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【海外サイエンス実況中継・特別号】大学院留学:「ドッグイヤー」のIT分野におけるアメリカ

posted Jan 9, 2012, 9:28 AM by Yunke Song   [ updated Jan 9, 2012, 9:28 AM ]
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_/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』 
_/  November 2007 Vol 21 No 2 
_/  カガクシャ・ネットワーク → http://kagakusha.net/ 
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今週は、なぜアメリカの大学院を選んだか、の特別号をお送りします。先週、
「コンピュータサイエンス」を紹介した嶋さんが、引き続き執筆してくれま
した。ご存知の通り、コンピュータサイエンスすなわちITは、科学の分野の
なかでも、著しくめまぐるしい速さで変化している分野です。そんなフィー
ルドに身を置いている嶋さんのアメリカ留学の動機とは?
(杉井)



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なぜ日本でなくアメリカの大学院を選んだのか?
                             嶋 英樹
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私がアメリカの大学院を選んだ一番の理由は、アメリカがサイエンス、特に
コンピュータサイエンスの本場だからです。

大学に入って最初にJavaというプログラミング言語を習ったのですが、教科
書は当年から新たに採用された、"Thinking in Java"という分厚い英語の本
でした。教授陣の間でも、英語の教科書を使うのは理解を妨げるとの議論が
あったようですが、この教科書を選んだ先生の意図は、コンピュータサイエ
ンスに携わるなら英語での情報収集に慣れてほしい、ということでした。

ITの世界における時間の流れの速さは、犬が人間の7倍もの早さで成長
するのに匹敵することから、「ドッグイヤー」と例えられています。技術
仕様やソフトウェア新機能など、目まぐるしく環境が変わる中で、常に新し
い変化に対応していかなくてはなりません。英語圏の企業・大学・コミュニ
ティがITの世界をリードする中、英語の最新情報が日本語に翻訳される
まで、のんびり待っているのは致命的なのです。

さて、そんなミーハー(?)な理由で留学を思い立つと、様々な現実的な
問題が決断を思いとどまらせます。私の場合は、大学4年生になってすぐ、
大学院への推薦を受けるか辞退するかの時が、決断の瞬間でした。当時の
問題を質問形式で再現すると、次のようになります。


Q.最先端のことをやるなら日本でもできるのでは?

日本でも最先端の研究をやっている大学・企業はたくさんありますが、私が
見てきた画期的な技術・研究などはアメリカから来ていました。どういう人
たちがどういう発想をして変革を起こしているのか、実際に観察・体験した
いという知的好奇心もありました。

今まで東京にしか住んだことがなかったので、違う環境で視野を広げたかっ
たというのもあり、将来国際的に活躍できるよう、素地を身につけるのには
いい機会だと思いました。


Q.最先端のことをやるなら論文を読んだりして独学でもできるのでは?

もちろんそうですが、行けるチャンスがあるのなら行ったほうがいいに決まっ
ています。ノーベル物理学賞を取った量子力学の父、ハイゼンベルクは自伝で
「科学は討論の中から生まれる」と書いていますが、研究について気軽に議論
できる相手が身近にたくさんいる環境は、とても重要だと思います。

また、高等教育が形骸化せず健全に社会に組み込まれている(といったら大げ
さかもしれませんが)、アメリカの大学院の教育を受けられるだけでも価値が
あると思いました。


Q.今本当に行くべきか?会社派遣で行ったほうがいいのではないか?

学費を考えると、ポスドク留学や会社派遣留学という選択肢もありました。
考えてみてもも答えが見つからないので、留学経験のある教授に片っ端から
アポを取って、留学体験談を聞かせて頂きました。早いうちに行ったほうが
環境にも適応しやすいのでいいということで、学部卒業後すぐ行くことに
したのですが、学費の捻出だけは、最後まで頭を悩まされました。

博士課程に出願するならお金の心配はほぼいらなかったのですが、様々な
大学の博士課程の学生の履歴書をダウンロードしてみてみると、あまりの
レベルの高さに受かる自信はありませんでした。よって修士に入学し、親や
貸与奨学金で借金をして、卒業後に働いて返す案でいこうと決心しました。
結果的には、修士1年目からスタイペンドが出て、幸運なことに借金はせず
に済みました。


Q.合格はできるのか?受かっても無事卒業できるのだろうか?

研究実績がほとんどないのに、世界中から集まる出願者の中から選ばれるの
かという不安はありましたが、10校も出せば1校ぐらい拾ってくれるだろ
うと思っていました。卒業に関しては、おおっぴらに言うのは恥ずかしいの
ですが、努力すること、忍耐力などには自信がありましたので、ポジティブ
思考で大丈夫だろうと考えていました。(結果として、修士は無事に卒業し、
現在の博士課程に至っています。)

いい意味でのポジティブ思考は、研究にとっても大切だと思います。研究者
は普通、ちょっとやそっとでは答えが出ないような問題に取りかかるので、
現実を直視しすぎると着手すらできなくなりますから。


Q.日本にいたら安泰なのにレールからはずれるリスクを取る価値はあるか?

日本の産業界にはいい就職先がたくさんあるので、留学はリスクになるかと
いえばなるでしょう。ただ、様々な人の留学後のキャリアパスを調べてみる
と、リターンは大きそうでしたので、ハイリスク・ハイリターンの留学を選
ぶことにしました。私事ですが、彼女と遠距離恋愛になるというというのも
大きなリスクでしたが、なんとかなるもので、今年無事にゴールインできま
した。


Q.身近に留学した人があまりいないのに、手続きなどできるのだろうか?

留学した先輩など身近におらず、留学関連の書籍はあまり参考になるものは
ありませんでした。しかし、研究留学の経験がある大学の先生や、kagakusha
メーリングリストなど、インターネットからの情報が大変心強く感謝してい
ます。

留学予備校は予算の都合上行かなかったのですが、お金が許すなら英文履歴
書やStatement of Purpose の添削ぐらいはしてもらうといいと思います。


以上ですが、留学をするか迷っている読者の方は、引っかかる質問がありま
したか?この記事が皆さんの背中を押すのに、少しでも役立てば幸いに思い
ます。



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自己紹介 
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嶋 英樹
2004年早稲田大学理工学部情報学科卒業。その後ペンシルバニア州ピッツバー
グにあるカーネギーメロン大学コンピュータサイエンス学部言語技術学科に
進学し、2006年に修士課程を修了。その後博士課程に進学し、現在に至る。



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編集後記 
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先週の編集後記でお伝えした出張から戻ってきました。サンアントニオの暖
かい気候の中、ディナーでは他の大学の先生たちと企業の「オープンソース」
について話題になりました。
オープンソースとはつまり技術の無償公開。論文ばかりでなく特許や製品の
ソースコード(建築でいう設計図)の一部を一般公開することで、コミュニ
ティの活性化を図るという、慈善的取り組みです。似たような活動に、大学
講義ビデオのインターネット公開があり、MITやUCバークレーの事例が
有名です。このメールマガジンもある意味、研究留学ノウハウのオープン
ソース化かもしれませんね。
(嶋)



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