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【海外サイエンス・実況中継】 日本人の多くが想像するイメージとは大きく異なる学問 ~ 哲学

posted Jan 9, 2012, 9:26 AM by Yunke Song   [ updated Jan 9, 2012, 9:26 AM ]
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_/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』 
_/  September 2007 Vol 18 No 2 
_/  カガクシャ・ネットワーク → http://kagakusha.net/ 
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サイエンスの実況中継の第18回目をお送りします。今週は、前回数学につ
いて紹介した武田さんが、修士時代に専攻していた哲学について執筆されて
います。アメリカでは基礎科学系を含む幅広い分野において、博士の学位の
ほとんどは”Ph.D.”と呼ばれますが、これは”Doctor of Philosophy”、
すなわち「哲学博士」を意味します。分野は様々でも、サイエンスを研究
することの原点が、「哲学」に通じるという考えが、伝統的にあることの表
れでしょう。
(杉井)



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今日のエキスパートな質問(答えは下にあります)
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1. 西洋哲学は2つの大きな流れに分かれていますが、その2つは何と呼
ばれるでしょうか?

2. そのうち、明治以降に日本に取り入れられた流れの方は、どのような
特徴があるのでしょう?

3.主に英語圏で発展し、日本にはあまり取り入れられなかった流れの方
は、どのような特徴があるでしょうか?



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日本人の多くが想像するイメージとは大きく異なる学問 ~ 哲学
                         武田 秀一郎
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私は現在は数学を専攻していますが、アメリカに来た当初は哲学を専攻して
いました。そんな訳で、哲学と呼ばれる学問を少し紹介してみたいと思います。

皆さん、「哲学」と聞いてどのようなことを想像するでしょうか?「人生に
ついて考える」とか、「人間の存在意義について考える」とか、そんなこと
を想像されるでしょうか?

ある程度教養のある人であれば、「プラトン」とか「アリストテレス」と
いった古代ギリシャの哲学者の名前を思い浮かべるかも知れませんね。
もしくは、「カント」とか「ニーチェ」とか「ハイデガー」といったような
ドイツの哲学者の名前を挙げるかも知れませんね。あるいは「サルトル」
とか「デリダ」とかのフランス系の哲学者の名前が思い浮かぶでしょうか?

ですが、私が専攻していた哲学と呼ばれる学問は、これらの、多くの日本人
が想像するであろう哲学という学問とは大きく異なるものです。私が主に学
んだ哲学と呼ばれる学問は通常「分析哲学(Analytic Philosophy)」と
呼ばれるものです。そこで、この「分析哲学」に関して大まかに説明してい
きたいと思います。

西洋哲学は19世紀の後半ごろから、二つの大きな流れに分かれました。
一つを「大陸哲学(Continental Philosophy)」とよび、カント哲学など
の流れを継承し、ドイツやフランスなどで主に発展した哲学の流れで、有名
な哲学者を挙げれば、ハイデガー、サルトル、フッサール、デリダ、などの
名前が挙げられるでしょうか。この流れの主な特徴の一つは、哲学という
学問を文学や歴史などに近い学問ととらえることにあリます。

要するに、これって、多くの日本人が思っている哲学と呼ばれる学問に近い
ですよね。そうです、日本には明治以降、基本的にこの「大陸哲学」の流れ
だけが取り入れられて来たのです。

そして、もう一つの大きな流は日本には(一部を除いて)入って来ませんで
した。そう、この日本に入ってこなかった流れこそが「分析哲学(Analytic 
Philosophy)」と呼ばれるものであります。

分析哲学はドイツの哲学者である「フレーゲ(Frege)」がその源流であると
されまる。そして、その後の代表的哲学者としてラッセル、クワイン、デビッ
トソン、サール、といったような人達が代表に挙げられるでしょう。(フレー
ゲ自身はドイツ人でありますが)基本的に、分析哲学はイギリスやアメリカ
などの英語圏を代表とし、スカンジナビアの国々やイタリアの一部などで
発展してきました。

では、この分析哲学とはどのようなものなのでしょうか?まず、その第一の
特徴を挙げるなら、分析哲学において、「哲学は自然科学や数学と同じよう
な性質の学問である」と考られることでしょう。つまり、個々の哲学的問い
を、厳密かつ正確に考え議論して答えを導き出すことをその主眼に置きます。
そして、個々の哲学者について議論するのではなく、個々の哲学的問題に関
して研究していくことをその特徴とします。

分析哲学は主に、「Epistemology(認識論)」、「Philosophy of Language
(言語哲学)」、「Philosophical Logic(哲学的論理学)」、「Metaphysics
(形而上学)」、「Philosophy of Mind(心の哲学)」、「Philosophy of Science
(科学哲学)」、「Philosophy of Mathematics(数学の哲学)」、といった
ような分野で構成されます。

分かりやすくいえば、認識に関する哲学的問題を研究するのがEpistemology、
言語に関する哲学的問題を研究するのがPhilosophy of Language、数学に関
する哲学的問題を研究するのがPhilosophy of Mathematics、といった感じ
です。

過去の哲学者について研究するのではなく、哲学的問題を研究するのです。
私は、哲学を専攻していたころ、日本人からよく「どの哲学者について研究
しているの?」といったような質問を受けましたが、これは極めて的外れの
質問なのです。

で、私の場合、マスターまでしか取らず、Ph.Dプログラムには進んでいま
せんので、基本的にこれらの分析哲学の各分野を一通り(研究ではなく)
勉強したかたちになりました。修論の分野としてはPhilosophy of 
Mathematics(数学の哲学)を選びました。

始めにも書きましたが、なぜか日本には分析哲学の流れは(一部を除いては)
あまり取り入れられませんでした。ですが、アメリカの大学では、この分析
哲学が主流であります。そう、つまりアメリカにおいてPhilosophyと呼ば
れる学問は、多くの日本人が抱いているであろうものとはかなり異なるもの
であるのです。皆さんも、興味があれば、「分析哲学」の世界に足を踏み
入れてみてはいかがでしょうか?




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自己紹介 
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武田 秀一郎

日本の某大学の機械工学科を卒業した後、専攻分野を工学から哲学に変える
ため渡米。サンフランシスコ州立大学で哲学修士を習得。主に分析哲学を
学ぶが、その間に、数学の世界と運命的な出会いをし、同大学で数学修士も
習得。その後、2006年春にペンシルバニア大学でPh.D.(数学)を習得。
同年の秋から一年間UCSDでポスドクをしたのち、2007年の9月からは、
イスラエルでポスドク生活を送る。



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今日のポイント(エキスパートな質問の答えです)
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1. 西洋哲学は、「大陸哲学(Continental Philosophy)」と、
「分析哲学(Analytic Philosophy)」という、二つの大きな流れ
に分かれる。


2.明治以降日本に取り入れられた「大陸哲学」は、哲学という学問を、
文学や歴史などに近い学問ととらえ、主に過去の哲学者について研究される。

3. 主に英語圏で発展し、日本にはあまり取り入れられなかった「分析哲学」
は、 個々の哲学者についてではなく、個々の哲学的問題に関して研究して
いくのが特徴である。



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編集後記 
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日本的な言い方をすれば、哲学は「文系」の学問ということになるのでしょ
う。しかし、私が常々思うことは「この理系・文系などといった分類は、
日本の制度の中で便宜上勝手に作り出されたものにすぎない」ということ
です。そして、日本における学問の発展のためには、日本人はこの「理系・
文系」という安易な分類形式をぬぐい捨てる必要があるとも思います。この
ことは、私が工学→哲学→数学と渡り歩く中で常に感じてきたことであり
ます。(武田)



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