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【海外サイエンス・実況中継】 われわれの生活の味方?敵?―すべての生命の源 ~ 微生物学

posted Jan 9, 2012, 9:21 AM by Yunke Song   [ updated Jan 9, 2012, 9:21 AM ]
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_/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』 
_/  July 2007 Vol 13 No 1 
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早いもので、このマガジンが創刊してから半年が経ちました。ご購読をどう
もありがとうございます。引き続きよろしくお願いします。
今週は研究の最前線をお伝えする第13回目。今回はオハイオ州立大学の
庄司さんが、微生物学について解説をしてくれます。日本が世界をリード
している数少ない分野の一つでもあります。また微生物に対する、日本と
アメリカでの研究のアプローチの違いについても述べられています。
(杉井)



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今日のエキスパートな質問(答えは下にあります)
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1.微生物学において、得意とされている研究アプローチが、日本とアメ
リカとでどのように違うのでしょうか?

2.抗生物質の多くは微生物の中の何を標的にして作用するのでしょう?

3.抗生物質に耐性な菌はどのようにして生じるのか?また、そのメカニズム
を解明する方法のひとつは?



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われわれの生活の味方?敵?―すべての生命の源 ~ 微生物学 
                         庄司 信一郎
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顕微鏡でしか見ることのできない小さな生き物たち、「ばい菌」と言われて
洗い流されてしまう嫌われ者や、皆さんがいつも食べる(もちろん嫌いな人
もいると思いますが)、ヨーグルトや納豆を作るために欠かせない働き者たち
のことを、考えたことはありますか?いまあなたが吸っている空気中にも、
彼らは無数に浮かんでいるし、あなたが家に帰って手を洗うときには何千、
何万という小さな生き物たちが排水管に流されていってしまうのです。

これらの非常に小さく、目に見えない生き物たちを、ひとまとめにして「微
生物」といいます。ひとくちに「微生物」といっても、それこそ星の数より
多い彼らがもし私たちの目に見えたとしたら、どうでしょうか?前がふさが
れて見えるわけがない、というのはナシにすると、どれほど多種多様が微生
物たちが、どれほど多くの場所で、多彩な仕事(といっても彼らにとっては
ただ生活しているだけですが)をしているか、私たちは驚いてしまうに違い
ありません。実際、まだまだこの世界には未知の微生物たちがたくさんいる
のです。

私の専門分野である「微生物学」とは、これらの小さな生き物たちのことを
より深く知ることを大きな目標としています。彼らをよりよく理解すること
で、病気を治したり、微生物たちを人間や地球の役に立てたり、「生命」と
いうものの本質を知ることができると考えています。

人間とのかかわり方、という点で考えると、「微生物学」というのを二つの
大きな分野に分けることができると思います。ひとつは、いかにして微生物
を殺すか、ということを重視する医学、あとひとつはいかにして微生物を
利用するか、ということを重視する農学、です。私は日本では農学を専攻
していましたが、アメリカではどちらかというと医学に近い研究しているの
で、これら二つの視点から私の研究を紹介できればと思います。

皆さんは普段あまり意識されないと思いますが、実は日本は微生物の宝庫
なのです。これは日本の温暖湿潤な気候と、豊富な森林資源が影響していま
す。そのために、日本の微生物研究は伝統的に、微生物の利用に重点をおい
てきました。裏庭で取ってきた土から新種の役に立つ微生物が見つけられた
りするわけですから、これを利用しない手はないですよね?納豆や「くさや」
などの伝統的発酵食品も、日本がこのような微生物にとっての「楽園」で
あるがゆえにうまれたと言ってもいいと思います。

このような理由で、日本の微生物研究では、有用な微生物を発見すること
(スクリーニングといいます)を得意としてきました。またそれらの研究を
企業利用しようとする動きも盛んです。それに比べて、国土は広大ですが、
一部の地域をのぞいてそれほど土地が肥沃でないアメリカでは、スクリー
ニングは有効でなく、ある特定の微生物を徹底的に調べることによって、
生命の根本を探るような基礎研究に秀でているといってもいいでしょう。

特に微生物学の研究でもっともよく使われているのは大腸菌という種で、
ひと昔前に流行ったO-157も、この仲間です。私たちは一人残らずこの菌を
腸の中に持っていて、多くはそれほど悪さをしないのですが、たまに変わり
者(病原性大腸菌)が出てきて体に異常を引き起こします。私がアメリカで
の研究で使っているのもこの菌で、ひとことで言えば、抗生物質が大腸菌、
ひいては他の微生物をどのようにして殺すのかを調べています。

抗生物質というのはペニシリンの発見以降、医学的に広く用いられている
微生物由来の薬の総称で、その劇的な抗菌効果から、一時期、「魔法の弾丸
(magic bullets)」と呼ばれていましたが、現在はこれらの薬が効かない
菌(耐性菌)が続々と現れてきて、問題になっています。

これら抗生物質の多くは、微生物の中にある、タンパク質を合成する酵素で
ある「リボソーム」を標的にします。このリボソームという酵素はすべての
生物に存在するのですが、微生物と人間では構造がちょっと違うために、
抗生物質が微生物だけに作用することができるのです。

リボソームは50以上のタンパク質と3つのRNA(リボ核酸)からなる巨大分子
で、抗生物質への耐性は、これらの構成要素の一部が変化(変異)すること
で生まれます。最近、リボソームがどのような形をしていて、どのように
抗生物質がリボソームにくっつくのかが鮮明にわかってきました。また、
この情報をもとにして、抗生物質が働くメカニズムも解明されつつあります。
これらのことがわかれば、新しい抗生物質を作り出し、現在耐性菌に苦しめ
られている人々を救うことも容易になります。もしかしたら、まったく新し
い解決法を見つけられるかもしれません。

またリボソームを研究することで、「生命はどのようにして生まれたのか」
の答えを探す手がかりを見つけることも、可能かもしれません。前に述べた
ように、リボソームは特殊な酵素で、すべての生物に例外なく存在し、タン
パク質はリボソームなしでは合成されないということから、研究者たちは、
最も始原的な(最初の)生命も、リボソームによく似た分子を持っていたと
考えています。これから研究が進めば、どのように生命が現在のように核酸
(DNAやRNA)とタンパク質を生命の基本要素として用いるようになったのか
が、わかってくると期待されています。



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自己紹介 
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庄司信一郎

1981年大阪生まれ。2004年3月京都大学農学部生体機能科学科卒業。同年
4月、京都大学大学院生命科学研究科に入学後、中退して9月にオハイオ州立
大学微生物学科博士課程に入学、現在在籍中。



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今日のポイント(エキスパートな質問の答えです)
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1.日本の微生物研究では、スクリーニング、すなわち有用な微生物を発見
することを得意としてきたのに対し、アメリカでは、ある特定の微生物を
徹底的に調べることによって、生命の根本を探るような基礎研究に秀でて
いる。

2.抗生物質の多くは、微生物の中の、タンパク質を合成する酵素である
「リボソーム」を標的にする。

3.抗生物質への耐性は、リボソームの構成要素の一部が変化(変異)する
ことで生まれる。リボソームがどのような形をしていて、どのように抗生
物質がリボソームにくっつくのかを研究することで、解明されている。



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編集後記 
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(杉井)



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