所属した経験を、紹介さ せて頂きたいと思います。
私の所属する栄養学の大学院大学は、その科学の質から、学生のバックグラウ ンドは、社会学から生命科学まで、とても幅広いものです。そんな状況ですか ら、学生が一様に満足するような講義の質を保つのは、とても困難です。そん な教育上の困難を取り扱うのが、C&D委員会です。
その委員会では、カリキュラム向上のために、学生が意見をし、その意見が委 員会で議題となる仕組みが整っています。特徴的なのは、その委員に学生が参 加することが義務付けられていることです。
その委員会は、それぞれ社会学系・生命科学系の教授10名ほど、そして両領 域の学生1人ずつで編成されています。昨年度、私は光栄にも生命科学系の学 生代表として、委員会に参加する機会を得ました。
月一度の委員会に参加し、学生としての意見を述べることが任務なのですが、 その際に大学院教育の仕組みを知ることができました。今回と次回と合わせて、 次の3点を解説させて頂きたいと思います。 1.講義評価の確認と講義の改善 2.博士課程の統一試験の改善 3.留学生への配慮
1.評価の確認と講義の改善 各授業科目の学期終了前後、約3週間のあいだに、学生は講義の評価を On- line 上のフォームを使って記入することが求められています。その評価は、 その後の科目の改善に生かされるのですが、その評価を行うのはあくまでボラ ンティア。ボランティアで科目の評価を行うのは、期末試験の時期にはとても 疲れることです。したがって、誰もが進んでその評価を行うわけではなく、回 答率は望ましいほどではありません。私は学生委員として、そういった学生に 聞き取り調査を行いました。必須科目を重点的に、Online フォームでは得ら れないであろう批評を吸い上げるのです。そして、Online の評価と学生委員 が集めた意見を、C&Dで議論する機会が設けられます。
結果として、一つ一つの講義は、その講義のインストラクターのみの主観的に よって改善されるのではなく、客観的に批評されることになります。実際に私 がC&D 委員の際、講義を担当する教授の幾人かは、C&D 委員会や教授会 議に召喚され、講義の改善のための会議を行うこととなりました。
また、C&Dでは、一つ一つの講義評価を重視するとともに、プログラムとし ての一貫性を高めることを目的として、カリキュラムを検討しています。各講 義が孤立しているのではなく、プログラムを一つのユニットとして、それぞれ の講義が連携して教育を施すことができるか・・。そうした点は、個々の講義 の枠を越えて、包括的に議論する必要があるからです。
私がC&D に参加していた時期には、特に統計学の教育について、こうした 視点からの改善が図られました。大学院では統計学を基礎から応用まで教えて いるのですが、たとえば、生命科学分野と社会学分野では、統計学は類似点相 違点が混在しています。何を基礎で教えるか、何を応用で教えるか、クラスを 両分野で分けるべきか、そうした事柄の改善が、C&Dが旗を振ることで図ら れました。また生命科学系の講義についても、博士課程学生が行う、ラボロー テーションについても、講義で学んだ内容と実験系の研究で行う実験内容など が、相互にマッチするようにカリキュラムが検討・改善されています。
また、学生による講義の評価は、その学期末に行われるため、先に紹介した Online のフォームだけでは、既に講義の履修を終えている、シニアの学生の 意見を聞くことができません。こうしたシニアの学生の意見がカリキュラムの 改善に反映されないのは望ましくないことです。なぜなら、シニアの学生が研 究に携わっていくと、 「あの講義はもっとこうあるべきだったのでは・・」 「あの講義は研究に役立てるためにはこうすれば・・」 「もっと科学論文を書く機会があった方がよかった・・」 などなど、経験者としての意見を持つようになるからです。そうした意見を集 めることにもC&Dは取り組んでおり、学生と教授が議論を重ね、講義の改善 のため精力的に活動しています。
私の籍を置いている栄養学の大学院大学では、外部の研究者に講義をお願いし たり、栄養政策や栄養生化学などの背景や興味の内容も異なる学生が混ざって 講義を受けることが多いため、講義の質や学生の満足度を保つのが難しい教育 機関と思います。学生による、講義の評価や客観的な講義の評価は、必須とい えるでしょう。そうした評価システムをを知ることができて、貴重な経験を得 ることができたと思っています。
それでは、次回の寄稿にて、次の2点について紹介させて頂きたいと思います。 2.博士課程の統一試験の改善 3.留学生への配慮
どうぞお楽しみに・・。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 自己紹介 ─────────────────────────────────── 今村文昭 上智大学理工学部化学科卒(学士) コロンビア大学医学部栄養学科卒(修士) 現在タフツ大学フリードマン栄養学科学政策大学院大学栄養疫学博士課程在籍
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 編集後記 ─────────────────────────────────── C&Dの委員会に参加することは、研究の時間を削ってしまうという点があり、 私の指導教授は研究の遅延に懸念を示しました。確かにそうだったかもしれま せんが、滅多に得ることのできない機会でしたし、とてもよい経験だったと思っ ています。「客観的な評価を行うシステム」というのは、どんな環境でも有用 ですので、この経験を今後、実際に生かすことができたら・・と思っています。 (今村)
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