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【海外サイエンス・実況中継】 実験室にとどまらず、様々な場所に観測に出かけ、様々な研究グループとコラボレーション ~ 大気化学

posted Jan 30, 2012, 11:12 AM by Yunke Song   [ updated Jan 30, 2012, 11:12 AM ]
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_/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』 
_/  January 2008 Vol 27 No 2 
_/  カガクシャ・ネットワーク → http://kagakusha.net/ 
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サイエンスの実況中継の第27回目をお送りします。先週は「なぜアメリカ
の院を選んだか」のエッセイを執筆した、カリフォルニア大学バークレーの
峰島さんが、今回は「大気化学」について書いてくれました。サイエンスの
分野はますます、違う分野の研究者たちが寄り集まっての共同研究が重要に
なってきているし、そうしないと新たな発見をすることが難しくなってきて
いますが、「大気化学」を含む「大気科学」の分野は、そういった「未来の
サイエンスの姿」の先端を行っていることがわかります。環境問題と結びつ
いて、今後いっそう重要になりそうな分野でしょう。
(杉井)



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今日のエキスパートな質問(答えは下にあります)
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1.大気科学はどういった事柄のメカニズムを解明しようとする分野でしょ
うか?

2.峰島さんの研究テーマとは?

3.メキシコで行われたMIAGROキャンペーンとは、どのようなプロジェクト
だったのでしょうか?



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実験室にとどまらず、様々な場所に観測に出かけ、様々な研究グループと
コラボレーション ~ 大気化学
                          峰島 知芳
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皆さん、こんにちは。カリフォルニア大学バークレー校化学科で大気化学を
専攻している峰島知芳と申します。今日は、私の専門分野である大気化学に
ついて少し紹介したいと思います。

最近は環境問題が非常に注目されていますから、地球温暖化、スモッグ生成、
CO2の増加など皆さんよく聞いていらっしゃると思います。大気科学はこう
いった事柄のメカニズムを解明しようとする分野です。

大気で起こっている事柄を理解するのには、いろいろな分野の人達の力が
必要です。 例えば、気象学、化学、物理学など、大気に直接的に関わる
分野の方々が研究に携わっています。

気象をされている方は、大気の輸送モデルを作る、物理学の方は、例えば
エアロゾル(浮遊粉塵)の量や性質などを調べています。私たち化学屋は、
大気中にある化学物質(ガスだけでなく、エアロゾル上の反応なども)の
化学反応を調べています。

その他にも、海、陸、森林などと大気は、切っても切り離せない物ですから、
それらの分野の方々も一緒に研究をしています。ですから、大気科学の研究
室はいろいろな大学の様々な学部に見つけることが出来ます。

さて、先ほど申しましたように、私は大気科学の中でも、化学の方面から
大気を見ていく立場を取っています。私の研究室で取り組んでいることは、
窒素酸化物とその仲間達の濃度を測って、それが大気中で化学的にどのよう
に姿を変えていくのかを、モデルを使って調べていくというものです。

私の所属している研究室の研究の一例としては、サクラメント市(カリフォ
ルニアの州都)の車などから出された汚染物質が、風下の森林に到達するま
でどのように化学変化するか、またその森林に到達して、森林から出される
化学物質によって、どのように汚染物質が取り除かれるかを調べてきました。 

また、さらに風下にはLake Tahoe(レイクタホ)というスキーの一大観光地
があるのですが、その透明度が近年下がって来ていることから、その原因が
サクラメント市からの汚染にあるのか、スキー客にあるのか、またLake 
Tahoeの周りの市にあるのか調べるというプロジェクトが行われました。 

さて、ここで私の研究の紹介を少ししたいと思いますが、私の研究対象は夜
のケミストリーでした。今までのこの分野では、日中太陽が出ている時に起
こる光化学反応から引き起こされる、スモッグ反応などに焦点が当てられて
きましたが、私は夜間の窒素酸化物の振る舞いに興味を持ちました。

実際、夜間に起こっている化学というものは、次の日の大気の状態を左右
する非常に重要なシステムなのです。私は、特に大気の洗剤として働く物質
と、窒素酸化物が大気から取り除かれる課程に作られる物質に焦点を当て
ました。

これらの物質を測る為に、世界一感度の高い装置を目指して、装置を作り、
その手作りの機械を持って、様々な場所に観測に行きました。一番印象に
残っているフィールドキャンペーンは、メキシコで行われたMIAGROキャン
ペーンでした(http://www.eol.ucar.edu/projects/milagro/)。

それは人口2千万人にも届こうという大都市であるメキシコシティの大気
汚染を皆で解明しようと、100以上ものグループが世界中から集まって、
地上、航空機、衛星を用いて観測を行うというものでした。

例えば、メキシコシティから出された汚染物質がどのぐらいアメリカ合衆国
に届いているか、何をどのぐらい減らす規制をかければ(例えば車・工場の
数やより排出の少ない技術を使うなど)、空気がきれいになるのかなどを探
るという目的がありました。私は、夜間にメキシコシティの汚染がどのよう
に取り除かれるのかを調べに行きました。 

このように、様々な場所に出かけて行ってはデータを取り、そのデータと
共同研究者が取ったデータを用いてモデルを作って、大気に起こっている
反応を解明するというのが私の研究です。

実験室の中だけでなく、森林や農場など太陽の下で働けたこと、様々な大学
や国の皆さんと知り合いになれたことが、研究と同じぐらいに、とてもおも
しろいことでした。

この他にも様々な研究が大気化学の分野で行われています。日本における
大気化学の研究室はこのリンクから訪ねることができます。
http://www.stelab.nagoya-u.ac.jp/ste-www1/div1/taikiken/kenkyu.html

アメリカの大気化学の研究室はたくさんありすぎて一つにまとまってはおり
ませんが、私の研究室のリンクからいくつか訪ねることができます。
http://www.cchem.berkeley.edu/rccgrp/

私の研究紹介で、大気化学に興味を持ってくださる方がいれば幸いです。



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自己紹介 
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峰島 知芳(みねじま ちか)
日本の某大学の化学科を卒業した後、専攻分野を物理化学から大気化学に変
えるため渡米。カリフォルニア大学バークレー校Ph.D.課程在籍。もうすぐ
卒業予定。



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今日のポイント(エキスパートな質問の答えです)
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1.地球温暖化、スモッグ生成、CO2の増加などのメカニズムを解明しよう
とするのが、大気科学である。

2.峰島さんの研究テーマは、夜間における窒素酸化物の大気での化学反応
を、感度の高い装置を使って測定することである。

3.メキシコで行われたMIAGROキャンペーンとは、世界中から100以上の
グループが集まり、メキシコシティから出された汚染物質の動きを調べ、
汚染物質の排出源をどのくらい減らせば空気がきれいになるのかを探る、
などの研究プロジェクトであった。



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編集後記 
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アメリカでは年明けて、大統領予備選(アイオワそしてニューハンプシャー
州で)が本格的に始まりました。普段はパーティーアニマルで遊んでばかり
のアメリカ人の学生でも、選挙結果にくぎ付けになって、各政党の候補者に
ついて論評し始めたりします。冷静に考えれば、自分の国の将来を握る指導
者を決めるできごとなので、興味を持って当たり前なのかもしれません..。
でも自分が同じくらい若いときには、まったく政治には興味なかったなあ、
と反省させられます。今の日本の若者もきっとそうでしょう。日本における
「政治への無関心」は「サイエンスへの無関心」にもどこか通じるところが
ある気がします。何かいい打開策はないのでしょうか。
(杉井)



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