posted Jan 30, 2012, 11:21 AM by Yunke Song
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updated Jan 30, 2012, 11:21 AM
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Ph.D. 取得後のキャリアを成功させるためのエッセイ第3回目は、杉尾さんに 書いてもらいました。杉尾さんが、大学院生のときのカンザスの友人の話を今 回紹介し、次回は、現在ポスドクをなさっているイギリスでの友人の話を紹介 します。なお、杉尾さんの研究紹介・大学院留学志望動機に関しては、過去ロ グをご参照下さい。 ● 植物の防衛システムを理解し、微生物の攻撃から守る~ 植物病理学 http://kagakusha.net/modules/weblog/details.php?blog_id=22 ● 企業で働いた経験を生かしてアメリカの博士課程へ http://kagakusha.net/modules/weblog/details.php?blog_id=26
5/22(木)午後5時より、東京農工大学国際センター後援のもと、東京農 工大府中キャンパスにて、カガクシャネットが大学院留学セミナーを開催しま す。カガクシャネット主宰者の杉井さんが海外留学に関する講演をし、その後 に他のカガクシャネットメンバーを交えての質疑応答、そして懇親会も予定さ れています。参加費は無料ですので、大学院留学に興味のある方は奮ってご参 加下さい。なお、詳しい情報は下記サイトへアクセスして下さい。 http://kagakusha.net/modules/weblog/details.php?blog_id=81
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ Ph.D. 取得後のキャリアを成功させるには ~成功したサイエンティストたちを見て学んだこと 『Ph.D. コース終了、それから』 杉尾 明子 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
Ph.D. コース終了、そして Ph.D. のタイトル取得は自動車の免許取得のよう なもので、サイエンスに関わる分野で一人前に仕事をこなせると言う証明です。 努力して取得した免許をどのように使うかは、その人次第。サイエンスに四六 時中どっぷり漬かって仕事をする人もいれば、サイエンスは仕事時間中のみ、 家族との生活を何よりも大切にする人もいます。
成功という言葉が意味することは、人それぞれです。私はここで何が成功であ るか、と定義をすることは避けて、アメリカの大学院と、イギリスのポスドク 先で出会ってきた人たちについて書いてみたいと思います。
■ 研究を続けたい!カンザスの友人たち 私は、カンザスで植物病理学を学びました。同期生たちの3分の1は南米から の留学生でした。多くの人は30代で、小さな子供のいる学生もかなりいまし た。彼らの多くは、渡米前に母国の研究施設で研究員として働いていたそうで、 以前のボスと連絡をとり、Ph.D. 取得後、母国の研究所に仕事を見つけて、帰っ ていく人たちもいました。やはり、パートナーのことや子供の教育などを考え ると、母国に帰りたい、という思いが強くなるのではないかと思いました。逆 に、若い南米からの学生や中国人学生たちの多くは、履歴書のグレードアップ を狙って、アメリカでポスドクとして研究を続ける、という選択をする人が多 いように思いました。
最近、相次いで、3人のカンザス時代の友人たち(3人とも中国人)がアメリ カの大学でアシスタントプロフェッサー職を獲得した、と聞きました。彼らが 卒業してから、3~4年になります。3人とも、学生のときから長時間研究室 でがんばって、しっかりした研究をしていました。その後、アメリカでポスド クをし、最近その成果を論文に発表し始めたところでした。今回の職を得るま でには、たくさんの大学に応募して、複数の面接をこなしたそうですが、彼ら の長年の努力が認められたようでうれしかったし、私もとても力づけられまし た。
アメリカ人の場合、ビザ等の制限がない分、卒業後の就職先にはいろいろな選 択肢があるのですが、私が思い出せる限り、同じ学部のアメリカ人の友人全て が研究関係の就職をしました。種子を売る会社で、研究とは異なる職に就いた 友人が一人いましたが、家族の都合等々でポスドクとしての就職か、企業への 就職か、の間で悩んだ挙句の選択でした。
さて、私の場合、パートナーがヨーロッパ人であったことと、以前イギリス留 学に憧れていたこともあり、Ph.D. 取得後はイギリスでポスドクをすることに しました。しかし、就職活動をはじめて、ヨーロッパでポスドクのポジション を得るのはとても難しいことがわかりました。何人か興味のある PI(Princi- pal Investigatorの略で、教授、准教授、プロジェクトリーダー等)にコンタ クトをとってみましたが、「ヨーロッパではアメリカと違って、ひとつのグラ ント(研究資金)に対して一人のポスドクしか雇えないので、次のグラントを 得るまでは人を雇えない」と言われました。そこで、Nature 等のウェブで公 募されているポスドク職に応募を続け、同時に私に興味をもってくれた PI と Marie Curie Incoming International Fellowship に応募しました。私は運良 くこのフェローシップを獲得することができて、2年間の契約でイギリスでポ スドクをはじめました。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 自己紹介 ─────────────────────────────────── 杉尾明子 東京工業大学生命理工学研究科修士課程卒、産業用酵素のメーカーで研究員と して勤務後、2001年に渡米。2005年カンザス州立大学植物病理学部で Ph.D. 取得。2006年から2年間マリーキュリーフェローシップを得てイギリス・ジョ ンイネスセンターでポスドク、2008年から同研究所内の別グループで二度目の ポスドクを始めたところ。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 編集後記 ─────────────────────────────────── 私が卒業するころは(2005年)、インテリジェントデザイン(形を代えた 創造論で、高度な知能を持った人物が地球上の生物を創造した、というもの… 神という言葉を使わない創造論)を信じる人たちが、「学校では進化論と同時 にインテリジェントデザインという考え方も教えるべきだ」と騒いで、それな りに力を得たところでした。アメリカには世界の先端を行く研究をしている機 関がたくさんあるのに、多くの「普通の人たち」はとても信仰深くて、進化論 を否定していて、このギャップがおもしろい、というか、時にこわいと思いま した。(杉尾)
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