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2008

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【海外サイエンス・実況中継】実際の体験から思うこといろいろ

posted Jan 30, 2012, 11:33 AM by Yunke Song   [ updated Jan 30, 2012, 11:33 AM ]

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_/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』
_/ December 2008, Vol. 41, No. 2
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今週は、ミユキさんに「留学本では教えてくれない海外大学院のホント」に関
して書いてもらいました。サブタイトル「実際の体験から思うこといろいろ」
の通り、ミユキさんの大学院時代の思い出話を織り交ぜながら紹介してくれま
す。どうぞお楽しみ下さい!

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留学本では教えてくれない海外大学院のホント
実際の体験から思うこといろいろ
ミユキ
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「留学本では教えてくれない海外大学院のホント」という題で書いてください
ね、と頼まれて、早数ヶ月。真っ白な画面に向かってじーっと動かない・・・
という毎日を送っていました(嘘です。本当は、ちらと横目で見ては後回しに
してきた)。さて、そろそろ逃れられないと、腰を落ち着けお題目を見ること
数十分。やっとわかりました。なぜ書けないかが。私、留学本を見たことも読
んだこともないのです。かろうじて、GRE(アメリカ版大学院入試用センター
試験)の過去問集を買って二回分ぐらい解いてみただけ。日本の大学院と比べ
てみようにも、日本で院に行ってないからこれまたよくわからない。留学本で
教えてくれることって、何ですか?

今回ノーベル賞を受賞した日本人博士たち。パスポートを持ったことがない人
がいたかと思えば、グリーンカードでアメリカに住んでいる人がいて、そうか
と思えばアメリカ国籍を取った人もいましたねえ。誰だったかなあ、アメリカ
に行ったのはなぜですか?と聞かれ、「そりゃあ研究費がたっぷりあって、研
究環境が天と地の差だったから」と答えていた人がいました。

そりゃそうでしょうね。戦後何とか復興して、オリンピックを招致して、新幹
線を走らせて、カラーテレビを各家庭にいき渡らせなければならなかった日本
には、基礎研究にたっぷりお金を出せる余裕はなかったでしょう。

「アメリカ国籍をとっていないようですが」と聞かれて「それが何?こちらは
外国人でも住める国なんだ」と答えている人がいました・・・。て、本当にこ
んな言い方だったかなあ。間違っていたら嫌だなあ、とソースを探してみたら、
朝日新聞のインタビューでした。
●(朝日新聞 2008年10月8日)
「化学賞は意外」「クラゲ85万匹採取」下村さん語る)
http://www.asahi.com/special/08015/TKY200810080259.html

引用すると、
----
記者:「国籍は日本のままなんですね」
下村氏:「何でわざわざアメリカ人に変わる必要があるの? 日本人でもアメ
リカに住める。研究費を取るにも差別はなかったし、ほとんど不便は感じない」
----
これ、けんか腰に聞こえますよね。いろいろ新聞側で編集があったんじゃない
かなあ。別にこんな言い訳するような質問じゃないし。だって、これってイエ
ス・ノー・クエスチョンだもの。私は海外在住たったの14年ほどですが、
「国籍は日本のままなんですね」と聞かれたら「そうですよ」と答えて、その
一言で終わりだと思うんだけど。質問と回答の間に、「どうしてアメリカ国籍
取らなかったんですか」「そのほうが仕事がしやすかったんじゃないですか」
「でもアメリカに永住するつもりなんじゃないんですか」「それなのに取らな
かったんですか」「だって他の人は取ってますよ」なーんて、前回書いたよう
な「アメリカ留学都市伝説」の確認を迫られたんじゃないかしら。

なんだか、日本初女性ノーベル賞受賞者のインタビューが想像できてしまう。
「結婚されてないんですね」「やはり仕事と家庭の両立は難しいですか」「普
段はどのような生活を送ってられるんですか」「老後はどうされるつもりです
か」「今までの人生にやり残したことはありませんか」・・・・・・・・この
状況をリアルに想像できるのって、まさか私だけじゃないですよね?

こんな風に斜めに見ながらも、やはり、同業者の、しかも時代が違う時にアメ
リカに来て、地道に研究をして成功していった人のインタビューはおもしろかっ
たです。

インタビュー内容に戻って、研究費に差別・・・ねえ。でもアメリカで学生を
していると、永住権にはまったく結びつかないし、永住権がないとたいていの
グラント(研究計画コンペ)に応募できなかったなー。そのため、私のお給料
は他の学生より少なかった(グラントを取るとご褒美として少しお給料が上が
る制度だった)。しかも学部推薦が必要なグラント募集の要項(外国人応募可)
は私にはまったく回ってこなくて、もらった人に聞いたところ、「先生が持っ
てきたから出したらもらえた」とか、「書類を出しておくからって先生に言わ
れて、いつの間にかもらえることになってた。研究計画なんて書いてない」と
か、もう「コネ」がねばねばしている状態だったっけ。「新しいトレーニング
グラント(学生がもらえるグラント。実際は学生のお給料が少し上がるものの、
ほとんどが院の懐に入る)が取れました!」と報告する院のディレクターに、
「またアメリカ人学生のみですか?外国人学生にはチャンスさえないんですね」
と突っかかったのは、ほかならぬ私なんですが、もちろんその見返りに得たも
のは苦笑のみ。まあアメリカ国籍もカナダ国籍もない全くの外国人学生が1パー
セントを割るであろうわがプログラムに、私が入れただけでも儲けもんでしょ
うか。

わがプログラムは学生の面倒見がよい、と言われていました。でも、それをア
テにして入ってくると、足元を救われてしまいます。黙って落ち込んで引きこ
もってしまっても誰も何にもしてくれないし、試験の点数が悪くて単位を落と
しても、「来年も落とせば退学です」とか「成績の平均がもう1点落ちたら奨
学金を切ります」の通知が来るのみ。

だからといって、助けを求めてすがってくる人を足蹴りにはしないんですけど
ね。英語で教科書が読めず、人から借りた日本語の教科書も全く意味不明であっ
た私は、授業担当(入れ替わりで数回ずつ講義していくスタイルが主だった)
の先生の元に出向き、教えを請う・・・と言うよりは、押しかけて個人授業を
強いることを繰り返していました。

とある先生には、「あなた、こんなことさえ知らないの?ここは院なのよ。あ
なたなんかの居る場所じゃない」と言われたことがありますが、「私は正規の
ステップを踏んで合格しました。文句は学部に言ってください。合格した以上、
知らないことを勉強する権利と義務があるし、あなたには教える義務がありま
すよね。説明してください」と押し切りました。バツで真っ赤の試験用紙を持っ
ていって、「どうして私の計画した実験はダメなのか」を議論し、「まあテク
ニック的に無理なんだけど、理論は正しいから半分点数をあげるか」ともらっ
た点数で再履修を回避したこともありました。

他のラボを間接的に断り、所属ラボを決めたところで、「いやー、自分からやっ
ぱやーめたって言ってくれるんだったらわざわざ言う必要もないかと思って、
それを待ってたんだけどね、まさかこう来るとは。うち、君を雇うお金ないん
だわ」と言われて、頭から湯気が出たままプログラムの偉いさんのところへ直
談判に行き、もう一学期分の奨学金を出してもらい、もうひとつ別のラボのお
試し研究をさせてもらうことになった、なんてこともありました。

最後の最後は先生方が「えーー、それはどうかなあ」と難色を示し、実験遂行
に反対された仮説を、理論で説き伏せて実行の許可を得て実験で証明し、「あ、
本当だったんだ」と言わしめて卒業にこぎつける、という幕の引き方でしたっ
け。あのやり取りは面白かった。意地悪な質問を次々理論武装で撃退、最後に
は「他に質問またはコメントありますか?」の言葉に、5人の教授たちが黙っ
てお互いに顔を見合わせ、「いいんじゃない。やってみれば」と言ったのでし
た(その後、一人は「まあ間違っているにしても」とぼそりと付け足した)。
やっぱり科学者たるもの、理論で戦うものですよね。たとえ学生だって。

なんだか面倒見がいいんだか悪いんだか、プログラムに助けられたんだか落と
し穴に落とされたんだか、全くわからない。ただ、しまった!こまった!と思っ
たときに行動に移していなかったら、そのまま埋もれて朽ち果てていったのは、
間違いないです。ロッククライミングに例えると(すみません、私が最近始め
たもので)、体力か技術がある人はさっさと登って行ってしまうけど、そうで
ない人はあざだらけになりながらも、情けない格好で張り付きながらも、楽で
きるところでちょっと休んだりしながらも、あきらめずにとにかく探し回った
ら、実はつかめるところ、足をかけるところがあちこちに見つかるクラス3と
いう感じ・・・。ああ、我ながらいい例え(って、わかりませんかね)。前に
も後ろにも進めなくなったとき、じっとしているといずれ体力が切れたときに
はがれ落ちるのを待つのみ、誰も助けてくれないけど、何とかしようと模索す
る人には解決策が用意されている、アメリカの大学院。ただ、それが日本の大
学院ではそうはいかないかというと、それはよくわからないんですね、日本の
院に行っていないため。

ノーベル賞から思考が流れていくままに書き付けたのですが、はたして「へえ!
こんなことは留学本には書かれていなかった!」とどこかで思った人が何人か
はいるのでしょうか。甚だ疑問ではありますが、クリスマス前はヨーロッパも
そわそわしていますので、私もこの辺で終わりにします。それでは皆さん、よ
い年始年末を。


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自己紹介
───────────────────────────────────
HNミユキ
日本の大学にて獣医師(D.V.M.)、アメリカの大学院にて畜産学で修士(MS)、
脳神経科学で博士(Ph.D.)を取得。現在ドイツの大学にて研究・教育に従事
する中間管理職。


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編集後記
───────────────────────────────────
雪が降って寒かった日に日本のニュースサイトで「紅葉真っ盛り」と読んで、
一瞬自分が玉手箱を開けてしまった気分でした。あまりにも寒くて、思わずチー
ズフォンデュ器(認知度もステータスもおそらくすき焼き鍋には及ばず、おそ
らく地域性から考えてもたこ焼き器程度)を衝動買いしそうになりました。な
ぜ南の温かい島には大学職が少ないのでしょうか・・・・
(ミユキ)


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【海外サイエンス・実況中継】ひよこ博士が見た「これから」オプション

posted Jan 30, 2012, 11:32 AM by Yunke Song   [ updated Jan 30, 2012, 11:32 AM ]

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_/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』
_/ November 2008, Vol. 41, No. 1
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今週は「Ph.D. 取得後のキャリアを成功させるには」についてミユキさんに書
いてもらいました。ミユキさんの研究分野と大学院留学の動機のエッセイに関
しては、カガクシャネットの過去ログからご覧下さい(無料のユーザー登録が
必要です)。
●あなたの心や病気をコントロールする!? ~ホルモン研究のあゆみ
http://kagakusha.net/modules/weblog/details.php?blog_id=13
●日本からドイツ、ドイツからアメリカ、そしてアメリカからドイツへ
http://kagakusha.net/modules/weblog/details.php?blog_id=15

また、ミユキさんは、「アメリカでサイエンス」というメールマガジンを1999
年に創刊されています。興味がある方は、こちらもぜひご覧下さい。
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife/2291/


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Ph.D. 取得後のキャリアを成功させるには~様々なケースから学ぶこと
ひよこ博士が見た「これから」オプション
ミユキ
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私がアメリカで博士号を取ったからか、良くこんなことを言われ、返答に困っ
てます。
「海外に行って、研究者として成功して、すごいね」
「今どき、海外に行かないと、成功できないよね」
「海外に行ったんだから、成功しないとおかしい」

さらに言葉につまるのは、まじめにこんなことの確認を求められた時。
「アメリカにはお金がたくさんあるから、日本では研究者として生きていけな
くても、アメリカでならやっていけるんでしょう?」

これって「日本人女性は誰でも海外ではモテる」と肩を並べて有名な、留学に
まつわる都市伝説だと思うんですが、信じる人は後を絶ちません。勝手に思い
込んで羨んで、鳴かず飛ばずのワーキングプア学者(私)に向かって嫌味を言っ
てくる輩までいる。そんなわけ、ないってば。第一、成功って何?研究者とし
て生きていくって、どういう意味?

そして色々考えてみたことを、今回は書いてみたいと思います。

********************************************

大学院生は半学生半社会人。博士を取ると、ようやくサイエンス会の社会人と
なります。私も新社会人として、大学を中心としたサイエンス会へ足を踏み入
れました。そして自分の居場所を見つけるべく、目を凝らしてあちこち覗き込
んでいるわけです。

日本とアメリカとドイツの大学社会に暮らしてみて感じるのは、大学システム
の違い。そこには、大学世界に君臨してシステムを動かしてきた老獪狡猾な研
究者達の姿の違いと、そうやって作られてきたシステムに対するお上の態度の
違いが見え隠れし、どこを見ても野望をあからさまに、またはこっそり持った
人たちの目がきらりと光り、藁をつかもうとする手があちこちに伸び、希望や
失望や欲や妥協なんかが渦巻いているのです。その中にぼんやりと立ちながら、
ああ、私ってこの世界に向いてなかったー・・・なんてことは良く思うのです
が、まあ大学社会も社会ですから、いろんな人がいて、いろんな人のための場
所があるわけです。大学に限らずどの社会でもそうだけど、「上」のポジショ
ンを得る人が必ずできる人かというと、そうではないんですねえ。必ず何割か、
それなりの割合で「何でこいつが」枠があるんです。とは言え、その枠に入る
ことは避けたいものですな・・・いえいえ、本題から外れました。私がここで
言いたいのは、大学社会は優秀な人には上等な、そうでない人にはそれなりの
席が用意されていて、それぞれが自分なりの成功を収めることができるとい
うことです。

研究者としての成功って、ノーベル賞でしょうか。じゃあ私は降りさせていた
だきます・・・でも、そんなことを成功の基準にしたら、まあ研究者を目指し
ている人たちの99.9%は成功しないでしょう。それにアメリカで大規模ラ
ボを経営してようが、日本の企業で地味に研究していようが、ロシアの山にこ
もって理論をこねくり回していようが、ノーベル賞を取る人は取るでしょうか
ら、何をどうにかして何とかなるってもんじゃあない。

自分のラボを持つことでしょうか。それなら、私にももしかしたらできるかも?
アメリカでトライなら、できる時は若いうちからできるでしょうね。というよ
り、若いうちにできないと一生できない。アメリカでは何歳になってもやり直
しがきくと言いますが、ポスドクになってすぐの数年でグラントを取れないと、
その先のPI(ボス)への道は閉ざされるそうですよ。言葉を変えると、キャ
リアの始め(キャリアの若いうち)で成功しないと先がないと。厳しいですね。
日本やドイツではかなり年をいってからになるのでしょうが、一度道を外れる
と厳しいというし。どの国においても、ラボヘッドは中小企業の社長だから、
営業トークや接待や顔を広げる社交活動も、いろいろしなければならないでしょ
うね。日本もドイツもコネと年功序列や派閥制度で有名ですが、いま私はドイ
ツで目の当たりにして、「これがシステムというやつか!」と驚愕しています。
日本にもあるんだろうなあ。

「私はピペットさえ握っていれば幸せ。ベンチ作業で食べていければ人生は大
成功」て人に一番向いているのは、アメリカでしょうか。アメリカではPI街
道からこぼれた人用の代替小道が、たくさん用意されています。企業に行くの
も良し、ボスの下でずっとポスドク(役職名は変わるけど)をするのもよし(
移民ポスドクさんたちが取る道はこれが圧倒的に多いですよ)。居心地の良い
ラボでピペットを握って、プール付きの家に住んで人生を謳歌!これを成功と
見る人には、もうアメリカしかない。

これができないのはドイツ。ボス職を取るのを難しくし、何年かの期限が来る
とシステムから蹴り出されます。元々「優秀な人をスクリーンし、凡人には去っ
てもらう」とのコンセプトで始まったらしいこのシステム。本人たちは、うま
くいかない可能性の高さをよーく知っています。結局、今までどおり凡科学者・
優秀政治家がスクリーンを通り抜けることも周知の事実。このため、大量の科
学者が国外に流出し、ドイツのサイエンス界は大打撃を受け、現在改正に向け
て議論中だとか。日本はドクター大量生産でレベルの底上げを図ったようです
が、職にあぶれてさまよう凡科学者+優秀だけど埋もれた科学者を見て、科学
者になろうという気が失せない若者はどれほどいるのでしょう。

アメリカのサイエンス会の強みは天才科学者の脇を凡科学者(サイエンス
Lover)が固めていることにあると、私は思うんですけどね。

自分のラボを持つこと、に戻ると、ラボの構成が気になるところです。私の知
る限り、アメリカの飛ぶ鳥を落とす勢いのPIたちは、ポスドクたち(万年ポ
スドクもPI予備軍も含む)でがっちり武装しています。ドイツはポスドクの
発展系ラボマネージャーがいない代わり、テクニシャンがいます。彼らは、9
時5時のサラリーマンではありますが、アメリカの大多数のテクのように、
「大学院進学までの腰掛け」ではなく、一生大学と添い遂げる、テクの学校で
訓練を受けた職人たちです。彼らへ下請けに出すと、その仕事の速いこと!オー
ダーは細かく指示しなければならないし、トラブルシューティングはこちらの
役目ですが、私のように手が不器用で遅い人間には強力な武器です。脳付きの
手足をたくさん擁するアメリカのPI、特化した強力な手足を擁するドイツの
PI。日本は、いや、すみません、日本では大学院に行っていないんでよく知
りません。ドイツも1ラボしか知らないんで何とも言えないんですが、なんに
せよ、システムは人間を選びますね。自分に向いているのはどの国のどのポジ
ションか、それが鍵です。適材適所。

そんなこと言ったって、外国のしかも社会のことなんて、行ってみなきゃわか
らないのに、行く前から選ぶって不可能。その通りです。だからもう、私は住
みたい場所に行くのがいいよ、と言うことにしています。行ってからシステム
に合わせて自分を強化していけばいい。私生活が充実してりゃ仕事も頑張ろかっ
て思えるものです。住みたい場所がわからない人には、住んでみたい場所に数
年行ってみて、好きになれなかったら日本に帰ればいいのです。故郷はあくま
で故郷。ビザなんて取らなくても、職がしばらくなくても、強制退去になんて
ならない。私の高校時代の友人に、「金持ちになりたい。だから私立の医学部
にいって開業医の息子を捕まえる」と言ったやつがいましたが、基本にあるの
は同じ。このメルマガのテーマが留学なので「海外」に絞って言うのですが、
大学院を出た国でポスドクを見つけるのが一番易しいし、ポスドクをした国か
日本でのPIが一番見つけやすいし、その他のキャリアパスなら、ポスドクを
した土地で見つけるのが一番簡単。私生活や食べ物の嗜好などを考慮に入れつ
つ、人生を送るのが楽しい場所を選んで、そこでキャリアの行き先を見据え、
自分が成功したいパターンを吟味するのが良いと思います。

日本に住みたい?でも海外に行ってみたい?それだけでおのずと見えてきます
ね。日本で院まで出て、どこかでポスドクか助手(助教?)になって、学振で
奨学金取って、1~2年アメリカのビッグネームの大学に行って、凱旋帰国。
実際このパターンの人が一番多いです。

成功なんて、人それぞれ。「研究者として生きていく」ために、結局は「科学
者としての成功」よりは「人生の成功」を考えて、その時々に決断をしていけ
ばよいと私は思います。

********************************************

「Ph.D. 取得後のキャリアを成功させるには」というテーマで書けと言われて、
まーーったく筆が進まず(そりゃ、成功なんてしたことがないんだもの!)、
思いついたことを書き連ねただけのゆるいエッセイになってしまいましたね。
本人がゆるいものですから。最後に、更にゆるい、つまり誰(私)にでも実行
できて、ばかばかしいようだけど場所(国)を問わず、「成功」するためのコ
ツを二つ挙げておきます。どの「成功」のためか、どのように使うかは、ご自
分の責任で判断してくださいね。

1.スーツを着ること。
「仕事を真剣にやっています」「あなたをリスペクトしています」の意味があ
ります。よく見ると、成功している人でスーツをずっと着てる人、結構いるん
ですよ。私は普段汚い格好をしてますが、ここぞというときに着ます。ここぞ
というときは、年に数回やってきます。相手の態度ががらりと変わります。

2.趣味を持つ。
「これへたすりゃ6-4-3ゲッツーで試合終了。まだ余裕あるんだし、別の
実験考えたら」なんて会話、理解できるに越したことはない。日本のキャリア
ウーマンが半分冗談半分本気で、「野球のこと勉強しないとスムーズな会話が
できない」というのを聞いたことが何度かあり、同じようにアメリカで「アメ
フトのこと知っといたほうがいいよ・・・」と囁かれているのを小耳に挟んだ
ものの、ふんと鼻で笑っていた私でしたが、最近実感しました。私はわりと男
の人が好む趣味をいくつか持っているのですが、デスクトップの写真を見た人
から話を振られ、会話が弾むこと!とある部の部長さんとランチの約束を取り
付けたのを見て、仲介係が驚愕していました。すごく忙しい人だそうで、ラン
チどころかミーティングをすることも叶わないことが多いのだとか。

最後までまとまりませんでしたが、一応メインテーマに沿ったものに・・・なっ
たでしょうか。ということで、今回はここまでにしようと思います。それでは。


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自己紹介
───────────────────────────────────
HNミユキ
日本の大学にて獣医師(D.V.M.)、アメリカの大学院にて畜産学で修士(MS)、
脳神経科学で博士(Ph.D.)を取得。現在ドイツの大学にて研究・教育に従事
する中間管理職。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
編集後記
───────────────────────────────────
ノーベル賞、日本人が取りましたね。いつの日か来るはずだと、首を長くして
待っているのは、一面に大きく踊る、「日本『女性』初ノーベル賞!」の見出
し。まだ来ませんねえ。優秀で働き者の日本人女性たち、たくさんいるんです
よ。いるんですが・・・・皆さん大多数がとってもつつましい・・・。ビジネ
ス界なんかに比べて、サイエンス界の女性はとっても古風な気がするんですが、
気のせいなんでしょうか。「ヒヒヒ、これでノーベル賞はいただきだ」なんて
研究するのはいやらしいけど、もう少し、もうちょっとでいいから、小さな野
望を持って、グラント(懸賞応募用実験計画書)書いてボスになって、優秀な
ポスドクたちにインスピレーションを飛ばし、自分でノーベル賞を取るなり、
取らなくても後の天才が現れたときの地盤固めをしてくれる人が増えてくれた
らなあ・・・と思います。私?私は地盤固めに回ります。つつましい?いえい
え、自分の能力を正しく知ることも重要ですから。(ミユキ)


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【海外サイエンス・実況中継】面接官から見た3つの重要ポイント

posted Jan 30, 2012, 11:32 AM by Yunke Song   [ updated Jan 30, 2012, 11:32 AM ]

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今週は、Vol. 34, No. 1 にて「留学本では教えてくれない海外大学院のホン
ト」を書いてくれたサウスカロライナ大学の佐藤さんに、もう一方のテーマに
ついて紹介してもらいます。過去ログは、カガクシャネットのウェブサイトか
らご覧頂けます。
http://kagakusha.net/modules/weblog/details.php?blog_id=87

今回は、佐藤さんが会社勤めをされていたときの経験をもとに、面接官からの
視点で重要な点を挙げてもらいました。なかなか聞くことのできない、貴重な
意見ですね。これから面接を控えてる方、ぜひ参考にしてみて下さい!


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Ph.D. 取得後のキャリアを成功させるには~様々なケースから学ぶこと
面接官から見た3つの重要ポイント
佐藤 修一
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サウスカロライナ大学の佐藤です。こちらに留学する前に4年間弱会社勤めを
しました。その際、多くの学生と面談し、人事に報告をしたことがあるので、
そのときのお話をします。当たり前のこと、私の会社独自のこと、そしてキャ
リアプランには直接関係のあることではないですが、お付き合い下されば幸い
です。

学生を面談する上で、会社の人事が一番重視していたのは、「その学生と一緒
に働いてみたい気持ちになれるか」でした。会社の目的は、お客様にサービス
を提供し、利益を計上し、それを社員及び株主に還元することです。すなわち、
個人の利益ではなく、会社全体の利益を目指します。そのため、会社では研究
室にいるとき以上にチームワークが求められ、ときには興味の湧かない仕事に
も従事し、わがままなお客様にも付き合わないといけません。社員は優秀であ
るに越したことはないのですが、それ以上にお互いに良き同僚として、自分の
役割を果たし、仲間として助け合いながら、目標を達することが重要です。面
談中はこのことを常に念頭において、この学生と一緒に働いたらどうなるか、
コミュニケーションはきちんと取れそうか、会社との相性はどうか、などを探っ
ていました。

2つ目は、学生がその会社に本当に興味を持っているかを重視しました。就職
活動で学生が何社も受けるのが当然ですが、一方で会社側は自分のところが第
一志望であって欲しいと願います。わがままですよね(笑)。私がいた会社は
さらに特殊な事情がありました。その会社はいわゆる外資系で、社員のほとん
どが中途入社、さらに出入りも激しく、社員の定着率が決して高くないところ
でした。そんな中で新卒を採用するのは、自社で一から教育を施して、愛社精
神を高め、会社への定着を図り、さらに将来の会社の核となる幹部の育成を目
的としていました。だからこそ、新卒には会社を良く知った上で入社してもら
いたい、という希望が会社側に強くあったのです。したがって、面談中では学
生がどれだけ私が説明することを既に知っており、もっともな質問をするかに
気をつけていました。

3つ目は、学生がどんなことをやってきたか、良く耳を傾けるようにしました。
この辺りは皆さんが問題なくアピールできるところかと思います。ただ気をつ
けることは、聞き手に合わせた説明をして下さい。どんなに素晴らしい発見・
成果であっても、相手が理解できなければ意味を持ちません。また、それらが
その会社と関係がなさすぎても、興味を持ってもらえません。したがって、会
社ごとに、そして面談中は聞き手の反応を伺いながら、いろいろと説明を変え
る臨機応変な柔軟性を、普段から意識して磨いておいて下さい。

以上簡単ながら、以前どのように私が面接したかを思い起こしながら、重視し
た3点を挙げました。対策としては、恐らくどこの就職ガイドでも書いてある
ことかと思いますが、自分を知り、相手を知り、それを短い面談中にいかにう
まく伝えることだと思います。一方で面接は水物です。研究と違い、面談の相
手は人間なので、どんなに準備をしてうまく話しても伝わらないときや、興味
を持ってもらえない場合もあります。そんなときは落ち込まずに、逆にそこに
行かなくて良かったと考えて、また次を探す方が得策です。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
自己紹介
───────────────────────────────────
佐藤修一
上智大学理工学研究科化学専攻修士課程卒、4年弱会社に勤める(営業)。
2000年1月に渡米。南ミシシッピ大学アスレティックトレーニング学
科卒 (BS), NATA 公認アスレティックトレーナーとなる。クイニピアック
大学分子細胞生物学科(修士課程)に1年在籍後、南ミシシッピ大学で
運動科学学科修了 (MS). 1年間PTクリニック勤務を経て、2006年7月より
現在のサウスカロライナ大学運動科学学科博士過程在籍(D3)。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
編集後記
───────────────────────────────────
南部と言われるサウスカロライナも朝晩急に寒くなり、冬の装いを見せてきま
した。街頭にはクリスマス向けの飾りつけを見つけることが出来、サンクスギ
ビング、クリスマスと大きな休日が間近に控えていることを感じさせてくれま
す。私もこれらを祝う気持ちの余裕を持ちたいものですが、いつになったら出
来ることやら。(佐藤)


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【海外サイエンス・実況中継】サイエンスの Ph.D. はサイエンス以外にも活躍の場はある!

posted Jan 30, 2012, 11:32 AM by Yunke Song   [ updated Jan 20, 2013, 5:36 PM ]

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_/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』
_/ November 2008, Vol. 39, No. 2
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今回は「Ph.D. 取得後のキャリアを成功させるには~様々なケースから学ぶこ
と」として、YKさんに金融業界の一例を紹介してもらいます。これまでにも
多くの方が触れていますが、少なくともアメリカでは、博士号取得は必ずしも
アカデミックの世界に残ることを意味していません。またYKさんのように、
博士課程の途中で将来の進路を変える学生も少なからずいます。サイエンスの
世界から金融業界と聞くと、まったく別分野への転身という印象を受けるかも
しれませんが、意外な共通点もあるようです。どうぞ、お楽しみ下さい!

ところで、今年も「まぐまぐ大賞2008」の季節がやってきました。このメー
ルマガジンが、少しでもみなさんのお役に立っているのであれば、ぜひ大賞へ
の推薦をお願いします!推薦や本投票にご協力頂いた方には、プレゼントも当
たるようです。以下のサイトから、どうぞ。
http://www.mag2.com/events/mag2year/2008/form.html
推薦締め切りは、11月18日(火)の18時となっています。

メールマガジンのタイトル:
「海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継」
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Ph.D. 取得後のキャリアを成功させるには~様々なケースから学ぶこと
サイエンスの Ph.D. はサイエンス以外にも活躍の場はある!
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●大波乱の金融業界を将来支えて行くのはサイエンティスト!

前回までのエッセイでも若干触れましたが、私は日本の大学で薬学を専攻した
後、アメリカは西海岸の大学院に進学し、神経科学を専攻しました。研究内容
は、網膜色素変性症の分子機構でした。私が通っていた学校にはキャンパスが
2つあり、メインキャンパスはロサンゼルスのダウンタウン近く、もうひとつ
のメディカルキャンパスは、ダウンタウンから少し離れたところにあります。
私のラボは後者のキャンパスにあり、そこで働く学生は TA をやらなくてもよ
い、という暗黙の了解もあったためか、在学中はすべて RA と奨学金でサポー
トを頂いていました。おかげで授業が集中する日を除けば、一日のほとんどの
時間を研究に割くことができました。

そんな比較的恵まれた環境の中、大学院2年目が終わろうとしていたころ、贅
沢にも私はある悩み(疑問)を抱えていました。科学というのは、いわば知的
好奇心に基づいて新たな発見に意義を求めます。そしてその「発見」するに
至ったプロセスを詳細にまとめ、論文という形で世に公表します。ところが、
その「発見」は、現在世の中が求めているものとある程度の相関がなければ、
そのインパクトは希薄なものとなってしまいます。当然と言えば当然の話なの
ですが、実際に研究をしていると、「自分のプロジェクトは CNS(Cell, Nat-
ure, Science: バイオ系の三大学術誌)級なんだ!」と一筋になってしまい、
関連研究との繋がりを見失いがちになってしまいます。話をすごく単純化しま
したが、こうした需要と供給のアンバランスな状況を解決するにはどうしたら
いいのか、そんな想いから私はサイエンスの枠組みを超えた部分に興味を持ち
出しました。

話は前後しますが、私はそもそも留学する目的のひとつとして、再生医学のバ
イオベンチャーを将来立ち上げたいという目標がありました。日本の博士課程
にはなくてアメリカのそれにあるもの、その一つにビジネスとの結びつきが挙
げられると思います。昨今では MBA とのジョイント講座を開くプログラムが
多く、学生がグラント申請書の執筆を任されるケースも幾度とあり、ラボの運
営に関してどのように資金繰りをすべきなのか、どのようなコストカットをす
べきなのか、考える機会を与えてくれます。

私は当初の計画として、神経科学で Ph.D. 取得後は直ぐに MBA へ進学し、会
計や経営の基礎勉強をしたいと思っていました。しかし大学院2年目が終わろ
うとしていたころ、私の考え方は徐々に別方向へシフトしていきました。アメ
リカでは、サイエンスの Ph.D. をもった研究者が MBA も取得してバイオベン
チャーを立ち上げたり、バイオ系のコンサルティングファームなどに入社する
ケースが非常に多いですが、経営の本質に関しては、それを専門としたパート
ナーに頼る場合が多く、会社の資産内容やその償却方法、固定費や変動費の詳
細な内訳、限界利益の推移など、会社運営の核となる部分が残念ながら完全に
は把握できません。MBA など学校で学ぶ部分と実際の部分には少なからず隔た
りがあるからです。ケーススタディなどもありますが、実際の分析経験・運用
経験がないと、教科書知識だけで終わってしまいがちです。

確かに、Ph.D. のタイトルがあれば、有利に働く局面が多々あるのも事実です。
その道のエキスパートとしての信頼性だけでなく、大きなプロジェクトをやり
遂げた証にもなるからです。これは紛れもない事実です。しかし、会社を立ち
上げたり、コンサル会社に入社するケースなどにおいては、必ずしも自分がベ
ンチワークをして実験をするわけではありませんし、修士レベルの知識でも研
究の解釈は十分可能であると思います。(現に私は週末など時間のあるときは、
今でもできる限り論文を読み、自分自身の情報をアップデートするように心が
けています。なんだか製薬会社の MR みたいですが。笑。)

さて、話が大分それてしまいましたが、大学院2年生の終わりがけにこのよう
な思いを募らせていた私は、その年の秋にボストンで開催された留学生向けキャ
リアフォーラムに参加しました。とりあえず話だけでも聞きにいこう、という
ノリで、ビジネス系のファーム数社に事前応募し、インタビューのアポを何件
か頂きました。私はビジネスのバックグラウンドを全く持っておらず、本気で
就職活動に精を出している他の参加者に比べて、明らかに準備不足だったにも
関わらず、当日はいくつかのディナーやランチ等のオファーをいただき、大変
参考になるお話を聞かせて頂きました。

全く新しい世界の話なので、言われること全てが宇宙語のようでしたが、その
中でも強烈な印象を抱いたのは、(後に現在の私の上司となる)とある投資銀
行のセルサイド・アナリストのお話を聞いた時でした。アナリストというのは、
その言葉が示す通り分析屋のことですが、緻密な企業分析を通じて、その上場
会社の株に対して「売り」「中立」「買い」などのレーティングをつける人た
ちのことです。アナリストはそれぞれ担当するセクターが決まっており、その
なかから分析対象とする銘柄を選定(いわゆるカバレッジ銘柄)し、その会社
の決算説明会に出向いたり、Investor Relations (IR) 担当者や役員と取材を
繰り返しながら、将来3年間ほどの業績を予想し、それに基づいた目標株価を
算定、現在の株価とセクター平均との企業価値評価を考慮して、投資判断を下
します。株価は常に変動する、非常にダイナミックな世界です。自分の分析が
市場が求めているものと合致する場合、自分の投資判断は市場に対して非常に
大きなインパクトを持ちます。まさに、需要と供給のシンプルな関係に裏打ち
された世界です。私は迷わず正式選考のための書類をまとめました。

幸いにも私の指導教官は非常に理解のある方で、推薦状も書いて頂けましたし、
博士課程を一旦休学ということにし、その代わりに修士号を頂けるよう計らい
をしてくださいました。今でも本当に頭が上がりません。

さて、そんなわけで、私は大学院に2年6ヶ月在籍したのち、現在は東京のと
ある米系投資銀行(もはや死語ですね・・・)にて、セルサイド・アナリスト
として活動しています。現在の会社に入ってすでに8ヶ月近くが経とうとして
いますが、プライベートの時間が数えるほどしかない激務が続いています。お
まけに、最近では米国経済失速にリーマン・ブラザーズ破綻がさらに拍車をか
け、株式市場は大混乱が続いています。しかし、むしろ不況の際にこそ学ぶこ
とのできる部分は多く、私はなるべくネガティブに捉えないようにしています。

さてさて、話が長くなってしまいましたが、最後に私からの take-home 
message(最重要ポイント)です。外資系証券業界において、理系の博士号取
得者が活躍できる場は意外にも数多いです。以下にそれらを簡単に紹介するこ
とで、全4回に渡るエッセイの締め括りとさせて頂くことにします。なおここ
では、フロントオフィス業種のみを紹介しています。

*バイオ系の場合
なんといっても、医薬品セクターのアナリストがフィット。まず大手の米系証
券の同セクターの場合、ほぼ全員がバイオ系の Ph.D. を持っています。他の
セクターに比べて必要とされる専門知識が膨大なことが第一の理由です。意外
かもしれませんが、国内外を問わず、メジャーな学会にもアナリストはかなら
ず参加します。先端の研究内容を吸収することの他に、ファイザー等の製薬会
社やインビトロジェンなどのバイオテック会社の出展を見ることも目的のひと
つです。東京で働いていても、海外オフィスとの連携が命なので、業務の半分
近くが英語になることがよくあります。

*数学系の場合
計算能力に長ける方は、クオンツやトレーダーなどがフィットでしょうか。複
数銘柄を一つのポートフォリオとして取引し、短期間で巨額の利益を生み出す
にはどうしたら良いか戦略を立てます。マクロ経済との関連性、ヒストリカル
の銘柄挙動具合等を高度な数学を駆使して分析します。業界の中で一番リター
ン(報酬)が大きい職種でもあります。

*工学系の場合
あまり知られていないと思いますが、どこの投資銀行にもかならず大規模なテ
クノロジー部署があります。業務内容は、主にトレーディングシステムの構築
や、社内の IT インフラの設計などです。非常に頭の冴えるプログラマーばか
りですので、決してルーチンワークとはならずエキサイティングな職だと思い
ます。

投資銀行での業務は次に挙げる点で、これまでみなさんがサイエンスで培って
きた(or 培ってゆくであろう)スタンスに非常に似ていると思います。

(1)事実を定量的に分析する。現状を把握し、その原因となった事柄を究明
します。
(2)仮説を立て、検証する。リスクやベネフィットを熟慮し、ベストな解決
策を考案します。
(3)常に頭を柔らかく。新しいものを取り込み(input)、また与える
(output)ことで互いに知的興奮を味わうことができます。

私は、研究室という小さな社会を超えて、こうした知的思考が実際にクライア
ント、ひいては世の中をダイナミックに変えるプロセスが醍醐味だと思ってい
ます。

スペースの都合上相当端折った内容となってしまいましたが、お付き合い頂き
ありがとうございました。ご意見・ご質問等ありましたら、お気軽にご連絡く
ださい。サイエンスの Ph.D. が、サイエンス以外の世界で活躍できるケース
の一例をご紹介させていただきました。参考になれば幸いです。


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自己紹介
───────────────────────────────────
筆者
2005年京都大学薬学部卒後、同大学院医学研究科医科学修士課程に3ヶ月
のみ在籍、同年8月に南カリフォルニア大学神経科学科博士課程入学。約2年
半の間学位研究に従事するも、08年2月に修士号と共に休学、帰国。3月よ
り東京の米系投資銀行にてセルサイド・アナリストとして活躍中。


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編集後記
───────────────────────────────────
実はこのエッセーを執筆したのは一ヶ月前でした。その間も株式市場は大混乱
が続き、私の勤める会社でも全従業員の約1割にあたる人員のリストラが実行
されました。学部卒の新卒が就職を目指すには大変厳しい時期ですが、博士号
取得(見込み)者など一部の高度な専門知識を持ち合わせた人材の募集はまだ
依然として行われている模様です。ご興味のある方はぜひ挑戦されてはいかが
でしょうか。この業界は広いようで意外に狭いものです。いつか一緒に仕事を
することがあるかもしれませんね。Bon Voyage!(筆者)


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【海外サイエンス・実況中継】出願プロセスを始める前に知っておこう!~その3~

posted Jan 30, 2012, 11:31 AM by Yunke Song   [ updated Jan 20, 2013, 5:36 PM ]

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_/ November 2008, Vol. 39, No. 1, Part 3
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先週に引き続き、YKさんに「留学本では教えてくれない海外大学院のホント
~実際の体験から」の3回目を紹介してもらいます。前回までで、アメリカの
理系大学院に出願する際のポイントが説明されています。そして今回は、出願
後に何をするかに関してです。日本のような筆記試験の場合、試験を受けてし
まったらその後は何もできないのですが、アメリカのように書類審査に基づく
場合、出願後の行動も重要です。その後にどう動くかで、合否の可能性が変わ
る場合もあります。これから出願を控えている方には特に必見です。


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留学本では教えてくれない海外大学院のホント~実際の体験から
出願プロセスを始める前に知っておこう!~その3~
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●出願後は結果が来るまで何もしなくてもよいのだろうか? 

最近は、オンラインでの出願が一般的なので、自分のアプリケーションの進行
具合は、インターネットをつかって即座に知ることができます。しかし、出願
後に何もせずにただ結果を待っているだけでは、せっかく苦労して提出した出
願書類に磨きをかけることができません。私が日本の大学院の修士課程に3ヶ
月間だけ在籍していた際、同期の中国人の女性が、「どうしたら複数のプログ
ラムに合格できるのか?」と私に訊いてきたことがありました。彼女も私と同
じ2005年秋学期の入学を目指し、いくつかの大学院に出願しましたが、ひとつ
も合格しなかったそうです。テストのスコアは、それほど悪くありませんでし
た。しかし、出願後の最後の一押しが足りなかったのかもしれません。 

一般的にバイオ系の場合、ひとつのプログラムが「授業料免除+財政援助つき
で合格通知を出すことのできる外国人枠」は限られています。(詳しくは前回
お送りした、「奨学金のソースを知る!」をご参照下さい。)例えば、アメリ
カ人・外国人含めて毎年20人ほど受け入れるプログラムの場合、外国人枠はせ
いぜい5~6名でしょう。このわずかな枠に対し、世界各国から想像を絶する
数のアプリケーションが寄せられるのです。トップ10 にランクするプログラ
ムでは、さらに多くの倍率となっているでしょう。200倍なんてのも普通です。
とりあえず、手当たり次第にトップ校へ出願している人が多いのも事実ですが。 

大学からの財政援助なしの合格で構わない、もしくは日本の所属先・財団から
奨学金をもらえるような場合、出願後にそれほど張り切る必要はないかもしれ
ません(【注】ただし、出願後にどこかの財団から奨学金がもらえることが確
定したならば、それは合格率を引き上げる要素になるので、追加申告するべき
でしょう)。超一流校には財政援助なしで合格、地方の州立大学にはフルサポー
ト付きで合格した場合、最初の2年間は自腹を切る覚悟で、ネームバリューな
どの点から前者に入学するのもアリかもしれません。しかし、それは東京の私
立大学に進学する以上の初期費用がかかることを覚悟しなければなりません。
また、サポートがなければ、CV(curriculum vitae, 履歴書)の賞与(Honor/
Academic Awards)欄にも記録できません。お金が尽きて途中で帰国、なんて
ことになったら本末転倒です。 

やはり財政援助をもらうためにも、最後の一押しは大切だと思います。あまり
に競争率が高い場合は少しランクを下げて大学院に出願するのも手です。これ
は好みの分かれるところですが、私は財政援助を頂いてこそ意味があるものだ
と思っています。 

最後の一手といっても、特にこれといった必殺技があるわけではないのですが
(^^;)、私はこんなことをしてみました。 

◎研究内容に興味のある先生方に、出願した旨のメールを送る(全部で30名ほ
ど)。出願前にコンタクトしていた先生がほとんどだったのですが、出願後に
初めてメールを送った先生も数名いました。もちろん CV を添付して。自分に
まだ興味をもっている先生はちゃんと返信してくれます。選考委員に直接掛け
合ってくれる先生もいます。とにかく自分を売り込むこと。ただし、ウソのな
い範囲で。 

◎オンラインで出願作業を進める場合、Additional Informationを頻繁にアッ
プデートする。更新できる範囲のものは常に最新の状態にしました。たとえば、
学会の出席実績、研究室内セミナーでの発表実績など。 

これらがうまくいけば、あちら側からインタビューをしたい旨の連絡がくるは
ずです。直接現地に呼ばれることもあるみたいですが、アメリカに住んでいな
い場合は電話でのインタビューが多いと思います。片言でもよいので自分の研
究計画をハッキリと述べることができればベストです。リラックスして臨めば
失敗しないはずです! 

次回はいよいよ最終章となり、「Ph.D. 取得後のキャリアを充実させるには」
へテーマを変えます。筆者の実体験に基づき、サイエンスの Ph.D.と投資銀行
のつながりについてお話をします。現在荒波に飲まれている証券業界において
サイエンティストが如何に活躍できるのか、簡単ではありますが紹介をさせて
いただこうと思います。乞うご期待あれ! 


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自己紹介
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2005年京都大学薬学部卒後、同大学院医学研究科医科学修士課程に3ヶ月
のみ在籍、同年8月に南カリフォルニア大学神経科学科博士課程入学。約2年
半の間学位研究に従事するも、08年2月に修士号と共に休学、帰国。3月よ
り東京の米系投資銀行にてセルサイド・アナリストとして活躍中。


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編集後記
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仕事柄、帰宅が深夜になることが多いのですが、会社の周りは最近にぎやかに
なってきました。クリスマスシーズンにあわせてイルミネーションが始まった
ようです。当地のイルミネーションは日本で有名らしく、こんな時間でも多く
の人だかりがあります。外は寒いですが、家族や恋人たちが肩を寄り添いなが
ら歩いているのをみていると、心があったかくなりますね。今年も残すところ
はや1ヵ月半となりました。月日の流れは本当に早いものです。やり残したこ
とは今のうちに片付けてしまいたいものですね!(YK)


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【海外サイエンス・実況中継】出願プロセスを始める前に知っておこう!~その2~

posted Jan 30, 2012, 11:31 AM by Yunke Song   [ updated Jan 20, 2013, 5:37 PM ]

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先週に引き続き、「留学本では教えてくれない海外大学院のホント~実際の体
験から」をYKさんに紹介してもらいます。前回、5週連続とお伝えしました
が、最終回を待てない読者の方が多いとのことですので、2~4回目をまとめ、
今回を含めて残り3回です。どうぞお楽しみ下さい!


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留学本では教えてくれない海外大学院のホント~実際の体験から
出願プロセスを始める前に知っておこう!~その2~
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●奨学金のソースを知る!

前回のエッセイにおいて、アメリカの大学院では、博士課程の学生ほぼ全員に
対して、授業料免除+生活費支が提供されていると記しました。さて、これだ
け充実した財政援助制度ですが、このお金の出所は一体どこから?なんて思っ
たりもするものです。これは大学の種類や規模によってまちまちですが、主な
資金源としては、(1)州や国、団体からの研究資金、(2)学部生の授業料、
そして、(3)寄付金などがあると思います。 

(1)州や国、団体からの研究資金
州立大学の場合、州が何割か研究資金を補助していることがあります。その場
合、大学側は州民(その州に市民権を持つ者)を何割か入学させるという、契
約を結ぶことになります。この結果、たとえば人気の高いカリフォルニア大学
系列(UC Berkeley, UCLA, UCSF, UCSD, UC Irvine など)は、カリフォルニ
ア州民以外を含めたアメリカ人のあいだだけでも、非常に高い競争率になりま
す。これ以外にも重要な公的資金として、NIH(National Institutes of 
Health, アメリカ国立衛生研究所)による大学院生用奨学金(graduate stud-
ent training grants)があります。これは、大学院生への財政援助を奨励す
るため、NIH が大学に対して結構な額の補助金を提供するわけです。しかし、
これはアメリカ市民権を持つものにしか使用できないため、院生をサポートす
るための資金のソースが限られているプログラムでは、サポートできる外国人
枠(米国永住権を持つ者を除く)が限られている可能性もあります。ですが、
最近はそういった国籍の制限をとらない研究資金も増えてきているようで、留
学生にとっては大きなチャンスだと思います。 

(2) 学部生の授業料
大学院と違い、大学の学部課程では、それほど財政援助は充実していません。
自分で奨学金に出願したり、自費で賄うことが多いようです。アメリカ人でも
多くの学部生は、親に頼って授業料を納付するケースが少なくありません。 
大学院志向が強い学部生は、早くから GPA(Grade Point Average, 成績を数
値化したもの)を上げるための努力をし、卒業時には良い推薦状を書いてもら
い、他の学生との差別化を図ろうとします。そして、学部卒後にすぐ大学院に
進学するのではなく、2~3年ほど有名な研究室でテクニシャンなどとして働
いて研究経験を積み、うまくいけば論文の数も増やせます。そして、そのラボ
の教授からも推薦状を書いてもらい、大学院へ出願します。そのため、前回書
いたように、大学院入学時の平均年齢は、日本のそれよりも2~3年高いこと
が多いです。カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)やカリフォルニ
ア工科大学(Caltech)などの有名大学院では、多くの大学院生がこのような
パターンです。 

(3) 寄付金
私立では、裕福になった卒業生などが、後々莫大な寄付をすることがよくあり
ます。これが大学の運営資金になったり、新しい研究施設の建造に使われるこ
とがあります。


●プログラム選びのアプローチについてもの申す!

アメリカは日本と比べて非常に大きな国なので、その分非常に多くの学校や大
学院プログラムがあります。そのなかから、自分の興味のある専攻、興味のあ
る先生、興味のある研究、興味のある土地柄、興味のあるシステム・・・これ
らの欲求を全て満たすプログラムを見つけることは、必ずしも容易なことでは
ありません。また、そのプログラムが自分の実力以上の場合、プログラムの要
求するレベルまで自分を高めるためには、さらに多くの時間を必要とします。
その意味でも、留学に興味を持ち始めた瞬間から、まずはプログラム探しから
始めるべきでしょう。

ここで突然ですが、reverse genetics という言葉を聞いたことがあるでしょ
うか?DNA チップなどの post genomic screening の手法を用いて単離された
ある遺伝子を起点として、その遺伝子が生体でどんな機能を担っているのかを、
K.O./transgenic 等を用いて解析する手法です。これは、これまでの forward 
genetics とは下記のように区別されます。

*Reverse genetics の場合【小→大のイメージ】: 
ある遺伝子を解析 → その遺伝子が生体で担っている機能を解明

*Forward genetics の場合【大→小のイメージ】: 
ある疾患を解析 → その疾患のもとになっている遺伝子を解明 

つまり、大学院のプログラム探しとは、まさにこの reverse genetics と同様
のアプローチを辿るべきだと思うのです。すなわち、「大学という大きなもの
を先に決めてから、次にその中のプログラムを選ぶ」、というのではなくて、
「自分の興味のある研究をしている研究室を見つけ、次にそのラボに入るため
にはどのプログラムを受ければよいのかを調べ、最終的にはそのプログラムを
提供している大学を調べる」ということです。 

post genome と同じく、現在は post information の時代です。インターネッ
トが普及したおかげで、論文がオンラインで即座に閲覧でき、また各ラボも独
自のサイトを通じて研究内容を公表できる時代になりました。ですから、ある
種のランキングのみを参考にし、はじめに大学名から探すのは非常にもったい
ないことです。日本ではあまり聞き馴れない大学でも、素晴らしい論文を生み
出し続けているラボは数多いのです。 


●推薦状についてもの申す! 

推薦状は、出願者が他人にどう評価されているのかを知る際に、重要な手がか
りとなります。誰に推薦状を書いてもらうのがよいかは、プログラム側が 指
定していることと思いますが、たいていの場合は、現在所属しているラボのボ
スから頂くことになります。また、ほとんどの場合、3通は必要なので、他に
2人ほど 推薦してくれる人を探します。その際、次の点を頭の片隅に留めて
準備するとよいと思います。

推薦状は、世界的に名の知られている先生からもらうのが一番良い、とよく言
われています。当然ながらそのほうが良いに決まっています。しかし、悲しい
ことに、いくら日本で名の知れた先生でも、アメリカではほとんど名前を聞か
ない場合もあります。出願書類は多くの審査員がレビューするため、ある日本
の先生のサインのみが功を奏するケースは、非常に稀だと思います。   

そういった意味合いから、(逆説になるかもしれませんが)推薦状を書いて下
さる先生の知り合いがいるプログラムに出願する、というのもオプションの一
つでしょう。しかし、渡米後にしっかりとした結果を残さないと、推薦してく
れた先生の名にもかかわってくるので、意外なプレッシャーを感じるらしいで
す。日本では推薦状を書く習慣があまりないため、日本人の先生にお願いする
場合、推薦状の文面は自分で用意せざるを得ないかもしれません。そういった
アジア地域特有の背景を察知してか、最近はオンラインで推薦人が直接投稿す
ることを必須とするプログラムも増えてきました。 

次回は、出願後のアクションに関して簡単に記します。乞うご期待あれ!


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
自己紹介
───────────────────────────────────
2005年京都大学薬学部卒後、同大学院医学研究科医科学修士課程に3ヶ月
のみ在籍、同年8月に南カリフォルニア大学神経科学科博士課程入学。約2年
半の間学位研究に従事するも、08年2月に修士号と共に休学、帰国。3月よ
り東京の米系投資銀行にてセルサイド・アナリストとして活躍中。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
編集後記
───────────────────────────────────
東京はここ最近一段と冷え込んできました。日本やアメリカ等海外でご活躍さ
れている皆様はいかがお過ごしでしょうか。私は毎朝徒歩で通勤していますが、
最近の朝はとても歩き心地のいい気候となってきました。私が米国で研究をし
ていた頃は車中心の生活をしており、積極的に外を歩こうとはしておりません
でした。お忙しいとは思いますが、皆様もぜひ散歩のためのお時間を作って、
季節の変化を楽しまれてはいかがでしょうか。些細なことですが、いろいろな
発見ができて意外に良い息抜きになると思います。(YK)


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【海外サイエンス・実況中継】出願プロセスを始める前に知っておこう!~その1~

posted Jan 30, 2012, 11:31 AM by Yunke Song   [ updated Jan 20, 2013, 5:35 PM ]

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_/ October 2008, Vol. 39, No. 1, Part 1
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「留学本では教えてくれない海外大学院のホント~実際の体験から」の第9回
目は、YKさんに紹介してもらいます。YKさんは南カリフォルニア大学の
PhD 課程に入学され、修士号を取得されたあと休学し、現在は東京の米系投資
会社にて活躍されています。アメリカでは、ちょうど来年秋入学の大学院出願
シーズン直前ですので、YKさんのエッセイがこれから出願する方にはとても
役立つと思います。内容がまさに旬ですので、今週より5週連続でお送りした
いと思います。


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留学本では教えてくれない海外大学院のホント~実際の体験から
出願プロセスを始める前に知っておこう!~その1~
アメリカのシステムと日本のシステムを知る!
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みなさん、こんにちは。今回、留学本では教えてくれない海外大学院のホント、
および Ph.D. 取得後のキャリアをどう成功させるかに関しまして、微力なが
ら私なりの考えをお伝えさせていただこうと思い、執筆させていただいており
ます。結構な分量なので、5回に渡ってお送りします。今回のトピックは、ア
メリカの大学院システムと日本の大学院システムの違いについてです。

●日本のシステムとアメリカのシステム

社会は、ある一定の条件の下で独自のシステムを構築し、今日の発展を遂げて
きました。社会に触れる機会の少ない学生も、大学というやや閉じた社会の中
で、知らず知らずのうちにそのシステムに順応し、学生生活を送っている気が
します。

しかし文化が異なれば当然そのシステムも異なるわけで、留学とはそういった
文化的な面も理解していないと当然痛い目に遭います。これは、ポスドク留学
でも同じかと思います。どれだけ日本よりも研究が盛んだとしても、留学先の
システムが体質に合わなければ、鬱になってしまいます・・・。もちろん、逆
もまた真なり、ですが。不斉合成の技を磨きたくて日本にやってきた海外の研
究者が、日本の大学のヒエラルキーに直面して、「Ah!He is ショーグン!
ショーグン!」とか言いたくなるのもわかります。

さて、日米の具体的なシステムの違いを書こうかと思いますが、文章でゴニョ
ゴニョ書くよりも、ここは理系らしく、わかりやすいように箇条書きで挙げて
みましょう。


- Academic Position
日本: 教授、准(助)教授または講師、助教
アメリカ: Full Professor, Associate Professor, Assistant Professor

- 研究室の形態 
日本: ひとつのラボに上記職が密集 
アメリカ: Assistant Professor からラボを運営

- 昇進システム
日本: 准教授は教授が定年になるまでガマン、もしくは地方に・・・
アメリカ: Assistant Professor は試用期間(5年強)で結果を残せば 
Associate Professor へ昇級(終身雇用権である、テニュア獲得)

- 大学院生の出身校
日本: 学部のときと同じ人がほとんど 
アメリカ: 多種多様

- 新入生の平均年齢 
日本: 22~23(M1) 
アメリカ: 多種多様(だいたい25前後?)

- 入学金 
日本:国立で約28万円
アメリカ:存在しない

- 授業料(年間) 
日本:国立で50万円強
アメリカ:多種多様(平均では、公立の場合$6,000、私立では$24,000程度)

- 財政援助
日本: 
 修士 → 日本育英会第1種なら月8万くらい。要返済。
 博士 → 学振。月18万程度。授業料半額免除。返済不要。バイト禁止。また、
一部の大学院では、博士課程の実質的な授業料免除が始まっている。
 理研 → Junior Research Associate. 月18万程度。返済不要。
アメリカ: 
 入学から卒業まで、多くの学生に授業料全額免除&奨学金給付(ただし、必
ずしもではない)。場所にもよるが、月$1500ほど。返済不要。留学生は学外
のバイトは原則禁止。

- TA, RA 
日本: 数に限りがございます、応募はお早めに。月3万円~? 
アメリカ: ほぼ必須。見返りに上記の奨学金をいただく。

- ボスと酒飲み 
日本: 一般に積極的(新歓コンパなど) 
アメリカ: 一般に消極的

- ボスと旅行 
日本: 一般に積極的(研究室旅行など) 
アメリカ: 一般に消極的

- iPod を聞きながら実験 
日本: 一般に怒られる 
アメリカ: random modeでノッてる人をよく見かける

- Ph.D.人口 vs. アカデミックポジション
日本: 飽和 
アメリカ: 非常に飽和

- 卒後の進路 
日本: 一般にボスが話を掛け合ってくれる 
アメリカ: 一般にボスはノータッチ

- 余った科研費 
日本: 年度末にOA用品を大量購入して使い切る 
アメリカ: 多種多様。RAの昇給とか。

- 学科の構成 
日本: 薬学研究科、医学研究科、理学研究科、工学研究科...という具合。 
アメリカ: Biochemistry, Molecular Biology, Chemistry, Neuroscience...
という具合。

- 女性教授
日本: 極めて少ない 
アメリカ: 多い。専攻にもよるが、4~5割がふつう。


上記のように、日本とアメリカでは似通っているところもあれば、異なってい
る部分もあるわけですね。

学生として留学する際、やはり最も気になるのは、金銭的なことだと思います。
日本の場合、博士前期課程(修士課程)で得られる唯一の公的な奨学金は日本
育英会のみで、しかも返済が必要という制度です。仮に修士2年間これを利用
したとすると、M2修了時には190万近くの借金を抱えていることになります。

つまり、日本の場合、修士→博士の際に一種の人生の決断を迫られるわけで、
いくら研究に秀でている人でも、金銭面での個人的な折り合いがつかず、修士
卒後は就職していく人が少なくありません。

次回は、こういった潤沢な資金はどこから出てくるのかを紹介します。出願を
する上で知っておいて損はない内容ですので、乞うご期待!


今回のエッセイへのご意見は、こちらへどうぞ。
http://kagakusha.net/modules/weblog/details.php?blog_id=108


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自己紹介
───────────────────────────────────
2005年京都大学薬学部卒後、同大学院医学研究科医科学修士課程に3ヶ月
のみ在籍、同年8月に南カリフォルニア大学神経科学科博士課程入学。約2年
半の間学位研究に従事するも、08年2月に修士号と共に休学、帰国。3月よ
り東京の米系投資銀行にてセルサイド・アナリストとして活躍中。


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編集後記
───────────────────────────────────
今年度のノーベル賞は日本人サイエンティストの独擅場となりました。改めて
日本人の研究魂の強さを再認識させられました。国は違えど常に高い目標意識
を持って研究を続けられてる先生方にはいろいろと学ばせていただく点が多く
あります。大学院留学は研究者として成長していく観点から以上に、これらの
点を若いうちから考えさせてくれる、絶好の機会です。少しでもその一助にな
ることができれば幸いです。(YK)


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【特別エッセイ】~ノーベル賞学者から学ぶこと~

posted Jan 30, 2012, 11:30 AM by Yunke Song   [ updated Jan 30, 2012, 11:30 AM ]

先週発表された通り、今年のノーベル賞は史上はじめて、日本人(アメリカ国籍を含む)の受賞者が4人を数えるという良いニュースに、日本は沸き立っていることと思います。サイエンスの話題がトップニュースになることは、なかなかないので、これを機にもっと世間の注目を集める頻度が増えたらいいな、と思います。

さて、当メルマガのテーマでも、「Ph.D.取得後のキャリアを成功させるには」というトピックでお送りしてきたので、ノーベル賞についてのエッセイを期待している読者の方も一部いると思います。研究をばりばりやっていきたいという人たちの中には、将来、ノーベル賞を目指したい、という方もいることでしょう。「ノーベル賞の取り方」については、実際に取った人にしか語れませんが、このエッセイでは、筆者がこれまでお会いしたノーベル賞学者や、今年受賞した科学者から、どういった特徴が共通しているのか考察することにします。

ただ、前もって断っておきたいのが、「ノーベル賞を目指すぞ」という動機で、研究の道を行くのはお薦めできません。なぜなら、それは一つの結果であって目的にするべきことではないし、賞の対象分野になっていなくても重要な科学分野はごまんとあるし、そもそもこの賞をもらうというのは、運まかせの部分がかなり大きいからです。「いつかノーベル賞を取る」と言われている研究者で、まだ取ってない人たちは、枚挙にいとまがないです。賞をもらえぬまま、逝去されてしまった人たちも多くいます。また「ノーベル賞級の」研究をしていると言われている人たちは、おそらくノーベル賞学者の10倍以上の数はいるでしょう。

だから、ノーベル賞に当確になるということは、成功した研究者の中のさらに一握りに過ぎず、まさしく宝くじに当てるようなもので、かなりの運も必要になってきます。もちろん、宝くじと違って、本人の努力や工夫次第で、確率を1万分の1にも、50分の1にもすることができます。この「確率」を高めるための項目を主に4つ、挙げてみたいと思います。ノーベル賞自体ではなく、研究者として成功をおさめる事柄にも共通しています。

その4つとは、NoBEL(ノーベル)の頭文字を取って、NOvelty("新規"の発見)、Belief(成功を"確信"している)、Environment("環境"に恵まれる)、Love(本当に"好きなこと"をやっている)、です。


1.NOvelty(新規性): 将来重要になる分野で「0から1の発見」をすること

ノーベル賞の特徴として、「当該分野を前線で引っ張っている著名人」ではなく「その分野を切り開くことになった第一発見者」に賞が行くことです。このあたりをノーベル委員会は徹底的に調査し、調査にかかる費用は、賞金に匹敵するとも言われています。

2002年に化学賞を受賞した田中耕一博士が良いことを言っていました。「私の研究は0から1にしたに過ぎず、その後、他の方々が1から100にしてくれた」・・・この発言がノーベル賞の本質を見事にとらえています。ですから、科学者だったら誰もが憧れるような超一流雑誌に論文をばりばり出している人に行くというわけではなく、当初は全く注目されなかった、地味な雑誌に発表した論文がノーベル賞の対象になっていることがしばしば見受けられます。その後、著名人になってその分野のさらなる発展に貢献している人たちがいる一方で、発表後は研究活動では隠居状態になっている人たちもいます。

また、「0から1の発見」をしたとしても、その研究がのちに大きく発展して、人もしくは科学の常識を覆すきっかけにならなければいけません。

物理学賞コンビの益川敏英・小林誠両教授は、のちにこれまでの素粒子論の歴史を変えるほどの「小林・益川理論」を1973年に、発表しました。日本発の研究ジャーナルに発表したこともあってか、当時は、全く注目を浴びませんでしたが、実際に実験で証明されて行くにつれて、脚光を浴びることになったのです。正しいことが分かるのに、実に30年もの月日がかかり、それが賞につながっていったわけです。

また、化学賞の下村脩博士が発見したGFP(緑色蛍光タンパク質)も、当時はどんな価値があるのか、本人も把握していませんでした。それを初めて、生き物の細胞の中に入れて、遺伝子の「マーカー」として有用である可能性を示したのが、下村博士と共同受賞したチャルフィー教授であり、それをさらに万人の生物研究者に広める役割を果たしたのが、もう一人の共同受賞者ロジャー・チェン教授だったわけです。

ちなみに筆者は、ノーベル賞発表のちょうど2週間前に、ロジャー・チェン教授とランチを一緒にし、直接お話しできる機会がありました。彼も、共同受賞したチャルフィー教授より、GFPを細胞に組み込むことを発想し、行動を始めることは早かったのだが、自分の研究室には分子生物学の手法を扱える人がいなかった(彼自身は化学者)という事情もあり、この点ではチャルフィー氏に一歩遅れをとりました。

しかしその後、緑色だけでなく、まるで絵の具セットのような、様々な色の「蛍光タンパク質シリーズ」を開発したり、GFP以外のさまざまな細胞内のプロセスを可視化できる蛍光マーカーを発見したりと、飛ぶ鳥を落とす勢いで新たな手法を次々と発表し、生物学に貢献してきました。

しかしチェン教授は、もう過去のことは終わったこととしてあまり顧みず、次世代の可視化する技術についていろいろと考えていました。例えば、がん細胞を実際に体内で見えるようにしたり、がん細胞のみをターゲットにした薬に応用できる方法だったり、はたまたこれまで考えられなかった画期的な方法で体内を観察する手法のアイデアを披露したりと、将来を見据えた展望の豊富さに、ただただ驚かされるばかりでした。

私が唯一今後とても有望と考えていた、ある新技術についても意見を伺ったのですが、彼はすでに、その技術の第一人者といわれる科学者と共同で研究に着手しており、その手法の限界を具体例を挙げて、語ってくれました。さすが、すでにだいぶ先を行っていたのか、と感心したものです。

このように、下村博士のように好きなことをとことん追求して発見したものが後に非常に役立つものだった、チェン博士のように"確信犯的に"これから重要になる技術を見極めて本当に発見できた、という風に、過程は違えども、将来重要になるものをほとんど0の状態から発見するということが、ノーベル賞受賞には必須といえるでしょう。


2.Belief(信念): 成功を確信している

また多くのノーベル賞学者が持っている特徴として、不可能に見えるような研究にもかかわらず、必ずうまく行くと信じて、最後は大発見をおさめた、というのがあります。これまで誰もできなかったことを発見するのですから、成功する確率は非常に低い、またはそのように思われている。まわりからも冷めた目で見られた経験を持つ人たちが多くいます。

それでも、こういった人たちは「成功できる」と考えて、何度も失敗を繰り返しても、めげません。そして、成功という頂上にたどりつくための経路を見つけ、それをたどっていって、最後には本当に制覇してしまうのです。他の研究者が大発見にたどり着けないのは、こういった成功を確信することができず、途中であきらめてしまうからでしょう。

日本人唯一の生理医学賞を1987年に受賞した、利根川進教授は、まさしくこの特徴の固まりの人と言って、過言ではないです。彼は、スイスのバーゼル研究所で大プロジェクトを展開し、その間他の研究成果が出ておらず、クビになる寸前まで行きました。しかし、彼はそのために「小さな発見」の論文でつなごうという考えはせず、研究所所長を説得し、ついにはノーベル賞受賞対象となった、抗体の多様性の発見をするに至ったのです。


3.Environment: 環境に恵まれる

研究して行く上で、まわりの環境は非常に大事です。いくらその人に能力があっても、それを発揮できる場所や設備がなければいけません。また一緒に学んだり働いてきた同僚やボスによっても、将来にかなりの影響を受けます。

小林誠氏と益川敏英氏は、ノーベル賞を取ってもおかしくなかった、名古屋大学の故・坂田昌一教授のもとで素粒子論を学びました。そして二人はその後、京都大学に移ってタッグを組み「小林・益川理論」を提唱しました。師匠の坂田博士は、日本で始めて賞を受賞した湯川秀樹氏の同僚かつ共同研究者であり、もう一人の受賞者・朝永振一郎博士とあわせて、日本が誇る「三大理論物理学者」といわれています。また、共同受賞したシカゴ大の南部陽一郎氏は、師匠であった朝永博士の推薦でアメリカに留学しました。さらに2002年に物理学賞を取った小柴昌俊教授は、同じ朝永博士のもとで学び、南部氏と一緒に研究活動をしていたこともあります。このように、実に物理学分野の日本人受賞者6人がネットワークのように密につながっていたわけです。

このような例は日本だけでなく、世界のノーベル賞学者の「ネットワーク」を見ても、多く存在します。このような人たちは、ずっと一カ所にとどまるということはせず、優秀な師匠や同僚がいるとなれば、どんどん研究の場を移っていきます。


4.Love: 好きなことをやっている

当然と考える方も多いと思いますが、アカデミアの研究者として成功を目指すには、「その研究を好きであること」が大前提です。「食べて行くために仕方なしに研究の道を選んだけど、なぜかノーベル賞とれちゃった」という話は聞いたことがありません。基礎系の研究者は、労働時間や必要な努力を考えても、たいていの場合、経済的にはあまり報われているとは言えません。それでも、寝る間を惜しんで働いたり、他の研究者と議論をし出したら止まらなかったり、仕事場にいないときでも研究のことを考えていたりするのは、「本当に好きなこと」をやっているからです。

化学賞の下村教授は、当時、まさか自分の研究がノーベル賞につながるとは思っていなかったであろう、オワンクラゲの「光る物質」の正体を分離しようとしていました。その仕事は、「光る物質の正体を知りたい」「光るメカニズムを明かしたい」という、単純な好奇心から来るものだったでしょう。そうでない限り、自分の家族まで動員して、夏休みの旅行と題して、何十万匹ものクラゲ採集に費やすことは到底できません。本人にとってはそれはきっと「最高の娯楽」であったに違いないのです。


以上、ノーベル賞を取るために重要な4つの項目"NoBEL"について、お話ししました。ただ、これらのことを満たしたとしても、必ず賞をもらえるという代物ではありません。また、大発見から30年以上の年月がかかる可能性も高いです。小林・益川両博士は35年、下村氏は46年、南部氏に至っては50年も前に発見した理論で受賞しているのです。「ノーベル賞を目指して研究」すること自体は、いかに空虚な目標であるかがお分かりいただけるでしょう。

しかし、成功する研究者を目指す以上は、NoBELな条件を一つでも満たしていけるよう、日々精進していきたいものですね。私たちの世代の活躍が、20-30年以上先の日本を活気づけられますように。


杉井 重紀
カガクシャネット代表
http://shigeki.org/

【海外サイエンス・実況中継】大学院留学を成功させるための指導教官選び(後)

posted Jan 30, 2012, 11:30 AM by Yunke Song   [ updated Jan 30, 2012, 11:30 AM ]

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
_/
_/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』
_/ October 2008, Vol. 38, No. 2, Part 2
_/ カガクシャ・ネットワーク → http://kagakusha.net/
_/
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/


前回に引き続き、大学院留学を成功させるための指導教官選びに関して、山本
がご紹介させて頂きます。テーマとしては、「留学本では教えてくれない海外
大学院のホント~実際の体験から」のつもりで書き始めたのですが、もう一方
の、「Ph.D. 取得後のキャリアを成功させるには~様々なケースから学ぶこと」
として通ずる部分もあるかもしれません。

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留学本では教えてくれない海外大学院のホント~実際の体験から
大学院留学を成功させるための指導教官選び(後)
山本 智徳
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前回は、まず一流・有名な大学院を選ぶべきかに関して議論し、大学院留学の
成否を握る指導教官選びに関して触れました。おおまかにですが、大学教授を
理論派・実験派、マネージャータイプ・研究者タイプに分類しました。今回は、
私の知る4人の成功した教授を例に、理想的な指導教官選びを考えてみたいと
思います。

*A教授(実験寄り・マネージャータイプ)*
前回の分類で考えると、A教授はかなり実験寄りのタイプでしょう。理論を疎
かにすることはありませんが、主にハードウェアを使った実験を得意としてい
ます。一つの分野にこだわると言うよりは、同時に様々なプロジェクトを進め
ており、A教授の指導する学生・ポスドクの数は年々増えています。そのため、
マネージャータイプに入るでしょう。

A教授は非常に表現力が豊かで論理が明快です。専門家はもちろんのこと、全
くの門外漢であっても理解できるよう、研究内容を説明することができます。
この表現力は、ライティングにおいても発揮されます。そのため、研究に携わ
る大学教員にとって生命線とも言える、研究資金(グラント)獲得に優れてい
ます。学生・ポスドクにとって、財政援助の面で一切の心配がありません。

A教授は面倒見が良いのですが、さすがに膨れ上がった研究室の各メンバーに
割ける時間は減っています。また、あまり理論が得意ではないため、学生たち
は、実験以前に理論で行き詰まった際のサポートがほとんど得られません。A
教授の学生であれば、研究発表や論文・グラントの書き方は飛躍的に向上する
でしょう。しかし、理論的な困難に直面したとき、具体的なアドバイスが得ら
れず、学生自ら解決方法を考え出さざるを得ません。


*B教授(理論&実験・マネージャータイプ)*
B教授のバックグラウンドは理論ですが、理論と実験と両方とも重視していま
す。かなり多くの研究資金を獲得し、非常に多くの学生・ポスドクを抱えてい
ますが、とても一人で対応できる人数には見えません。A教授同様、マネー
ジャータイプに分類されるでしょう。

多くのプロジェクトが進行しており、異なる分野の学生が集まるため、研究室
は多様性に富んでいます。また、B教授は顔が広く、会話術にも長けており、
非常に広いネットワークを持っています。そのため、共同研究者も多く、著名
な教授との繋がりもあるため、研究室メンバーは有名研究室への短期留学・就
職も可能です。B教授の幅広い活動のおかげで研究資金は潤沢ですので、定期
的に研究室メンバーは募集され、また財政援助の心配が全くありません。

一方で、そのような研究資金獲得やネットワークを広げる「政治活動」に余念
がないため、学生・ポスドクと接する時間がほとんどありません。研究室のメ
ンバーが多く、B教授は学外への出張が多いため、定期的なミーティングを開
くことは困難です。そのため、学生にとっては、年に数回だけ開かれる研究室
のミニ学会が、B教授に研究を説明する時間であり、アドバイスをもらう機会
でもあります。


*C教授(理論寄り・研究者タイプ)*
C教授は非常に理論寄りです。理論を裏付ける必要があれば実験も行いますが、
基本的に理論主体で研究を進めます。C教授はまだそれほど高齢ではないので
すが、C教授の携わるその分野において、数々の輝かしい業績を修めており、
既に多数の学会からフェローの称号が贈呈されています。自ら第一線で活躍す
る、研究者タイプに該当します。

A・B教授の研究室ほどではありませんが、C教授の指導する学生・ポスドク
の数は少なくありません。ですが、毎日のように学生オフィスに顔を出し、一
対一で研究の進捗状況を確認します。理論が得意ですから、どのような展開に
なるのか、ある程度の予測はできるのでしょう。学生と徹底的に議論するため、
学生にも考えさせつつ、一方で適切なガイドラインを作ることができます。こ
れを繰り返すことで、研究室メンバーは考える力を養うことができます。

C教授は、数学的には簡潔に表現できても、万人にもわかるような説明があま
り得意ではありません。できないと言うよりは、そこまで発表への下準備に時
間を割かないのでしょう。また、一流の研究者ではあるのですが、研究資金調
達に関しては上手ではありません。C教授の研究室には、PhD 課程であっても、
学費・生活費を自己負担為ざるを得ない学生が半数以上います。学生にとって、
金銭的には非常に厳しい大学院生活となるかもしれません。


*D教授(理論&実験・研究者タイプ)
D教授は理論畑出身ですが、理論を実証するために、実験にもかなりの比重を
置いています。D教授の研究室に所属する学生・ポスドクの数は非常に少なく、
少数精鋭といった雰囲気が漂っています。D教授自らも単著で論文を書き続け
る、研究者タイプに当てはまります。

D教授は、まだ比較的若いながらも、学生時代から幾多にも及ぶ賞を受賞して
います。また、最高技術責任者として、ベンチャー企業経営にも携わっていま
す。そのため、とても多忙な毎日を送っていますが、自分の学生たちへの研究
指導にも非常に熱心であり、学生たちは国際学会において Student Award を
受賞しています。また、講義などの大学教育も一切疎かにせず、大学・学部か
ら、Teaching Award を何度も受賞しています。

企業経営にも携わり、自らも現役として活躍する研究者であるため、指導する
学生・ポスドクの数は非常に少ないです。研究資金は十分に持っているものの、
D教授が面倒を見られる数に抑えるため、学生を取らない年度も少なくありま
せん(10年間で指導した PhD 課程の学生は、たったの6人です)。また、
優秀であるがためにヘッドハントにも合います。研究室メンバー、特に PhD 
課程の学生にとっては、いまの大学に残るかD教授と一緒に移るかは、かなり
大きな問題でしょう。


●理想的な指導教官とは
今回例として挙げた4名とも、大学教授として大成功していると言っても過言
ではありません。しかし、学生にとって理想的な指導教官かと言うと、必ずし
もそうは言えないと思います。指導教官を選ぶ際には、自分にはどんなタイプ
のアドバイザーが合っているのか、十分に吟味する必要があります。

大学院でしっかり基礎を固めたい場合、マネージャータイプよりは研究者タイ
プの指導教官が合っているでしょう。もちろん、自ら考えることが研究の本質
ですが、駆け出しのときや新しい分野に挑戦する場合、ある程度の方向性なし
に進むのは、非常に難しく感じると思います。一方、マネージャータイプの指
導教官を持つと、ネットワークが多いに活用できます。特にアカデミアを希望
する場合、将来の就職の際には、そのコネは大きな武器となります。もちろん
両方を備えたタイプが一番良さそうですが、なかなかそう簡単には見つかりま
せんし、そういう教授の研究室は、やはり非常に狭き門です。

さらに、理想的な教授が見つかったとしても、たまたま出願する年度は(例え
ばD教授のように)学生を取らないかもしれません。アシスタント・プロフェッ
サーだと、テニュア(終身雇用権)を取れずに大学を去る場合もありますし、
逆にテニュアを持っていると、サバティカル(研究休暇)で大学外に半年~1
年ほど出掛けてしまう場合もあります。特に、自分の卒業前に指導教官のサバ
ティカルが重なると、非常に苦労しそうです。また、女性教授であれば、出産
が重なることも十分にあり得ます。

このような細かい条件を挙げていけば切りがありませんが、やはり指導教官と
は長い付き合いになるので、研究業績のみではなく、その教授の性格や上記で
挙げたタイプなども加味する必要があると思います。ラボローテーションがで
きるのであれば、自分自身を印象付けるのはもちろんのこと、こういう点も細
かくチェックするべきでしょう。入学前に指導教官を決める必要がある場合、
学会で会って話したり、研究室訪問をすることが理想的です。それが難しい場
合、電話・メールの応対や、その研究室の学生から教授の印象を訊くのも判断
材料になるでしょう。今回のエッセイが、これから出願する・指導教官を選ぶ
方の一助になれば幸いです。


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自己紹介
───────────────────────────────────
山本智徳
1998年都立日比谷高校卒業。一浪後、東京工業大学第5類入学。2003
年に東京工業大学制御システム工学科を卒業。今度は一年半の院浪生活を経て、
2004年秋より、メリーランド州ボルチモアにあるジョンズ・ホプキンス大
学機械工学科博士課程に在籍。現在、博士課程5年目。


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編集後記
───────────────────────────────────
日本「出身」の4氏が受賞したことで、今年のノーベル賞のニュースは日本で
多いに沸き返っていることと思います。これまで偉大な賞であること以外、こ
れと言ってノーベル賞に関しての知識はほとんどありませんでしたが、その歴
史を振り返ってみると、意外に負の側面があることも否定できないようです。
ここで紹介するかどうか躊躇しましたが、非常に興味深い記事だと思うので、
下記に記事へのリンクを張っておきます。全文読むためには、無料ユーザー登
録が必要かもしれません。(山本)
NBonline:伊東 乾の「常識の源流探訪」/日本にノーベル賞が来た理由
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20081009/173322/


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CPP2008 [email protected]

posted Jan 30, 2012, 11:29 AM by Yunke Song   [ updated Jan 30, 2012, 11:29 AM ]

バイオインフォデザインの村磯様からのお知らせです。理系の大学院留学生やポスドク研究者向けのキャリアフォーラムがボストンで開かれるそうです。

----------
[email protected]http://bid-cpp.com)

2008年 10月31日(金) ~11月02日(日) ジョブフェア(面接、他) 、キャリアセミナー

Sheraton Braintree Hotel にて

対象:大学院学生、 博士号取得研究者など

内容:研究者のキャリアプランの支援(キャリアセミナー)+(ジョブフェア)

参加企業:旭化成、味の素、第一三共、大塚製薬、塩野義製薬、キャンバス、木原記念横浜生命科学振興財団、DFS ほか

紹介可能企業:アステラス製薬、アスビオファーマ、キャノン、京セラ、キリンビール、大正製薬、タカラバイオ、武田薬品工業、帝人、東レ、ナノフュージョン、日本ロレアル、ノエビア、ハプロファーマ、富士フィルム、本田技術研究所、三井製糖、三井造船、ミリポア、武蔵野化学研究所、ローム、外資系大手CRO など多数の企業

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