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【海外サイエンス・実況中継】駆け出し大学院生にとってのベストな研究室とは

posted Jan 30, 2012, 11:18 AM by Yunke Song   [ updated Jan 30, 2012, 11:18 AM ]
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_/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』
_/ April 2008, Vol. 31, No. 2
_/ カガクシャ・ネットワーク → http://kagakusha.net/
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先週から新たなテーマで始まった第二弾のメルマガ、前回は「Ph.D.取得後のキャリア
を成功させるには」に関して、杉井さんが執筆してくれました。なお、杉井さんの研究
分野・大学院留学の動機に関しては、過去ログをご参照下さい。

● 遺伝子からメタボリックシンドロームを考える ~ 分子生物学
http://kagakusha.net/modules/weblog/details.php?blog_id=7
● まわりに同じ志を持つ人たちがいる環境の中で過ごす
http://kagakusha.net/modules/weblog/details.php?blog_id=8

海外の大学院に限らず、充実した大学院生活を送るためには、自分に合った研究室・指
導教官を選ぶことが非常に重要です。著名な教授だから、世界的に有名なラボだから、
という理由でその研究室を選んでも、自分に合っていなければ、思うような成果が挙げ
られないかもしれません。まだ研究歴が浅く、これからしっかり基礎を身に付けたい大
学院生にとっては、どんな研究室が理想なのでしょうか?今週は、もう一つのテーマ
「留学本では教えてくれない海外大学院のホント」について、再び杉井さんに紹介して
もらいます。


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 留学本では教えてくれない海外大学院のホント
         ~駆け出し大学院生にとってのベストな研究室とは~
                             杉井 重紀
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このテーマでは、海外の理系大学院に留学しているあるいは留学していた人たちが、各
々の体験から、特に「留学する前はよく知らなかったこと、巷の情報や期待と違ってい
たこと」などのトピックを、お送りしたいと思います。

さて、留学を目指している皆さんは「海外の大学院まで行って研究活動をするのだから、
世界のトップを走る有名な研究室に所属しなければいけない」と考えていませんか?そ
うでなくても、まわりの人たちの多くはきっと「海外の大学院留学生はいわゆるスター
研究室で研究しているに違いない」と思っていることでしょう。実は私も、留学前はそ
う思っていました。

しかし、必ずしも「大御所のいる有名な研究室に所属する」ことが、「大学院留学を成
功させる」とは限らないのです。

なぜなら、世界的にも有名な研究を行っているという評判のボス(スーパーバイザー)
は、たいてい非常に多忙で、大学院生への教育に時間をかける暇がありません。また、
研究室が大規模なことが多いので、所属メンバー一人一人への意識が著しく低くなりま
す。

そういう所はほとんどの場合、研究活動を引っ張っているのは、博士号を持っていて経
験豊富な「ポストドクター」たちです。さらに日本と違って、個人主義で年功序列のな
いアメリカでは、先輩による「手取り足取り指導」がありません。

私の場合もそうでした。大学院1年目にローテーション制度があって、1学期に1つず
つ、計3つの研究室をまわりました。最終的に選ぶことになったラボ以外の2つは、そ
の分野で世界的に知られる「有名ラボ」でした。しかし、簡単なプロジェクトを与えら
れながら、体験させてもらって出た結論が、「大学を出たばっかりのヒヨコの私には、
ボスが求めているレベルとの格差が大きすぎる」というものでした。

結局選んだラボのボスは、その2研究室ほど有名ではありませんでしたが、研究の質や
研究分野における貢献に定評があり、かつ大学院生の教育や進路にも過去の実績が多く
ありました。そこで、多くのことを学ばせてもらって、今思うと、その研究室を選んで
大正解だったと思います。

研究経験のある大学院生ならともかく、まだ修行の身でこれからだという大学院生は、
研究プロジェクトに対して、どう実験計画を立てていけばいいのか、そもそも実験のや
り方もよく分からない場合が多く、右往左往してしまいがちです。

また、これからのサイエンスは、一人で黙々と実験をするというより、違うバックグラ
ウンドを持った人と共同で研究していく機会が多くなります。そうすると、「研究する
力」だけでなく「人とのコミュニケーション力や人間関係」が重要になってきますが、
特に大学を出たばかりで社会に出たことのない大学院生は、そういった点に関して、ま
だ未熟であることが普通です。院生当初の私と重なります..。

このため、研究経験がまだ少ない大学院生にとってのベストな研究室は、「年齢差が少
なくて自分たちの気持ちがよく分かる比較的若いプロフェッサーが主宰で、ばりばり精
力的に研究活動をしているラボ」、もしくは「規模が大きくなく、長い間よい研究を行っ
て来たと定評があり、院生への教育に熱心な教授のラボ」だと、私は信じています。


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自己紹介
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杉井 重紀
1996年京都大学農芸化学科卒業。卒業後、UCバークレーで聴講生(浪人
生活?)を経て、ダートマス大学分子細胞生物学プログラム博士課程に在籍。
2003年に博士号取得後、カリフォルニア州ラホヤにあるソーク研究所に
ポスドク研究員として勤務中。


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編集後記
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私がアメリカに来て4度目の春を迎えています。初めて見たアメリカの桜は、なんだか
ちょっと色が濃いのでは、と感じましたが、今では少しピンク色っぽい方が色が映え、
むしろ写真写りが良い気がしてきました。これは単なる嗜好の変化なのでしょうか、そ
れともアメリカナイズトの一環なのでしょうか。。

それはさておき、春になると至るところで花が咲き誇り、やはり気分が清々しくなりま
すね。私の通う大学キャンパスでは、そろそろモクレンが満開です。
(山本)


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