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2007

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【海外サイエンス・実況中継・特別号】 大学院留学:専攻分野を変えて好きなテーマを選ぶのにもってこいのアメリカ

posted Jan 9, 2012, 9:33 AM by Yunke Song   [ updated Jan 9, 2012, 9:33 AM ]

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_/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』 
_/  December 2007 Vol 26 No 1
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今回は、なぜアメリカの大学院を選んだか、の特別号をお送りします。今週
は、今年の9月に「数学」と「哲学」について紹介された武田さんが、執筆
してくれました。武田さんは、大学時代は機械工学科に所属していたそうで
すが、アメリカでの修士時代に哲学を専攻しているうちに、数学に興味を持ち、
博士課程のプログラムに移ってからは、数学を専攻されました。その経緯と、
理由とは?
(杉井)



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 
なぜ日本でなくアメリカの大学院を選んだのか?
                          武田 秀一郎
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現在、私は数学を専攻しているのですが、アメリカに来た当初は哲学を専攻
していました。そんな訳で、私がアメリカに来た動機や経緯などは、多くの
サイエンス系の大学院留学生とは異なると思いますが、興味があれば読んで
みてください。

私がアメリカの大学院を選んだ大きな理由は二つあります。一つ目は、
「専攻分野を変更したかった」から。二つ目は、「はじめに自分の研究テー
マを決める」のではなく、「いろいろな分野のことを勉強しながら、徐々に
自分の分野を絞りこめる環境が欲しかった」からです。

もちろんそれ以外にも、「アメリカに来たかったから」とか「英語がもっと
できるようになりたかったから」とか「昔から何となくあこがれていたから」
とか、多くの留学生にあてはまるような小さな理由はいくつかありますが、
基本的には、上にあげた二つが主な理由です。そして、この二つは大きく
リンクしていますが、それについて書いてみたいと思います。

私は、日本の大学で学部の4年間を過ごしましたが、日本にいるときは機械
工学を専攻していました。日本の大学では皆さんもご存知のように、基本的
に大学を受験する際に、専攻分野を決めなければいけません。しかし、大学
受験当時、高校生であった私には、大学でどのようなことが勉強できるかと
か、自分にはどのような分野のことが適しているのかなど、たいして分かる
わけもなく、なんとなくといった感覚で機械工学科を受験し、某私立大学に
入学しました。

しかし、大学に入学してから、色々なきっかけなどもあり、哲学と呼ばれる
学問に興味を持つようになりました。始めのうちは、その分野の本を趣味
程度に読みあさる、といった感じでしたが、そのうち徐々にのめりこんでい
き、本格的に勉強してみたいと思うようになりました。しかし、ここで、
日本の大学制度が大きな壁となったのでした。

日本の大学制度では、ご存知のように、専攻分野の変更はきわめて困難。
さらに、当時すでに大学2年の終わりぐらいに差しかかっていた私には、
大学を辞めて再び受験しなおすなど、なおさら困難に感じました。

そこで、はじめに考えたことは、日本の大学院で哲学科を受験することで
した。で、いろいろと日本の大学院入試情報を調べ始めました。当時はイン
ターネットが現在ほど発達しておらず、かなり手探りで調べた感じだったの
ですが、だいたい分かったことは、「大学院に入るには、まず確固たる具体
的な研究テーマを決めなければならない」といったことでした。

ですが、何しろ機械工学から哲学という、ほとんど180度の進路変更であ
るうえに、哲学を素人感覚で勉強し始めたばかりの私には、そんなことまで
決めるのは不可能に思えました。それに、そもそもそんな風に「はじめに
テーマを絞り込む」のではなく、「少しずつ色々な勉強をしながら、徐々に
自分の分野を絞り込める」ような環境が欲しいと考えていました。

そして、色々調べた末、これら全ての問題を一気に解決できるのが「アメリ
カの大学院に行く」こでした。ですが、学部での専攻が機械工学で、大学
レベルの哲学の授業など基本的に履修してなかった、というか履修できな
かった私には、いわゆるPh.Dプログラムに進むことは困難に思えました。
そこで、選んだのが、アメリカのそれほど有名でもない大学のマスターの
プログラム(修士課程)に入学する、という道でした。

アメリカのごく一般的な、博士課程を有さない修士だけの大学院であれば
推薦状なども必要なく、かなり簡単に入学できる場合もあり、とりわけ哲学
のようにそれほど人気があるわけでもない専攻であれば、なおさらです。
そして、私はカリフォルニアにある、サンフランシスコ州立大学の哲学科の
修士課程に見事(?)入学できました。

ですが、多くの(特にサイエンス系)のPh.Dプログラムとは異なり、気前の
いい学費免除だとか、財政援助などのようなものは一切なく、全て自腹を
切る必要がありました。そこで、私の場合、日本の学部時代、深夜のバイト
や肉体労働などで貯めたお金と、やはり学部時代にもらっていた育英会の
奨学金をためた貯金などを、徐々に食いつぶして留学生活を送ることになっ
たのです。

さらに、アメリカに来た当初は、ただ哲学を勉強してみたいという、純粋な
学術的好奇心だけしか持っておらず、その後のプランなども特にありません
でした。「まぁ、貯金が底をついたら日本に帰るのかなぁ~」ぐらいの感覚
でした。

ですが、哲学の修士を取る過程で、いくつかの偶然も重なり、数学という学
問に出会い、また、数学科でTAの仕事が得られ経済的な問題が解決された、
という理由もあり、結局サンフランシスコ州立大学に4年間も在籍し、哲学
と数学の二つの分野で修士号を習得することになりました。

ちなみに、その後は、ペンシルバニア大学のPh.Dプログラムに進み5年間
でPh.Dを習得し、一年間UCSDでポスドクの(ような)ポジションを経験し、
気がついたらアメリカで10年間過ごしました。そして、今年はイスラエル
でポスドクをしています。

単純に計算すると、私の場合4年間遅れたことになります。そして現在では、
哲学からは離れ、数学の研究および教育に、全力投球の毎日を送っています。
哲学科で学んだことなど、直接的には全く関係のない生活を送っており、
たま~に自分の本棚に飾ってある哲学科時代に使った教科書などを眺めて、
昔を懐かしむ、といった程度です。

ですが、今振り返ると、サンフランシスコでの4年間は私にとっては「学部
のやり直し」のようなものであり、今までの人生の中で、最も重要な時期で
あったように思います。そして、この時代があったからこそ、ここまでやっ
てこれたと確信しています。

さて、私がアメリカに来て、その後10年間を過ごしたいきさつはそんな感じ
ですが、改めて思うことは、アメリカの大学・大学院の裾野の広さと柔軟さ
です。日本人は「まず始めにやりたいことを決めて」とか「確固たる目的を
持たなかれば駄目だ」などとよく口にしますが、私はそのような考え方には
強く反対します。そんなことを考えなくても、もう少し気楽に「なんとなく
こんな分野の勉強がしてみたい」とか「色々なことをやりながら徐々に自分
の道を決めていく」といったスタンスで十分だと思います。そして、そのよ
うなスタンスを受け入れ、柔軟に自分の道を決められるような環境を提供し
てくれた、アメリカの大学制度にはとても感謝しています。



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自己紹介 
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武田 秀一郎
日本の某大学の機械工学科を卒業した後、専攻分野を工学から哲学に変える
ため渡米。サンフランシスコ州立大学で哲学修士を習得。主に分析哲学を
学ぶが、その間に、数学の世界と運命的な出会いをし、同大学で数学修士も
習得。その後、2006年春にペンシルバニア大学でPh.D.(数学)を習得。
同年の秋から一年間UCSDでポスドクをしたのち、2007年の9月からは、
イスラエルでポスドク生活を送る。



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編集後記 
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今、ブログを書いています。

http://grothendieck-jr.blogspot.com/

で読めます。かなり個人的でいい加減なブログですが、イスラエルの生活や
数学者の日常が何となくわかるかも。
(武田)



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【海外サイエンス・実況中継】 分子生物界の“ガリレオ”~ヒト遺伝子のプログラムコードの意味を推理する~ バイオインフォマティクス

posted Jan 9, 2012, 9:32 AM by Yunke Song   [ updated Jan 9, 2012, 9:32 AM ]

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サイエンスの実況中継の第25回目をお送りします。今週は、ボストン大学
で博士課程に在籍している成相さんが、「バイオインフォマティクス」の紹介
について、執筆してくれました。「あれ、バイオインフォマティクスは最近、
小葦さんが紹介したんでは?」と思われた方・・・その通りです。しかし、
別の違った視点から分野を見ると、この今ホットな分野の新しい側面が見え
てくると思います。
(杉井)



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今日のエキスパートな質問(答えは下にあります)
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1. 2003年に解読されたヒトゲノムは30億文字もありますが、端的に
言うと、どのように全ゲノムを読み取られたのでしょうか?

2. ヒトゲノムの「プログラムコード」は解読されましたが、問題点は何でしょうか?

3. 成相さんが取り組んでいる、主な研究テーマとは?



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分子生物界の“ガリレオ”~ヒト遺伝子のプログラムコードの意味を推理する
~ バイオインフォマティクス
                          成相 直樹
─────────────────────────────────────



私は現在、ボストン大学バイオインフォマティクスプログラム (Ph.D.
コース) に在籍しています。バイオインフォマティクスという分野を私
なりに定義すると、『生命科学あるいは医学的に重要な問題をコンピュー
ターを活用して解き明かす』と言うことが出来ると思います。

一つの例を挙げると、30億文字のヒトゲノムが2003年に解読されましたが、
これはコンピューター科学の力を総動員して、達成されました。当時のヒト
ゲノム読み取り機では約1000文字しか正確に読むことができなかったのです
が、簡単に述べると以下の様な方法で、30億文字のヒトゲノムが決定されま
した:

1. 30億文字のDNAをランダムに切断して、それぞれの断片を1000文字読む
2. 上記 1.のステップを数多くのヒトゲノムで行なう
3. 得られた断片同士を配列のオーバーラップを見てつなぎあわせていく

この様にヒトゲノム配列を始めとして、チンパンジー、イヌ、ニワトリなど
現在では数多くのゲノム配列が決定されています。そしてゲノム配列が分
かったことで遺伝子、タンパク質の構造などがより明らかになり、分子生物
学・医学はバイオインフォマティクスとの相乗効果で、かつてないスピード
で進歩しつつあります。

さて、ヒトゲノム(DNA配列)というものはコンピュータープログラムの様な
ものですから、プログラムが全て読めたのでヒトの機能や病気が全て解明さ
れる日は近いと思われる方も居るかもしれません。ところが、ヒトの体と
いうものはそう簡単なものではありません。プログラムのコード自体は分
かったものの、そのヒトゲノムを構成しているプログラムの言語がどの様な
構造をしているか、そしてそもそも書かれているプログラムが何を意味して
いるか、という点に関しては、まだ完全な理解にはほど遠い状態です。

現在、ヒトゲノム30億文字のどの部分が遺伝子(タンパク質をコードする
部分) か、ということについては、バイオインフォマティクスの発展もあ
り、大体分かってきました。

しかしその2万数千存在すると言われている遺伝子のうち、半分以上の遺伝
子については未だに機能が分かっていません。私の現在の研究テーマは、
このような機能未知の遺伝子やタンパク質の機能を、さまざまな生物学的
データを利用して推測する、というものです。例えば、機能未知でも遺伝子
の配列は分かっているので、他の機能の分かっている遺伝子と配列を比べて
みて、似ていればタンパク質の機能も似ているだろう、という、ある程度の
推測が出来ます。

他にもやや専門的になりますが、タンパク質間の相互作用、遺伝子の発現
情報、タンパク質局在情報などの、ゲノム全体規模のデータを利用して、
統計的なフレームワークのもとで、信頼性の高い機能予測システムを開発
することを目指しています。私たちの研究が、糖尿病やガンなど病気に関
わる新たなタンパク質の発見、そして最終的には創薬につながれば良いな
と考えています。

最後に宣伝になりますが、ボストン大学のバイオインフォマティクスプログ
ラムについて紹介したいと思います。

このプログラムは時代に先駆けて1999年に設立され、全米の中でも長い伝統
と実績を誇るプログラムです。

現在は約90名のPh.D.及びM.S.コースの大学院生が学んでいます。必修の
授業では主に分子生物学、物理化学、そしてバイオインフォマティクスを
学びます。例えば分子生物学の授業は、分子生物学を専門とする学生に混
ざって勉強する事になるので、なかなか厳しいですが刺激的です。教授陣
の中にはヒトゲノム計画をスタートさせたチャールズ・デリシ、そしてバイ
オインフォマティクスを勉強している人は100%知っているであろう、
スミス・ウォーターマン・アルゴリズムを開発したテンプル・スミスなど、
世界レベルの教授が数多く在籍しています。

また、ボストンという地域柄、ハーバードやMITとの共同研究なども多いで
す。卒業後はアカデミックに残る人、ボストン界隈に数多く存在する製薬
会社やバイオテック企業に研究者として就職する人、経営コンサルティング
会社や投資銀行に就職する人など様々です。



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自己紹介 
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成相 直樹 (なりあいなおき)

2003 年 東京大学理学部情報科学科卒業
2005 年 東京大学院情報理工学系研究科コンピューター科学専攻修士課程修了
同年 ボストン大学バイオインフォマティクスプログラム入学
2008 年後半 Ph.D. 取得後、民間企業に就職予定



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今日のポイント(エキスパートな質問の答えです)
───────────────────────────────────── 

1.30億文字のDNAをランダムに細かく切断して、それぞれの断片を読んでい
き、それらの配列のオーバーラップを見て、各断片をつなぎあわせていって、
全ゲノムを解読した。


2. ヒトゲノムの「プログラムコード」はすべて解読されたものの、その
ヒトゲノム・プログラムの言語がどの様な構造をしているか、そしてそもそも
書かれているプログラムが何を意味しているかは、まだ理解されていない。

3. ヒト遺伝子のうち、半分以上の遺伝子については未だに機能が分かって
いないので、成相さんは、このような機能未知の遺伝子やタンパク質の機能
を、さまざまなデータを利用して推測する研究をしている。



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編集後記 
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このメールマガジンと同様、今年始めから(正確には昨年からですが)はじ
めたホームページ(http://kagakusha.net/)。いまだにベータ版として、
一年間試用してきましたが、内容を変更したり、セキュリティをさらに強化
させたあと、近日中に本格的にスタートさせる予定です。皆さんからの
「こうしたらいいのではないか」という提案や、「ここが問題なのでは」
というご指摘も、随時お待ちしております。
(杉井)



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【海外サイエンス・実況中継・特別号】 大学院留学:獣医になる夢から、船乗りの父から聞いたあこがれの海外へ

posted Jan 9, 2012, 9:31 AM by Yunke Song   [ updated Jan 9, 2012, 9:31 AM ]

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★★★★★★★★★★


今週は、なぜアメリカの大学院を選んだか、の特別号をお送りします。今号
は、 獣医学部を卒業後、渡米された中山由実さんが、留学した動機につい
て語ってくれます。生命科学研究でいま最も“ホット”な場所の一つである
ウィスコンシン大学マディソン校で、免疫学を研究している中山さん。
「獣医学科に行きたいという夢」を実現したあと、もう一つの夢であった
「幼い頃からの海外へのあこがれ」を実現するに至った経緯とは?
(杉井)



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なぜ日本でなくアメリカの大学院を選んだのか?
                          中山 由実
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私の父親は船乗りだったため、私は幼いころから強く海外にあこがれていま
した。実際の様子を知っていた父は、むしろ、そんなにいいところではない、
日本が一番だ、大陸は危険だ、と海外に行くことを薦めたことは一度もあり
ませんでした。しかし、折々に話してくれた海外での生活、人々の様子、い
つも買ってきたくれたいろいろなお土産などから、見たことのない海の向こ
うへ想いは膨らむばかりでした。

それとは別に、私は生き物が大好きで獣医になりたいという夢がありました。
理由は単純に、動物と接することが仕事にできるからというだけでしたが、
獣医になるということと海外で生活することは、あまりにもかけ離れていた
ため、当時はどうすればいいのか見当もつきませんでした。

高校まで海外で生活する機会もなく、ずっと日本で教育を受けてきた私に
とって、獣医学をいきなり英語で勉強するのはハードルが高すぎると考え、
大学受験では迷わずに日本の大学を受験しました。大学入学後、教養の2年
間で、外国人教師(アメリカ人またはオーストラリア人でした)のクラスを
とるたびに話を聞いていたので、アメリカの大学生活についても知る機会が
増えました。

すでに大学生だった私は、そのころから海外の大学院に進学するのはどうか
と考え始めました。私は海外で生活したいと思いつつも、様々な言語を積極
的に勉強したわけでもなく、英語は人並み以上にがんばっていたものの、
第二外国語のスペイン語は日常会話がやっとできる程度だったので、現実的
に行き先は英語圏に限られていました。日本で頑張っただけの英語力でどこ
までできるのかは不安でもあり、興味深くもありました。

希望通り獣医学科に進んでからは研究室に配属され、6年生で卒業するまで
かなり本格的な研究テーマを与えられました。臨床を学ぶために動物病院で
の実習もあったので、臨床と基礎研究の両方を見ることができたのは、後の
進路を決める際に役立ったと思います。研究室には当然大学院生がいるので、
日本の大学院のシステム、大学院生の生活について、しっかり見ることが
できました。同時に、海外の大学院についても調べていたので、メリットや
デメリットについても、自分なりに考えられるようになりました。アメリカ
の大学院がもっとも数が多く、情報も入りやすかったため、アメリカの大学
院に行こうと決めました。

決めた理由はいくつかありますが、皆さんが書かれているように、一番は
経済的に一応は独立できる点です。大学まで出させてもらったら、親には
迷惑をかけたくなかったので、好きな道に進みつつ経済的援助を親から受け
なくていい点は、非常に魅力的でした。

また、自分自身を振り返ると、勉強したことは自分の研究テーマにかかわる
ことばかりだったので、全体をしっかり勉強したいと思うようになりました。
日本の大学院生は授業などにはほとんど出ることはなく、一人ひとりで必要
なことを勉強していましたが、アメリカの大学院はコースワークがしっかり
しており、始めの数年間は研究もしつつ、勉強を体系だててできるのです。
アメリカの大学生、大学院生は非常に熱心に勉強すること、先生方も大学院
生を一人前の研究者としてトレーニングする意識が高いと聞いていたことも、
アメリカの大学院で勉強したいと思った理由のひとつです。

そのころ、臨床の実習で、免疫系の病気で使われている薬が、それぞれに
どう作用するかというメカニズムは完全には解明されていないにもかかわら
ず、効くことを知り、免疫の研究に興味を持ちました。自分が研究していた
テーマも、ウィルスやホストの反応を見るという点で、免疫にも関係があり、
免疫学をしっかり勉強したいと思うようになりました。私の調べた大学の
ほとんどは免疫学が独立した学科として成り立っており、一言に免疫といっ
ても、さまざまな見方があることも魅力でした。

アメリカの大学院に行くと決めてからは、どうやったら実現するのか、とに
かく調べ始めました。当時の担当教授には驚かれ、心配されましたが、幸い、
同級生に同じ様にアメリカの大学院を目指す友人がいたので、情報を交換し
つつ、励ましあってがんばることができました。

アメリカの大学院には世界中から学生が集まるので、競争率は非常に高く、
GREやTOEFLでインドや中国の学生に差をつけられるため、ほかの事でアピー
ルしようと必死でした。実際に大学を訪問して、いろいろな教授と話したり、
町の住みやすさを見たりして、最終的に5校ほどに絞りました。

幸い、現ボスがすんなりと受け入れてくれ、さらに始業の秋学期まで待たず
に始めてほしいということだったので、私は2003年の6月にウィスコンシン
のマディソンにやってきました。今、5年目に入り、そろそろ卒業とその後
について考えているところです。

この4年間で学んだことは、このエッセイには書ききれません。実際に研究
だけでなく、プレゼンテーションの仕方から、学生のトレーニング、ラボの
人間関係、国や文化の違いなど、様々な面で成長したと思います。日本を外
から見て新しくわかったこともたくさんありますし、来て見なければわから
なかったアメリカのこともたくさんあります。

私は日本の大学院にいったことはないので、長所短所を挙げることはできま
せんが、日本での就職を希望する場合は、日本に何らかのつながりがある
ほうがいいと思います。

それに、日本では自分の研究についてだけ勉強するのが物足りなかったと書
きましたが、実際には、こちらのコースワークは、まれにですが、あまりに
も自分の研究とかけ離れていて、なぜこんなことを覚えなければならないの
か、、と思うこともありました。

もちろん、熱心に勉強する人は、どこにいても熱心でしょうし、日本にも
すばらしい研究者、教育者はたくさんいると思います。両方の可能性を十分
に考えた上で、自分にとって何がより重要かを決めることが大切だと思い
ます。



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自己紹介 
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中山 由実 (なかやまゆみ)
2003年 東京大学農学部獣医学課程卒業。2003年6月よりUniversity 
of Wisconsin-Madisonで大学院生として免疫の勉強をしています。
来年にはPh.Dを取得したいと思っています。卒業後の進路はただいま
考え中で、kagakushaネットの先輩方のアドバイスをいただいています。



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編集後記 
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メールマガジンの発行が決まったときから、私も何か協力できれば!と思っ
ていたのですが、結局なかなか書けずにいました。
今回、あまり時間をかけずに、当時のことを思い出しながら書いただけなの
ですが、これから大学院を目指す人の参考になれば、と思います。
(中山)


2007年も残すところあと1ヶ月を切り、日本は師走となりましたね。
今年1月初旬に始まった当メールマガジンも、おかげさまで無事に一年を
乗り切ることができました。来年は新たなテーマで、構想を練っている
ところです。

もしこのメルマガが皆様にとって、「少しでも興味が持てた」「面白いエッ
セイがあった」「参考になった」などなど、少しでも良かったと感じてもら
えましたら、「2007年まぐまぐ大賞」への投票をお願いいたします。
締め切りがすぐ目前(日本時間・月曜日午前10時30分まであと1日)
となりました。

http://www.mag2.com/events/mag2year/2007/

「教育・研究部門」で、
タイトル「海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継」
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に、簡単に選んだ理由とメールアドレス(まぐまぐからプレゼント当選者へ
の連絡のためだけに使用するそうです)を添えてください。来年に向けて、
われわれを勇気づけてくださると、この上なくうれしいです。
(杉井)



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【海外サイエンス・実況中継・特別号】 大学院留学:新しい分野を開拓しに留学へ、憧れた利根川進博士と同じ境遇に

posted Jan 9, 2012, 9:31 AM by Yunke Song   [ updated Jan 9, 2012, 9:31 AM ]

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今週は、なぜアメリカの大学院を選んだか、の特別号をお送りします。先週、
「バイオインフォマティクス」について紹介された小葦さん。ユニークな
パーソナリティを持つ彼が、なぜこのような道を歩んだのか。早くから留学へ
の芽が出ていたようです。先週の分野紹介に登場していた「たいじ君(5歳)」
と「利根河原進博士」がなぜ出てきたのか、その背景が分かると思います。
(杉井)



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なぜ日本でなくアメリカの大学院を選んだのか?
                          小葦 泰治
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つい先日このメールマガジンの発行責任者の杉井さんが、このように
http://www.kagakusha.net/modules/weblog/details.php?blog_id=57
統計を取られているようなので、それに準じる形で、
まず前半で、私もそれぞれの項目で理由を挙げさせていただきました。
さらに後半では、私が米国理系大学院の Ph.D. プログラム (博士課程)
に進むことになった経緯を、子供のころから振り返って記述させて
いただきました。


●前半

*************************
* アメリカの院を選んだ理由*
*************************

- 将来、できれば米国で教授職に就きたいから
- 英語力を高めたかった
- 独立した研究者になるための教育 (研究費申請など)が充実している
- 授業料免除、生活費をもらえる
- 専攻・研究分野を変える、または幅広い学際領域を選びたかった
- 自分が希望する研究分野で、アメリカがもっとも進んでいた
- 基礎から学べて充実したコースワーク
- 世界中から学生、教授が集まるのが魅力
- アメリカの文化や海外での生活にあこがれがあった
- 大学から大学院へと、人材の流動性がある
- 大学教授たちが若い研究者にも対等の目線で話をしていた



*********************************
* アメリカの院に行って良かったこと *
*********************************

- 大学教授たちが若い研究者にも対等の目線で話をしていたこと
- 英語で発表・議論することが苦でなくなった
- 異なる分野の研究者との交流の機会が多い
- 研究費申請のしくみを学んだり、トレーニングできる場がある
- 世界の一流の科学者と研究できるチャンスが多い
- より多くの分野に網羅的に、優秀な教授がたくさんいる
- 授業料免除、生活費をもらえた
- 充実したハードな授業を通じて、幅広い分野での基礎力が身に付いた
- 世界中からの様々なバックグラウンドを持つ留学生、教授と仲良くなれた
- 日本の良さ、問題点も見えるようになった
- 英語を通じて国際性を養うことができた
- 発表や議論する機会が多く、プレゼン・ディスカッション能力が鍛えられる



***********************
* 日本の院に行くメリット *
***********************

- 途中でクビになる可能性が低い
- コースワークに時間を取られず、比較的マイペースに研究を進めることができる
- 日本での就職に有利
- 良いボス・研究室に恵まれれば、良い研究者に十分なれる
- 研究のレベル、教育の質も十分に高いと思われるところもある
- 英語のプレゼン・ディスカッション能力が成功するサイエンティストの本質ではない



●後半
新しいサイエンスに強いのは、日本ではなくて、やっぱりアメリカ?


****************************
* 英語の勉強を始めたきっかけ *
****************************

英語を習い始めたのは、実は幼稚園に通っているとき (4,5歳のとき)でした。

このように書いてしまうと、やっぱりエリート(?)になるお子様は、子供の
ときから違うのね。。。ハァ?となってしまいそうですが、ちょっと待って
ください!

そもそもの始まりは、幼稚園の放課後に、なにやらただでおやつをくれる
アメリカ人のおじさんがいるらしい!?というのが、園内でうわさになって
いて、初めて行ってみたら、実はそれが幼児用英語教室だった。それだけ
なんです。

おかげさまで、その後小学館の英語教室に通うなど (特に中学校の英語教育
がよかった)、常に英語に興味を持って学び続け、英語が得意科目になり、
欧米人になんの違和感も感じないようになったことが、今振り返ればとても
大きかったように思います。

やはり子供のころからの慣れみたいなものは、とても大事なんでしょねぇ~
"三つ子の魂百まで"とはよく言ったもので、そういうのは確かにあるなぁ~
と実感している次第です。


************************
* サイエンスへのいざない *
************************

一言でいうと、伝記恐るべし!
エジソンさん、野口英世さんの伝記、これは大きかったと思います!
今も同じようなものがあるみたいですね。(笑)
例えばこういうの、、、

------------------------------------------------------------------
(おもしろくてやくにたつ子どもの伝記1) 文:浜野卓也 ポプラ社
みなさんは野口英世を知っていますか?さいきんの研究をしていたお医者
さんです。
どうしてお医者さんになったのでしょうか。
------------------------------------------------------------------

当時、同じシリーズで様々な方が取り上げられていて、
他にベーブルース、ナイチンゲール、ファーブル、ヘレンケラーなども
読んで子供ながらにたいへん感銘を受けたのを、今でも鮮明に覚えています。

たぶんこの頃 (6歳)ぐらいから、サイエンス(特に医学分野)に興味を持ち
始め、将来は、エジソンさんや野口英世さんのような発明家または、科学者
になりたいと思い始めたと記憶しています。

で、ただいま私は、野口英世さんが、1904~1918まで研究されていたニュー
ヨーク・マンハッタンにて、自分も研究*に取り組むことができて、とても
幸せです。

ちなみに、エジソンさんは長年、お隣の州、ニュージャージ州で研究されていました。

*: 現在の私の専門は、バイオ、IT、ナノテクを融合した、情報生物学または
バイオインフォマティクスという分野で、研究においては米国が諸外国に
先行しています。


************************
* ノーベル賞の存在を知る *
************************

9歳のときに、利根川進博士 (マサチューセッツ工科大学教授)が
"抗体の多様性生成の遺伝的原理の解明"で、ノーベル医学生理学賞
を受賞されました。これは今でもかなり鮮明に覚えています。

実は、このとき初めて、科学技術の研究開発において、世の中に
とって最も重要でかつ大きな功績を修めた科学者、技術者を
毎年、物理、化学、医学生理学分野に分けて表彰される
ノーベル賞というものがあるということを知りました。

で、このとき以来、自分は将来科学者になって、世の中の諸問題の
真相解明と解決を行うことで、社会に貢献し、その延長線上として
ノーベル賞を目指していきたい!と思うようになっていました。

そしてこのときに、利根川先生が米国大学院の Ph.D.プログラム
(博士課程)に進学されて、その後の研究者人生にとって大きな
プラスであったことも伝え聞きました。(これが僕の潜在意識の中に、
刻まれていたのかなぁ~という感じがしています。)


*****************
* 日本から世界へ *
*****************

このような少年時代を過ごしたわけですが、うちの両親は、自分の
子供には受験戦争のようなものに巻き込まれては、かわいそうだ
という、とても優しい思いがあり、中高大学一貫教育、いわゆる
エスカレーター式の私立へ進学しました。

が、高校から大学へ進学する際、1つとっても大きくかつ重要で、
少し大げさですが、その後の人生を左右しかねない問題に気付きました。
「この大学、医学生物関係の勉強できる学部ないやん!」って。
というのもあって、内部推薦を蹴って、大学受験をすることに!
もちろん医学生物関係で。

そしてついに、これまた大げさですが、ある決定的な衝撃の瞬間を迎えます。

それはセンター試験の2週間前のセンター試験直前模試の昼休みのこと。
いつも通り、期間限定グラタンコロッケバーガーを食べながら、
友達と将来について語りあっていたそのとき、大親友の塩谷くん
(このメルマガ読んでたら、よかったら連絡くださいね~)が、衝撃の一言!

"みんな日本人は、東大、京大いうけど、世界には M.I.T.(マサチューセッツ
工科大学)とか遥かにすごいレベルの大学が山ほどある!"

この瞬間、おい!なんでそれをもっと早よ言わへんねん!
と思ったと同時に、し、しまった。。。自分は世界でなく、日本に
して目が向いていなかったと、、、
これは私にとってメガトン級にインパクトがあり、後の人生設計を大きく
変えることになる、最も大きなものとなりました。

そしてそれが、このときまで忘れかけていた、
利根川進博士 (マサチューセッツ工科大学教授)、ノーベル賞の存在、
米国留学について思い出させてくれたのでした。。。感謝


**********************
* 米国理系大学院進学へ *
**********************

とはいえ、センター試験まであと2週間しかなかったので、いきなり
米国の大学を目指すほど時間の余裕がなく、大学は日本で、そして
研究者としての基盤を作る大学院のときに、念願だった米国留学を
目指すことになりました。


*****************
* 歴史は繰り返す? *
*****************

私が米国理系大学院へ留学しようとしていた際に、
その昔、若き利根川進先生を米国大学院へ送り込まれた、渡辺格先生の
お弟子さんにあたる、松原謙一先生との巡り合わせ*は、たいへん
幸運に恵まれたものであり、かつとても運命的なものでした。

というのも、
渡辺先生は、当時新しく立ち上がった分子生物学という分野で利根川先生を、
松原先生は、新しい分野として誕生した情報生物学 (バイオインフォマティ
クス)という分野で、私を米国留学するためにサポートしてくださったから
です。

日本という国は、科学技術、理系分野にたいへん強い国であることは
間違いありません。でも、新規に分野を立ち上げる、あるいは
新しい分野を軌道に乗せるという点においては、まだまだ欧米諸国
に遅れをとっているような気がしています。

そこで私は、当時日本ではあまり盛んでなかった、学際領域的な研究分野
である情報生物学 (バイオインフォマティクス)では、教育プログラムが
しっかりと確立されていて、それに関連した研究をコミュ二ティーと
して取り組まれている研究機関で、将来本分野で活躍していくための
基礎作りを行うと決めて、米国へ留学し、現在に至っています。

* 情報生物学適塾のことを指しています。
詳しくはこちらの塾長の松原先生ご自身による説明をご覧いただければ幸い
です。
http://www.kippo.or.jp/business/science/interview/index.htm



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 
自己紹介 
───────────────────────────────────── 

小葦 泰治 (おあし たいじ)
2001年 関西大学工学部生物工学科卒業。京都大学大学院生命科学研究科
にて、半年ほど日本の大学院生活を経験したのち、2001年8月より、
Mount Sinai School of Medicine of New York University の
計算機生物物理分野の Ph.D. Program に進学。
もうすぐ Ph.D. (博士号)を取得の見込み。Ph.D.取得後は、博士研究員
などとしてさらに実績を積んで、将来は立派な教授となり、この分野を
引っ張っていくことが目標。情報生物学適塾(塾長: 松原謙一先生、
国際高等研究所にて2001年開催)の最年少参加メンバー。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 
編集後記 
───────────────────────────────────── 


というわけで、先週、今週と2週に渡ってエッセイを執筆させていただき
ました。少しでも読者のみなさまのお役に立てる内容があったならば、
これほど嬉しいことはありません。

なお、このメールマガジン以外にも、Kagakushaネットワークでは、
NY生活プレス社発行の週刊NY生活にて、私の留学ライフ イン USAと
いう形で、記事にしていただいています。
2007年度: 3/24号(小葦)、5/19号(横山さん)、7/21号(嶋さん)、
9/15号(牧野さん)、11/17号(山本さん)、2008年1/19号(今村さん)
こちらから、http://home.nyseikatsu.com/
オンラインでも無料で購読可能です。

さらに、羊土社発行の実験医学のこちらの連載企画
http://www.yodosha.co.jp/jikkenigaku/management.html
2007年度6月号にも、情報提供させていただいているとともに、
Kagakusha ネットワークのホームページも紹介していただいています。
この場をお借りして、様々なご支援に対する御礼申し上げます。

最後になりましたが、もしよろしければ、こちらの
http://www.mag2.com/events/mag2year/2007/
下の方にある総合大賞のところでも ...笑
- 海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継
- マガジンID/0000220966
- 感想 (ほんっと簡単な一言でOK!) 
- メールアドレス (抽選で、賞品が当たります!)

と、みなさまの1票を投じていただければ、涙を流して
喜びます。どうかご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。
m(_ _)m

(小葦)


それまで全く意識していませんでしたが、おかげさまで当マガジンが「まぐ
まぐ2007年メルマガ大賞」の候補にノミネートしていただきました。
発刊後まだ一年にも満たないのですが、選んでいただいてとても感謝して
おります。
http://www.mag2.com/events/mag2year/2007/

もしこのメールマガジンが皆様にとって、「少しでも興味が持てた」「面白い
エッセイがあった」「参考になった」など、何らかのお役に立てましたら、
一票を投じていただければ、うれしく思います。

「教育・研究部門」で、
タイトル「海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継」
マガジンID: 0000220966

です。

何年後、何十年後になっても、語り継がれるような「伝説のメールマガジン」
を目指して、われわれは今後も切磋琢磨していきたいと思っております。
(杉井)



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詳しくは→ こちらから

なぜ日本でなくアメリカの大学院を選んだのか ~ 理系留学生が語る本音

posted Jan 9, 2012, 9:30 AM by Yunke Song   [ updated Feb 14, 2013, 12:07 PM by Akihiro Eguchi ]

カガクシャ・ネットワークでは、好評を博しているメールマガジンの特別号として、「なぜ日本でなく、アメリカの大学院を選ぶことにしたのか」というテーマで、これまで20人を超える大学院留学生にエッセイを書いてもらいました。執筆者の内訳は、現大学院生(14人)、博士研究員(アカデミア8人・インダストリー1人)、教授職(2人)、会社勤務(1人)、会社経営(1人)、です。
これらのエッセイから、海外大学院を選んだ主な理由(複数回答)について、統計を取りましたので、その途中経過を発表します。

一番多かったのが、「授業料免除、生活費をもらえる」(56%)です。ついで、「英語力を高めたかった」(39%)、「専攻・研究分野を変えたり、もっと幅広い学際領域を選ぶのに好都合だった」(28%)と続きました。他にも、「自分の希望分野でアメリカが最も進んでいた」「基礎から学べて充実した授業・講義を受けたかった」「まわりに大学院留学経験者がいた」(各22%)、「世界中から優秀な学生が集まるのが魅力だった」(17%)、なども多くの大学院生が留学を選んだ理由に挙げられています。

下欄に、順位および全てのリストを掲載します。

また、実際に大学院に留学してみて良かったことについても、直接のテーマではありませんが、記述された方が多かったため、統計を取りました。
トップは予想通り、「授業料免除、生活費をもらえた」(33%)で、「充実したハードな授業を通じて、幅広い分野での基礎力が身に付いた」(28%)、「英語で発表・議論することが苦でなくなった」(22%)、「世界中からの様々なバックグラウンドを持つ留学生と仲良くなれた」(17%)、「日本の良さも見えるようになった 」「 英語を通じて国際性を養うことができた」「 修士から博士課程に研究分野を変えやすかった」「博士号を持っていると、就職後の給料やステータスにも反映される」(各11%)と続きます。リストの詳細は下欄を見てください。

さらに、留学するのではなく、日本の大学院に行くメリットについても、多くの意見が寄せられました。「コースワークに時間を取られず、比較的マイペースに研究を進めることができる」(17%)、良いボス・研究室に恵まれれば、良い研究者に十分なれる」「研究のレベルは十分に高く、教育の質も向上している」(11%)、となりました。必ずしも、アメリカなど海外の大学院が絶対に有利という訳ではなく、各々のおかれている環境や目指す目標によっては、日本の大学院に進学することも立派な選択肢の一つだと、われわれは考えています。

今年いっぱいまで、このテーマは続きます。全てのエッセイが揃ったら、改めて最終集計を取り、ここに報告させていただきたいと思います。

興味を持たれた方は、当メールマガジン(http://www.mag2.com/m/0000220966.html )を購読してください。登録は無料です。

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引用:
アメリカの院を選んだ理由


1. 授業料免除、生活費をもらえる  10(56%)
2. 英語力を高めたかった  8(39%)
3. 専攻・研究分野を変える、または幅広い学際領域を選びたかった  5(28%)
4. 自分が希望する研究分野で、アメリカがもっとも進んでいた  4(22%)
4. 基礎から学べて充実したコースワーク  4(22%)
4. まわりにアメリカの大学・大学院進学を選んだ者・経験者がいた  4(22%)
7. 世界中から学生が集まるのが魅力  3(17%)
8. 厳しい授業の方が、自分が成長すると思った  2(11%)
8. アメリカの文化や海外での生活にあこがれがあった  2(11%)
8. アメリカの大学での教育、産学連携の様子を見て  2(11%)
8. 幼少の頃アメリカに住んでいて、いつかは戻りたいと思っていた  2(11%)
8. 日本の大学の講義に失望した  2(11%)
8. 家族の影響を受けた  2(11%)
8. インターネット・メーリングリストを通じて、情報を知った  2(11%)
その他(各1):
○大学から大学院へと、人材の流動性がある
○日本の大学院入試に不合格して、選択肢を見つけた
○企業研究員の身分も安定ではないことを悟って、もう一度大学に戻って自分の研究をしたいと思った
○就職活動で、内定がもらえなかった
○まわりのサポートをたくさん受けた
○社会のニーズに応えられる(人のために役立つ)学問をしたかった
○他の国よりもアメリカが、最も外国人に門戸を開いていた
○大学教授たちが若い研究者にも対等の目線で話をしていた
○博士号取得者は、企業でも重用されている
○シンガポール留学の経験を通じて、英語での大学院生活に興味を持った

---
引用:
アメリカの院に行って良かったこと


1. 授業料免除、生活費をもらえた  6(33%)
2. 充実したハードな授業を通じて、幅広い分野での基礎力が身に付いた  5(28%)
3. 英語で発表・議論することが苦でなくなった  4(22%)
4. 世界中からの様々なバックグラウンドを持つ留学生と仲良くなれた  3(17%)
5. 日本の良さも見えるようになった  2(11%)
5. 英語を通じて国際性を養うことができた  2(11%)
5. 修士から博士課程に研究分野を変えやすかった  2(11%)
5. 博士号を持っていると、就職後の給料やステータスにも反映される  2(11%)
その他:
●就職の選択肢が多種多様
●社会に出て働いてから、大学院に戻りやすい環境が整っている
●世界の一流の科学者と研究できるチャンスが多い
●発表や議論する機会が多く、プレゼン・ディスカッション能力が鍛えられる
●研究費申請のしくみを学んだり、トレーニングできる場がある
●学生として学会やイベント・委員会等の運営を手伝いをする機会があった
●多くの研究室は少人数で、ボスとの距離が近い
●より多くの分野に網羅的に、優秀な教授がたくさんいる
●異なる分野の研究者との交流の機会が多い
●社会で働いた経験があって、年齢が高くても、違和感を感じなかった
●仕事に関して、人と人とのつながり・ネットワークの重要性を知った
●TA(ティーチング・アシスタント)として、授業を受け持って教える機会に恵まれた

---
引用:
日本の院に行くメリット


コースワークに時間を取られず、比較的マイペースに研究を進めることができる  3(17%)
良いボス・研究室に恵まれれば、良い研究者に十分なれる  2(11%)
研究のレベルは十分に高く、教育の質も向上している  2(11%)
日本での就職に有利  2(11%)
その他:
★日本人の真面目さや誠実さ、職人気質を感じる
★「日本語」で研究の話ができる(アメリカ等で学ぶと日本語の専門用語に疎い)
★途中でクビになる可能性が低い
★博士課程が修士・博士一環でなく、修士号を持っている場合は時間が節約できる
★英語のプレゼン・ディスカッション能力が成功するサイエンティストの本質ではない
★一年目から研究室を決められて(ラボローテーションをする必要がなく)、時間的なロスが少ない 
★日本にいながらでも、求めて行けば、英語でのディスカッション・発表をする機会は充分ある
★高価な機材が、研究室単位である場合がよくある
★質的には、多くの優秀な研究者がいる
★日本に恋人がいる場合、(超)遠距離恋愛にならない

【海外サイエンス・実況中継】 生命現象をコンピュータで実現?劇的に変わる医療の現場 ~ バイオインフォマティクス

posted Jan 9, 2012, 9:30 AM by Yunke Song   [ updated Jan 9, 2012, 9:30 AM ]

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ 
_/ 
_/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』 
_/  November 2007 Vol 23 No 1 
_/  カガクシャ・ネットワーク → http://kagakusha.net/ 
_/ 
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/



研究の最前線をお送りするのも23回目となりました。今週はニューヨーク
大・マウントサイナイ医学校に属する小葦さんが、「バイオインフォマティ
クス」について執筆してくれました。小葦さんは、人物もユニークですが、
書く文章もとてもユニーク。書かれた原文を、できるだけ忠実に載せるよう
努力しました。Kagakushaネットワークでも、これからの活躍をもっとも
期待されている人物の一人です。
(杉井)



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 
今日のエキスパートな質問(答えは下にあります)
───────────────────────────────────── 


1. 1990年代に開発された、DNAからなる数千の遺伝子を、同時に
かつ網羅的に調べあげる手法を、何というでしょうか? 


2. 「一塩基多型(SNP)」とは何でしょうか?人にどのように関わっている?

3. 小葦さんが生命現象をシミュレーションするのに使う、物理の理論2つ
と技術をあげてください。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 
生命現象をコンピュータで実現?劇的に変わる医療の現場 ~ バイオインフォマティクス
                          小葦 泰治
─────────────────────────────────────



************
* はじめに *
************

今回、このメールマガジンでは、「バイオインフォマティクス」という
研究分野について、現在、実際に医療の現場で、どのように活躍しているのか。
そして、近い将来、現在の医療を根本的に変え、より効率良く、
低コストで、短時間で病気の診断や治療が行えるようになる、
未来医療への橋渡し役としての「バイオインフォマティクス」について、
最先端の研究動向も踏まえた形で、できるだけ専門用語を使わずに、
難しい説明は極力避けるようにして、その魅力をわかりやすく、
さらにおもしろく、紹介させていただきたいと思います。m(_ _)m

その前に、ちょっとだけ、イントロとして、、、

ズバリ言います! (細木数子さんじゃないけど、、、やや古い? 笑)
世の中にある、自然創造物以外のすべての物は、人間の思考から生まれた
ものです。
音楽にしろ、絵画、彫刻、建築、政治、経済、法律など、そうですね。
そして、科学技術というものも、これに同じで、世の中の科学者と
いわれる人たちが、長い年月と、試行錯誤の繰り返しや、ひらめきにより
生み出された、研究開発の成果のたまものに他なりません。

人類の歴史というものは、たいへん尊いもので、簡単に
振り返るだけでも、次のようなビックイベントがすぐ思い浮かびます。

灌漑農業の手法が開発され、それが広まったことにより、
人類は食料を自らの手で育て、消費し、生活ができるようになりました。

エジソンさんが電球を開発することにより、人類は、24時間、
太陽の光なしでも、活動をすることができるようになりました。
そうですよね。

ワットさんが開発した蒸気機関により、工業化社会が幕を開け、大量生産時代、
近代文明がもたらされたと言っても過言ではないかもしれません。

コンピュータの出現により、生産ラインが、コンピュータ化された
ことで、低コストで、品質のいいものが、どんどん作られるようになり、
さらには、情報管理技術、情報通信技術の発展により、
情報化社会が幕を開けることになりました。

そのような中で、この21世紀、科学技術研究の急速な進展を背景に、
人類はまたあらたな、医療革命という名の文明の進化の恩恵を
受けようとしています。


************************
* さて、いよいよ本題へ *
************************

今回のメールマガジンでは、
現在、研究・開発が進んでいて、近い将来、可能になるであろう
夢のような技術についてのお話です。劇的に変わっていく医療研究の
現場。21世紀の医療革命を準備すべく、様々な分野において、
人類の英知を結集して、学際的な研究により実現しようという
取り組みについて、ごく一部を簡単に紹介させていただきます。

現在の先端医療の、さらに先を行く未来医療について、
その中でも特に今回は、バイオインフォマティクスという研究分野について、
その概略を紹介するとともに、少し踏み込んで、コンピュータの中で、
複雑な生命現象を再現する研究などについて、説明してみようと思います。

はっきりいって、論文調に専門用語を並べたり、
複雑な数式を用いて説明することも、もちろんできます。

しかし、今回は、最先端で行われている研究を、専門ではない方々にも、
広く理解してもらうことにより、みなさんの反応も考慮に入れながら、
今後、世の中のニーズに少しでも多く答える形で、研究・開発を
行っていきたいという思いから、可能な限り、専門用語は使わない形で、
しかも、読みやすさを重視するために、2人の架空の人物を登場させて、
会話風にして、解説させていただいています。

それでは、はじまり、はじまり。。。


このコラムの登場人物 (架空のキャラクターです。) 

たいじ君 (5歳): 
ビックリマンシール (天使 vs 悪魔シリーズ)や、機動戦士
ガンダムの消しゴム (通称: ガンケシ)を集めるのが趣味という、
ごくごく普通の幼稚園児。鉄腕アトムとドラえもんをこよなく
愛し、将来は、利根河原博士のような科学者になりたいと
密かに思っている。ライバルは、クレヨンしんちゃんと、江戸川コナンくん。
最近、 英会話のお勉強を始めたそうです。志望校は、ハーバード大学。 
長野翼アナウンサーと、歌手谷村新司さんの隠れファン。 渋っ

利根河原進博士 (年齢非公表、噂では29歳): 
子供好きだが、福山雅治さん演じるドラマ・ガリレオの主役で
変わりものの天才物理学者、湯川学准教授 (子供嫌い)に、妙に共感を
感じている今日この頃。
夢があって、世の中の役に立つ研究がしたいと、人一倍思って 
いるらしいが不明。密かにノーベル賞を狙っているとか、いないとか。。。
最近、だんだんとサラリーマン川柳の作者の気持ちがわかるように
なってきたらしい。この夏ビリーブートキャンプにより、5キロ
の減量に成功。現在 N.I.T.で研究開発に従事。



以下は、ある週末の午後、たいじ君が、利根河原博士の研究室に遊びに
来ているときの会話です。今回はどうやら、今、巷で話題の
バイオインフォマティクスについて、いろいろ話しているみたいですね。 


たいじ君: 博士ー、ちょっと、見てみてー 

博士: はぁ~ 

たいじ君: そんなの関係ねぇ~、そんなの関係ねぇ~、はいオッパッピー 

博士: なにそれ??? 

たいじ君: えぇ~、利根河原博士、これ知らないの~ 遅れてるなぁ~
今が旬の芸人、小島よしおさんのモノマネだよ。
博士も研究ばっかしてないで、ちょっとは麻生太郎前幹事長みたいに、
ちゃんと世の中の動きについていかないとだめだよ!

博士: 今日こそは、先にダメ出ししてやろうと思ったのに、先にダメ出し
されてるよ~(ノд・。)

たいじ君: 博士は、何してんの? (タメ口風)

博士: 今ねぇ~、あるメールマガジンで、バイオインフォマティクス
っていう分野を紹介するためのコラムを書いてるんだよ 

たいじ君: へぇ~、なにそれ!? 

博士: いきなりだけど、たいじ君、「現在の最先端の研究では、人間の
体の中で起こっている現象を、コンピュータで忠実に再現できるように
なってきてる。」と聞いて、どう思う? 

たいじ君: はははは、はははは、さっぱりわからない。
(やや、ドラマ・ガリレオ、湯川学准教授風)

博士: 湯川先生、じゃなくて、たいじ君、そうだよねぇ~
さっぱりわからないよねぇ~ (ふっ、まだまだ子供だなぁ~) 
でも、現象には必ず理由がある。(こちらも負けずに、湯川学准教授風)

たいじ君: そうですよね、博士。
う~ん、え~っと、人間には確か、約2万2千個ほどの遺伝子が
あって、それがもとに約6万個ぐらいのタンパク質が作られてるみたいで、
なんかよくわからないけど、体の中で複雑な反応してるんでしょ!?
でも、なんだかよくわかんねぇ~ (*д*;) 

博士: つまりこういうことだ。1つ1つわかりやすく説明していこう。
(以下も飽きずに、湯川学准教授風に説明 …笑)

近年、分子生物学の急速な発展により、人間の設計図とも言える
DNAが解読され、またそれをもとに作られた実際の生命現象に
関わっている、RNAやタンパク質が、かなり調べられてきている。
しかも、ある特定の病気に関わっているタンパク質や、もっと具体的な
遺伝子内の異常まで特定されてきている! 

実に面白い。でも驚くのはまだ早い!

1990年代には、「DNAマイクロアレイ」という手法が開発された。 
これは簡単に言うと、設計図である遺伝子が、どれだけ働いているかを、
数千の遺伝子を同時に、かつ網羅的に調べあげる方法。 
ヒトの設計図であるDNAの解読後、これにより、例えば
ある特定のガン患者と、健康人との遺伝子の働き方のパターンを、
コンピュータを駆使して、統計的に比較することにより、
ガン診断にも使われてきている。
もちろん、その他の病気の診断に応用することも可能。 
これも、バイオインフォマティクスの一分野だと考えられている。 

DNAは、4つの塩基、A(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)
から構成されている。最近では、各遺伝子の配列の中で、ATGCのうち1つ
だけが違うという、一塩基多型(SNP)が人それぞれにあることも、
よく知られている。 

つまり、この一塩基多型は、ヒト一人当たり約150~300万あるとされ、
人それぞれが持つ体質というものに深く関わっているということが、
最近の研究により明らかになってきている。

たいじ君: ギガントすげええええ 
(しょこたんこと中川翔子氏の言葉で、超すごいの意味)
(完全に利根河原先生の濃いキャラに押されまくってます (><))

博士: (もう今回はこのまま、湯川学准教授風で行くことにします …笑)
そしてこれらも、コンピュータで統計的に解析することにより、薬の
効きやすさの推定や、それに伴う処方薬の選択、さらには!副作用予測
にも応用しようとされている。
このようなこともバイオインフォマティクスの一分野だと
言えるかもしれない。 

たいじ君: それは、どげんかして応用せんといかん!
(宮崎県知事・東国原英夫氏風)

博士: 
さらに最近の研究では、この一塩基多型のパターンにより、病気になりやすい、
あるいは、なりにくい体質が決定されている、ということもわかってきている。
つまり!予防医学などへの応用も期待されている。 

その他にも、分子生物学、生化学、細胞生物学、遺伝子工学、生理学、
微生物学、脳神経科学など、様々な分野の研究者が、
実験しやすいように、目的別のデーターベーズ。また現在では
それらを統合して、データーの一括検索を可能にし、より使いやすく
しようという試みもなされている。

また、これらを活用して、医学・生物学的に意味のある情報を抽出する
ためのツールやプログラムの開発なども、バイオインフォマティクスに
含まれるかもしれない。 


たいじ君: へぇ~、生命科学研究って、すごい進んできてるんですねぇ~

博士: (もとの自分のキャラに戻って、、、)
そうだね、本当に、そう思うね。 
でも、現在の研究の最先端は、さらに進んでいるんだよ! 

たいじ君: どんだけぇ~ 
( ・_・。); (ちょっと汗) 

博士: 
DNAというヒトの設計図をもとに、現場では、生命現象に関わっている
RNAやタンパク質が作られているという、お話はしたよね。
ここで、たいじ君に、またまた質問です。
このDNA、RNA、タンパク質って、どれぐらいの大きさなのか、知ってる?

たいじ君: う~んっと、それぞれの組織は細胞から構成されていて、
DNA、RNA、タンパク質って、きっと細胞よりも小さいから、
顕微鏡を使わないと見えないかな???
( ・_・。); またしても、よくわかんねぇ~ (*д*;) 

博士: そうだねぇ~、ものすごく小さいから、最高性能の電子顕微鏡*で、
まぁなんとか、ある程度の形がわかるというぐらい、小さいんだよ。
具体的には、1ミリの100万分の1から、1000万分の1ぐらいの
大きさ。 
 *: ここで、利根河原博士の言っている顕微鏡とは、極低温電子顕微鏡の
ことを指しています。

たいじ君: じゃあさぁ~、顕微鏡でもよく分からないぐらい小さいのに、
最近新聞などでよく見かける、分子の形って、どうやって調べられてるの? 

博士: (新聞って、この子、本当に5歳か?漢字は読めるのか?と思いつつも、、、。) 
これはたいへんいい質問ですね。 まぁ細かいことは、ここでは割愛する
として、手法として、X線結晶構造解析や、NMR(核磁気共鳴)というものを
使って、分子の形が調べられていることを紹介しておきたいと思います。
これらの手法の驚異的なところは、DNA、RNA、タンパク質が、
1ミリの1000万分の1の大きさで、調べることができるという点ですね。 

たいじ君: 1ミリの1000万分の1って、そのサイズ(大きさ)のミーン(意味)する
ところが、全くアンクリアー(よくわからない)なんだけど。(>_<)

博士: (なんでそこだけ、ルー大柴になっとんねん!)

たいじ君: 要するにメチャメチャ小さい、ということですね。
だったらさぁ~、最近、なんか巷でよく言われてる、ナノテクノロジーとか
いうやつと関係があんの? (またもやタメ口風)

博士: よく知ってるねぇ~
ナノテクノロジーと結びつけて行こうという動きも活発です。 

ナノメートルというのが、1ミリの100万分の1なので、そのさらに
10分の1の大きさになるよね。ただ、X線結晶構造解析で調べられた分子
の形というものは、基本的には止まった状態で記録されているので、
実際に体の中で動いている様子を調べるには、まだまだ技術的な難しさが
あります。 

NMR(核磁気共鳴)だったら、動いている様子を調べることはできるけど、
それもサイズの小さな分子までで、大きな分子だったり、
特殊な環境にある分子だと、まだまだ難しかったりします。

そこで登場するのが、現在、僕や僕の所属している研究室で行われている、 
分子シミュレーションという方法です。僕たちは、X線結晶構造解析や、
NMR (核磁気共鳴)で調べられた分子の構造をもとに、物理の理論を応用して、
スーパーコンピュータを使い、DNA・RNA・タンパク質が、体の中で、
実際にどのように動いて、機能しているかを調べてるんですね。

すなわち、DNA、RNA、タンパク質がそれぞれ、人間の体の中で、どのように
相互作用し合いながら、機能を発揮しているかを、フェムト秒(1000兆分の1秒)
からマイクロ秒(100万分の1秒)の範囲内では、コンピュータ内で、
かなりの高精度で調べることができるようになってきています。 

例えばですね、現在、うちの研究グループでは、免疫系の指令塔が、
自分と、それ以外の外部からの侵入物とを見分けるとき、かなめとなる
“MHC class II”という分子と、そのくっつく相手となるペプチドとの
相互作用ならびに、ヘルバーT細胞を活性化させて
免疫系を稼働させるしくみを調べています。 現在進行中。>< /☆


たいじ君: う~ん、なんだかよくわからないけど、体の免疫機構を働かせる
上で、メチャメチャ重要な (>_<) 分子ということなんですね。 

それと、なんか、統計力学とか、量子力学などの物理の難しい理論 (>_<)
をもとにして、スーパーコンピュータを使って、シミュレーション
してるってことですよね。んでもって、そこから医学・生物学的に、
有効な情報を引き出そうとしてるってことですね。(>_<) 


博士: そのとおり! (再び、湯川学准教授風)
(でも、ちょっと待ってくれ!一番おいしいとこ持っていかれとるし、、、)

たいじ君: でもでもぉ~、スーパーコンピュータって、
どれぐらい計算が速いの? ( ・_・;)?? 

博士: 説明しよう! (引き続き、湯川学准教授風)

たいじ君: (ドラマの影響受け過ぎだろ。。。) ( ・_・。); (ちょっと汗)

博士: IBMと米エネルギー省が共同開発した汎用スーパーコンピュータ
“BlueGene/L”が、2007年11月の時点では、世界最高速で、
理論上1秒間に、約478兆2000億の計算を行うことができる。
日本では、現在開発が進んでいて、2008年に稼働予定の専用スーパー
コンピュータでは、1秒間に、約2000兆回の計算を行えるらしい。

たいじ君: 1秒間に、約2000兆回の計算って。。。どんだけぇ~
う~ん、またしても、どれぐらい速いのか (>_<) よくわからないけど、
要するに、ものすごく速いっていうことですね。 

博士: (もとのキャラに戻って)
まぁねぇ~、これでも、バイオインフォマティクスも含めて、
科学技術計算では、もっと高速な処理速度が必要な課題がたくさんあるん
だけど、現在では、量子コンピュータという、現在のスーパーコンピュータ
よりもはるかに速いものが、研究・開発されていて、将来的には、
分子生物学、生命科学、医学分野での応用も期待されています。 

たいじ君: でもぉ~、話しは戻るけど、利根河原博士のシミュレーションの
研究だけどさ、そんなことして、何の役に立つん? (タメ口風) 

博士: そんなに聞きたい?

たいじ君: 別に。。。(沢○エリカ様風)

博士: ガ━━Σ(°Д°|||)━━ン!!

たいじ君: 利根河原博士、冗談だってば、冗談 …笑 o(^o^)o

博士: では始めると、、、
人間が、病気から自分の体を守る際、免疫系を働かせるのには、 
この MHC Class IIという分子が、重要な役割を果たしているからなんだよ。

それに、この分子が、もし自分の体の一部をT細胞に提示すると、
自分の体を破壊しはじめて、自己免疫疾患という病気になるんだよ。
例えば、関節リュウマチとか、全身性エリテマトーデス、1型糖尿病、
バセドウ病、橋本病、多発性硬化症(神経の病気)や、若年性糖尿病とか。

たいじ君: へぇ~、そりゃすごいや! 

博士: しかも、この分子シミュレーションは、どんなシステムにも
応用することが可能なんだよ!

例えば、うちの研究グループが取り組んでいる
DNAの配列にともなう、動的挙動を調べたり、
DNA修復酵素と、特異的なDNA配列との相互作用。
血液凝固に関わる酵素によるアロステリック制御機構の、分子レベルでの解明。
味覚に関わるGPCRとリガントの相互作用。
PIP2によるイオンチャネルの制御メカニズム。
RNA干渉* に関わっている、RNAとタンパク質の相互作用。
 *: 2006年にノーベル賞を与えられたテーマであることは、記憶に新しい

それ以外にも、
今すでにあるお薬を、より効くように改良することもできるし、
作用機序のわからない薬が、実際にどのように作用することで、
効果をもたらしているかを、分子レベルで調べることも可能になるんだよ。

それだけでなく、薬のターゲットとなる、標的のタンパク質が
わかれば、その分子の形をもとにした新薬を、コンピュータ上で
作ることもできる可能性も秘めてる。

しかも、患者さんの遺伝子の違いにより、薬の効き方に違いが
あることも、説明できるし、なによりも、それぞれの患者さんに
一番いいお薬を処方することもできるようになるし、副作用だって
軽減することができるんだよ。

たいじ君: 科学技術の目覚ましい進歩に、感動したっ! (><)
(小泉○一郎元首相並みの絶叫調で) 

僕はてっきり、利根河原博士は、なんだか怪しい研究ばっかりしてるん
だと思ってたよ! (笑)

博士: あのな、、、

たいじ君: (博士が英国から特別にお取り寄せてしている、こだわりのお紅茶を、
その価値もわからずに、ガブカブ飲みながら、、、笑)
なるほど、人はみかけにはよらないというわけだ。

博士: いったい褒めてるのか、けなしてるのか、、、

2人のやりとりは、おしまい。


**********
* 最後に *
**********

というわけでしたが、いかがでしたでしょうか?
このメルマガを、ご愛読していただいているみなさまに、
少しでも、バイオインフォマティクスという分野は、
なんだかおもしろそうだなぁ~とか、もっと自分でも
勉強してみたいなど、興味が湧いたりすれば、これほど
うれしいことはありません。

最後になりましたけど、私自身も、
分子の形や、その動き方の特徴に基づいて、新たなお薬を、
低コストで、短時間で、 効率よく作って、癌や神経や、
免疫の病気の治療に、少しでも多く貢献したいと思いながら、
たいへん微力ではありますが、日々研究・開発に携わらせて
いただいているところです。m(_ _)m



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 
自己紹介 
───────────────────────────────────── 

小葦 泰治 (おあし たいじ)
2001年 関西大学工学部生物工学科卒業。京都大学大学院生命科学研究科
にて、半年ほど日本の大学院生活を経験したのち、2001年8月より、
Mount Sinai School of Medicine of New York University の
計算機生物物理分野の Ph.D. Program に進学。
もうすぐ Ph.D. (博士号)を取得の見込み。Ph.D.取得後は、博士研究員
などとしてさらに実績を積んで、将来は立派な教授となり、この分野を
引っ張っていくことが目標。情報生物学適塾(塾長: 松原謙一先生、
国際高等研究所にて2001年開催)の最年少参加メンバー。



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今日のポイント(エキスパートな質問の答えです)
───────────────────────────────────── 

1. 「DNAマイクロアレイ」法は、1990年代に開発され、DNAからなる
数千の遺伝子を、同時にかつ網羅的に調べあげる方法である。

2. 各遺伝子の配列の中で、ATGCのうち1つだけが違うことを、一塩基
多型(SNP)という。 この一塩基多型のパターンにより、病気のなりやすい、
あるいは、なりにくい体質が決定されている、ということもわかってきている。

3. 小葦さんは、統計力学や量子力学などの物理の理論をもとに、スーパー
コンピュータを使って、人体の免疫機構をシミュレーションしている。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 
編集後記 
───────────────────────────────────── 


アメリカではこの木曜日から、サンクスギビング(感謝祭)の真っただ中。
この、11月下旬のサンクスギビングの日から、クリスマス・年末にかけて
「ホリデー・シーズン」と呼ばれる季節となります。日本では、12月と
いえば、「師走」なので、一年の中で一番忙しい時期であるはずです。そして、
大晦日をむかえ、新年をゆっくりと過ごしますね。逆にアメリカでは、
ホリデーシーズンに入ると、たいていの人の仕事は減速していきます。
そして、新年を迎え、1月2日頃になると、気持ちを入れかえて、ばりばり
働きだします。このような1年の見方でいうと、日本人はどちらかというと
「追い込み型」、アメリカ人は「先行・逃げ込み型」と言うことができるで
しょうか。
(杉井)



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● 詳しくは→ こちらから

【海外サイエンス実況中継・特別号】大学院留学:Ph.D.所得後、アメリカで企業就職、そしてシリコンバレーで起業

posted Jan 9, 2012, 9:29 AM by Yunke Song   [ updated Jan 9, 2012, 9:29 AM ]

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ 
_/ 
_/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』 
_/  November 2007 Vol 22 No 1 
_/  カガクシャ・ネットワーク → http://kagakusha.net/ 
_/ 
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/


「なぜアメリカの院を選んだか」の特別号シリーズをお送りします。今週は、
大学院時代に生化学を専攻し、現在はシリコンバレーで起業されている、二村
さんです。 二村さんが経営するInfiniteBio(http://infinitebio.com/ )は
順調に業績を伸ばされています。アメリカで大学院を修了し、自分の会社を
立ち上げるまでに至った秘訣とは何でしょうか?女性の方には、「女性への
メッセージ」も必見です。
(杉井)



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 
なぜ日本でなくアメリカの大学院を選んだのか?
                             二村 晶子
─────────────────────────────────────



■ 自己紹介

 日本で東大農学部の農芸化学科を卒業し、アメリカでイリノイ大学シカゴ
校にて生化学の分野でPhDを取り、あるきかっけから住友商事のライフサイ
エンス系の子会社を2001年にカリフォルニアで立ち上げ、ベンチャーキャピ
タルの仕事をした。その後2006年にアメリカの会社を独立させ、現在シリコ
ンバレーにて、日米の大小の企業を対象に、ライフサイエンス戦略アドバイス、
投資アドバイス、日本の技術をアメリカ市場に販売、薬剤開発のコラボレー
ションなどの日米間におけるパートナーシップの構築、などコンサルティング
会社を運営している。

いずれは研究開発も自社で行うべく準備中であるが、日本のユニークな技術
をアメリカの製薬企業に売る仕事が延びており、なかなか忙しくて準備が進
まないのが現状。

米国大学院に進むことに決めた理由はいろいろあるが、米国大学院に進んだ
ことで、私がそのような決断をしたことにつながって、本当にラッキーだっ
たと思っている。大学院に進んだ理由、大学院で学んだこと、そして今の
仕事にどのようにそれが関係しているかを述べたい。大学院で学んだことを、
ここで詳しく述べるには限界がある。大学院で学んだことで重要であったの
は、ライフサイエンス全般の知識をつけること、自分の専門を築くこと、
良い研究をデザインすること、自分の考えをクリアに発表すること、など多
くあった。しかし、このようなトレーニングが非常に重要であったという
ことが、今の仕事をしながら初めて理解できたように思う。


■ アメリカの大学院を選んだ理由

 私は1995年から2001年まで、イリノイ大学シカゴ校医学部で生化学学科の
ドクターコースに所属し、2001年にPhDを修得した。

日本ではなくアメリカの大学院に行くことに決めた理由はいろいろあるが、
大きな理由は、自分が育った環境にあると思う。私の父は、日本で大学を
出た後、ハーバード大学大学院に行った。私と兄は小さなころから「大学は
日本で行き、大学院はアメリカに行きなさい」と言われて育った。

その後、私はスウェーデンで中学時代の1年間を過ごすことになり、アメリ
カンスクールに通った。その一年間は私の若い時代、もっとも充実した一年
になったのだが、その大きな理由が学校の教育にあった。アメリカンスクー
ルは宿題も多かったが、勉強するときは自分個人の実力を伸ばすような工夫
がされており、アメリカの教育の方が自分には合っているのではないかと
感じた。

その1年の間に、当時スウェーデンウプサラ大学の客員教授であった父に
ついて国際学会に行った。私はその当時14歳だったが、国際学会という場
で、世界中から人が集まり、過去に会ったわけでもないはずの人たちが、
共通の話題で盛り上がっているのを目前にした。その時に、私はサイエンス
が世界の共通語であること、そして英語もコミュニケーションの手段として
重要であることも認識した。世界各国の人々が自分の研究内容を知り、それ
について英語で議論ができること。そういうことが、自分が生きるうえで、
最低条件なような気がした。


■ 大学(学部)を卒業し、渡米

 私は東京大学の農学部農芸化学で学部時代をすごしたが、自分の専門を深く
勉強していくに従って、留学ということの意味が分かってくるようになった。
科学論文はほとんど英語で書かれているし、サイエンス自体を英語でやった
方が、サイエンス情報のアクセスや自分が発信する情報の影響力から考えて
も、効率がよく、有利ではないかと思った。また、ライフサイエンスの多く
の分野で研究の先端はアメリカにあることも認識し始めた。私が小さいころ
から父に言われていたこと、「大学院はアメリカに行きなさい」と言う理由
が分かったような気がした。

私が大学の教授に私の留学の意向を話すと、「東大の大学院にそのまま進めば
安泰なのに」と言われた。当時、私が留学を決心した1994年、1995年は、
日本ではバブルははじけたものの、特に景気が悪いという時期ではなかった。
その反面アメリカは景気が悪い時期であった。日本では、まだ「安泰」とい
うような言葉が使われていたし、どうしてあえてアメリカへ行くのか、とい
うような雰囲気もあった。女性が危ないアメリカへ行くのは反対、というよ
うな意見を言う人もいたし、周囲は私の意志をサポートする人が多かったわ
けではなかった。

しかし、私は「安泰」という言葉には全く興味がなかったし、チャレンジを
望んでいたので、留学の決心は変えなかった。当時周囲に、ライフサイエン
ス系で留学する連れがいたわけでもなく、留学の準備に十分時間をかけるこ
とはできなかったが、学部を卒業するころにはイリノイ大学シカゴ校医学部
生化学学部から入学の通知が来た。


■ ラボ選びについて

 シリコンバレーで仕事をしていると、ベンチャーキャピタリストの間で有
名な教授の研究室出身というと、起業してもベンチャーキャピタリストなど
の投資家が飛びつく、という環境がある。私がシカゴで研究室を選んだとき
は想像もしていなかったことだ。

私がPeter Gettins教授の研究室の存在を知り、研究室にジョインすることを
希望したのは、大学院に入学してからである。Gettins教授が、たんぱく質の
構造と機能という私が一番興味を持っている分野に従事していたこと、研究
室の雰囲気が他の研究室に比べていつも明るく、他の研究室よりもみんな声
が大きくて、とても楽しい雰囲気があったからだ。そして、論文の出版数も
学部の中でもっとも多い研究室だった。私はこの研究室に所属したことは、
論文を出す観点からも、好きな研究をするという意味でも、大正解だったと
思う。

しかし、将来ベンチャー企業の立ち上げることがしたい、ベンチャーキャピ
タリストになりたい、と希望する場合は、私が所属した研究室はベストとは
思えない。まず、第一に私の先生が、自分の技術を使ってビジネスをしよう
とは全く考えていなかった。そうすると、企業にも投資家にもコネクション
はできないし、ビジネスの成功例などを身近に見る機会がない。私の場合は
そのようなコネクションは、住友商事と仕事を始めてから築いたものである
が、大学院時代に将来のビジネス上も重要なコネクションを作りたければ、
そのような観点を考慮しても良いと思う。

Gettins教授の研究は血液中の重要なたんぱく質を扱っているので、起業マイ
ンドがあれば、ビジネスのネタには困らないはずであるが、彼はまったくそ
ういうことには興味はなかった。しかし、結果的には私は卒業後、自分でコ
ネクションを開拓し、コネクションに困ったわけではないし、個人的には、
このような戦略で研究室を選ぶことを必ずしもサポートしているわけではな
い。一つは、このような戦略的に研究室を選んだ人たちが、必ずしも計画通
り成功しているわけではないと思うからだ。また先生は忙しくて、一人ずつ
指導している時間はないかもしれない。

今の仕事を始めてから、実際に、そのようなバイオインダストリーにおける
「スター」教授の研究室を出ている人たちの多くが、ベンチャーキャピタリ
スト、大手法律事務所で活躍する弁護士、弁理士、などになっていることが
分かった。大手法律事務所で活躍するには、常にホットな顧客がいなくては
やっていけないが、「スター」教授がいろいろな会社を研究室からスピンア
ウトさせ、それらの会社には、ピカピカのベンチャーキャピタルが付いて、
いずれ大きなIPOをしている。そのような会社を顧客につけなければ、弁護
士としての事務所における立場が揺らいでいく。

このように、「スター」教授の研究室を出た人たちは、弁護士、ベンチャー
キャピタル、または教授の考えを実現できる研究者として活躍し、それぞれ
の人たちがグループを作り、お互いを守りながら成長しているように見える。
しかし、その中でも当然ながら実力があることが重要で、チャンスが与えら
れたにも関わらずそれをうまく活用することができなかった人は、当然チャ
ンスを失っていくだろう。


■ 実力社会について

 私が大学院に入って驚いたのは、一度大学院に入ってしまえば、努力さえ
していれば先生に認められるだとか、努力さえしていればPhDが取れる、と
いうわけではないということである。それは今考えれば当然のことと思うが、
実際に目の前で何人ものクラスメートが退学を余儀なくされているのを見て、
正直なところ驚いた。私の学年で10人のクラスメートがいたが、最終的にPhD
を取ったのは、なんと私一人であった。私の学年は、退学率が高かったよう
だが、他の学年でも半数以上の人たちは何かしらの理由で退学した。

日本での学生生活を思い出してみると、私は常から気になっていたことがあっ
た。それは試験のたびに、自分がどれだけ最低限の努力によって試験をパス
したか、というような変なプライドを持つ人が多かったということだ。試験
前にも「全然勉強していないよ」というような台詞を口にし、試験にパスして、
自分が効率よい人間だというような態度を取る。勉強が好きです、とか一生
懸命勉強しています、という態度を取ると、そんなに勉強しなくても卒業で
きるのに、という目で見られることがある。そういう態度に私は違和感を
持っていた。どうして、自分が勉強しなくても成績が良いというフリをした
いのか、と。

アメリカに来てからみんなが懸命に勉強をしているのを見て、その自然な態
度に、私はこちらの方が肌にあっていると思った。試験前なのに勉強してい
ない人(あるいはフリをしている人)がいれば、周りの人たちは「あなたは
なんで試験前なのに勉強していないの?」と言う。勉強するために大学院に
来ているのだから勉強するのは当たり前で、勉強しないのであれば、大学院
に来る意味がないのだ。そういう純粋な気持ちを表せる環境が私は自然だと
思い、居心地がよく感じた。

試験があるたびに、誰もが真剣に勉強していた。それでも容赦なく、毎回半
分の人を落とすテストもあった。そのような大きなプレッシャーは、私も大
学院に入るまで想像していなかった。それだけ厳しい基準で学生を落第する
ので、カンニングをしている人がいれば、学生が先生に報告する。他の人を
蹴落として自分がプログラムに残らなくてはいけない、という風土があった。

私が入学したころは、アメリカの景気は悪く、とりあえず大学院に行こうと
いう人が多く、大学院の競争率が特に高かった年である。アメリカは実力社
会かと思えば、意外に交渉する人には寛大で、「何でもネゴ次第」と思わせ
るところもあるし、派閥が物を言うところもある。しかし、基本的には、
個人個人が自分の力を常に人に見せていかなくてはいけない社会だと思う。
世界中から夢を持った人が集まるアメリカで、どのように自分をアピール
していくか、が鍵であると思う。そのようなトレーニングも、今ビジネスを
する上で、非常に役に立っている。


■ 人と人のつながり

 アメリカの大学院に行ったことで、人と人のつながりが重要であることを
益々感じるようになった。今仕事をしていて、どのように仕事のパートナー
を選ぶか。もちろん、技術的に補完的なものを相手が持っている、ビジネス
の経験が補完的である、ネットワークをあわせると相乗効果がある、などの
理由がある。

しかし、実際に、「この人と一緒に仕事をしたい」と相手が思わなかったら、
長い関係は望めないであろうし、信頼関係もできないだろう。アメリカに住
んでいる間に、どれだけ「この人と将来一緒に仕事をしたい」と思わせるか、
がとても重要だと思う。これは、実力とか、人徳だとか、相手が感じる「ケ
ミストリー」が問題で、簡単に行えるものではない。例えば多くの人が「正
直な人」に共鳴するだろうし、「思いやりがある人」に惹かれるであろう。
また、仕事をする上では、「実力がある人」は何と言っても魅力的だろう。
アメリカの社会は人と人のつながりを重視する社会であるから、常に回りに
評価されていることを忘れない方がよいと思う。

私がアメリカの大学院に行ってよかったと思うことは数多くあるが、特に、
今の仕事を考えると、世界の先端を行く人たち、研究者、ベンチャーキャピ
タリスト、ビジネスマン、と難なく直接コミュニケーションが図れることは、
アメリカの大学院に行ったからこそ可能なことだと思う。

たとえば、私たちの仕事では、日本の技術をリアルタイムで北米市場に紹介
する。北米市場に紹介する、といっても日本語を英語に訳しただけではだめで、
北米のサイエンス、およびビジネスカルチャーに合わせて、しかも相手の
会社から適切な有力人物を探して、その人たちにアピールする必要がある。
ビジネスを交渉の場面でも、米国企業側の交渉内容を同じ土俵で評価し、
日本のクライアントになるべく有利なように契約をまとめなくてはいけない。
そのような交渉も、アメリカの風土での相手の温度を理解しながら行う必要
がある。

また、様々な状況であっても、仕事で出会った人と、長い関係を築いてき次
に発展させることも、私のような仕事では腕の見せ所である。正しいキーパー
ソンを探してコンタクトすることや、実際の交渉も含めて、私が北米の大学
院を出ていなかったら、これらの実行はもっと難しかっただろうと思う。
交渉の相手が、同じ環境で教育を受けていれば、交渉もやりやすい。


■ 女性へ

 自分が20代だったころよりは、私自身、女性の社会的地位に対する不満が
減ってきたように思う。それは自分がアメリカのビジネス社会に慣れてきて、
活躍する女性を目にしているせいなのか、自分の年齢が上がるにつれて、
差別を感じなくなってきたためなのか、あるいはその両方なのか、様々な
要素があると思う。

私の現在の仕事では、北米の大手製薬企業やバイオテク企業相手にビジネス
をすることが多いが、そこで強く感じるのは、重要な地位についている女性
のexecutive(重役)の多さである。例えば、会社を訪問し、先方から5人か
ら10人の関係者が出てきて、私たちのチームとディスカッションをする場合。
先方のトップは、大手製薬企業では、ある疾患部門のリーダーであったり、
そのサイトのディレクターであったりするが、それらの地位についているの
が女性であることが多いのだ。

自分より年齢が上の男性の部下を引き連れてミーティングすることもしば
しばある。そのような環境にいると、「女性の活躍が目立つ」という表現を
すでに超えていて、強いリーダーシップのある人物には、男性であろうと
女性であろうと、関係なく活躍できる、ということがよくわかる。

その反面、日本の環境はまだまだ違うと思う。例えば、先日大阪に、ある
ベンチャー企業の投資説明会(投資家向けに、ベンチャーが資金調達のため
にセミナーを開く)で、私が講演をした。その後、講演をした3名と、投資
家を交えてランチョンが行われたのだが、そこに集まった30名くらいのなか
で、女性が私一人だった。最初、何か雰囲気が異様だと感じたのだが、周囲
を見回すと、女性が一人だったのである。セミナーの際に、いろいろなサポー
トをするために同室していた女性たちは、別の控え室でお昼を取っていて、
ランチョンには参加しなかった。

このことからも、日本では表で活躍する女性はまだまだ少ないことを実感し
た。アメリカにいると、投資家関係の学会に集まる日本のベンチャーキャピ
タルの仕事をしているのは女性が増えてきているように思うので、傾向とし
ては、女性はもっともっと活躍する社会になっていくとは思う。日本の製薬
業界のビジネス関連部門、研究部門、金融の企業、それぞれ、今後は女性の
活躍が少しずつ増えていくのではと予想される。しかし、まだまだしばらく
は女性にとって活躍できる場が少なく、「面白くない」環境が続くのではな
いかと思う。

女性で、研究や仕事の環境に不満を持っている方は、早めにアメリカに出て
きて、自分を鍛えながら、楽しく、やり甲斐を持って仕事をすることをお勧
めする。実力社会のアメリカで自分を鍛えながら、日本の社会にも貢献でき
るような今の仕事は、大変やり甲斐があると私は思っている。



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自己紹介 
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二村 晶子 
東大農学部の農芸化学科を卒業。イリノイ大学シカゴ校にて生化学の分野で
PhDを取得。その後、住友商事のライフサイエンス系の子会社を2001年にカリ
フォルニアで立ち上げ、ベンチャーキャピタルの仕事をする。2006年に会社
を独立させ、現在シリコンバレーにて、日米の大小の企業を対象に、コンサ
ルティング会社、InfiniteBio(http://infinitebio.com/ )を運営している。



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編集後記 
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今回執筆した二村さんは、このメルマガを発行している「カガクシャ・ネット
ワーク」(2000年発足)の初期からのメンバー。当ネットワークが目指す、
「理系人のネットワーキング力を高める」を、まさに身をもって体現している
人です。またこのエッセイを通じて、アメリカの大学院は、純粋な「研究者・
科学者」だけではなく、「起業家」を養成するにも適した環境であることが分か
るかと思います。
(杉井)



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アジア・ナノテク・キャンプ2008<参加者募集> 産業技術総合研究所ナノテクノロジー研究部門

posted Jan 9, 2012, 9:29 AM by Yunke Song   [ updated Jan 9, 2012, 9:29 AM ]

アジア・ナノテク・キャンプ2008<参加者募集>

このたび産業技術総合研究所(産総研)、東京工業大学、物質・材料研究機構が中心となり、アジアナノテクフォーラムの協力のもと、日本を含むアジア諸国からナノテク分野の若手研究者を招待し、この分野の最前線を学ぶ機会を提供するアジア・ナノテク・キャンプを2008年2月に開催することとなりました。プログラムには、専門家による講義、セミナー、nano tech 2008への参加、つくば、東 
京、名古屋のナノテクノロジー関連会社、工業センターなどの機関訪問などさまざまな活動内容が含まれています。2月20日(水)には、名古屋大学でシンポジウムを行い、産総研ナノカーボン研究センター長の飯島澄男氏の特別講演を予定しています。
日本国内からもこのキャンプへの参加者を5名程度募集します。ナノテクノロジーに興味のあり、将来この分野のリーダーとして活躍する熱意がある方の積極的な応募を期待します。

■期間: 2008年2月4日(月)~21日(木)
■場所: 産業技術総合研究所つくばセンター,東京工業大学,名古屋大学ほか
■費用: 交通費・宿泊費は主催者側負担
■応募資格:
・ナノテクノロジー関係の分野の専攻もしくはナノテクノロジーに対して興味を持っている35歳以下の大学・公的研究機関に在籍する若手研究者もしくは大学院博士課程以上の大学院生 (ナノテクノロジーに対して強い興 
味があれば専攻は特に問わない)
・十分な英語力を持つこと(講義は全て英語で行う予定、実用英語検定2級、TOEIC 600点以上が望ましい)

■詳細URL: http://www.nanoworld.jp/nanocamp08/koubo.html

独立行政法人産業技術総合研究所ナノテクノロジー研究部門

【海外サイエンス実況中継・特別号】大学院留学:「ドッグイヤー」のIT分野におけるアメリカ

posted Jan 9, 2012, 9:28 AM by Yunke Song   [ updated Jan 9, 2012, 9:28 AM ]

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_/ 
_/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』 
_/  November 2007 Vol 21 No 2 
_/  カガクシャ・ネットワーク → http://kagakusha.net/ 
_/ 
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今週は、なぜアメリカの大学院を選んだか、の特別号をお送りします。先週、
「コンピュータサイエンス」を紹介した嶋さんが、引き続き執筆してくれま
した。ご存知の通り、コンピュータサイエンスすなわちITは、科学の分野の
なかでも、著しくめまぐるしい速さで変化している分野です。そんなフィー
ルドに身を置いている嶋さんのアメリカ留学の動機とは?
(杉井)



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なぜ日本でなくアメリカの大学院を選んだのか?
                             嶋 英樹
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私がアメリカの大学院を選んだ一番の理由は、アメリカがサイエンス、特に
コンピュータサイエンスの本場だからです。

大学に入って最初にJavaというプログラミング言語を習ったのですが、教科
書は当年から新たに採用された、"Thinking in Java"という分厚い英語の本
でした。教授陣の間でも、英語の教科書を使うのは理解を妨げるとの議論が
あったようですが、この教科書を選んだ先生の意図は、コンピュータサイエ
ンスに携わるなら英語での情報収集に慣れてほしい、ということでした。

ITの世界における時間の流れの速さは、犬が人間の7倍もの早さで成長
するのに匹敵することから、「ドッグイヤー」と例えられています。技術
仕様やソフトウェア新機能など、目まぐるしく環境が変わる中で、常に新し
い変化に対応していかなくてはなりません。英語圏の企業・大学・コミュニ
ティがITの世界をリードする中、英語の最新情報が日本語に翻訳される
まで、のんびり待っているのは致命的なのです。

さて、そんなミーハー(?)な理由で留学を思い立つと、様々な現実的な
問題が決断を思いとどまらせます。私の場合は、大学4年生になってすぐ、
大学院への推薦を受けるか辞退するかの時が、決断の瞬間でした。当時の
問題を質問形式で再現すると、次のようになります。


Q.最先端のことをやるなら日本でもできるのでは?

日本でも最先端の研究をやっている大学・企業はたくさんありますが、私が
見てきた画期的な技術・研究などはアメリカから来ていました。どういう人
たちがどういう発想をして変革を起こしているのか、実際に観察・体験した
いという知的好奇心もありました。

今まで東京にしか住んだことがなかったので、違う環境で視野を広げたかっ
たというのもあり、将来国際的に活躍できるよう、素地を身につけるのには
いい機会だと思いました。


Q.最先端のことをやるなら論文を読んだりして独学でもできるのでは?

もちろんそうですが、行けるチャンスがあるのなら行ったほうがいいに決まっ
ています。ノーベル物理学賞を取った量子力学の父、ハイゼンベルクは自伝で
「科学は討論の中から生まれる」と書いていますが、研究について気軽に議論
できる相手が身近にたくさんいる環境は、とても重要だと思います。

また、高等教育が形骸化せず健全に社会に組み込まれている(といったら大げ
さかもしれませんが)、アメリカの大学院の教育を受けられるだけでも価値が
あると思いました。


Q.今本当に行くべきか?会社派遣で行ったほうがいいのではないか?

学費を考えると、ポスドク留学や会社派遣留学という選択肢もありました。
考えてみてもも答えが見つからないので、留学経験のある教授に片っ端から
アポを取って、留学体験談を聞かせて頂きました。早いうちに行ったほうが
環境にも適応しやすいのでいいということで、学部卒業後すぐ行くことに
したのですが、学費の捻出だけは、最後まで頭を悩まされました。

博士課程に出願するならお金の心配はほぼいらなかったのですが、様々な
大学の博士課程の学生の履歴書をダウンロードしてみてみると、あまりの
レベルの高さに受かる自信はありませんでした。よって修士に入学し、親や
貸与奨学金で借金をして、卒業後に働いて返す案でいこうと決心しました。
結果的には、修士1年目からスタイペンドが出て、幸運なことに借金はせず
に済みました。


Q.合格はできるのか?受かっても無事卒業できるのだろうか?

研究実績がほとんどないのに、世界中から集まる出願者の中から選ばれるの
かという不安はありましたが、10校も出せば1校ぐらい拾ってくれるだろ
うと思っていました。卒業に関しては、おおっぴらに言うのは恥ずかしいの
ですが、努力すること、忍耐力などには自信がありましたので、ポジティブ
思考で大丈夫だろうと考えていました。(結果として、修士は無事に卒業し、
現在の博士課程に至っています。)

いい意味でのポジティブ思考は、研究にとっても大切だと思います。研究者
は普通、ちょっとやそっとでは答えが出ないような問題に取りかかるので、
現実を直視しすぎると着手すらできなくなりますから。


Q.日本にいたら安泰なのにレールからはずれるリスクを取る価値はあるか?

日本の産業界にはいい就職先がたくさんあるので、留学はリスクになるかと
いえばなるでしょう。ただ、様々な人の留学後のキャリアパスを調べてみる
と、リターンは大きそうでしたので、ハイリスク・ハイリターンの留学を選
ぶことにしました。私事ですが、彼女と遠距離恋愛になるというというのも
大きなリスクでしたが、なんとかなるもので、今年無事にゴールインできま
した。


Q.身近に留学した人があまりいないのに、手続きなどできるのだろうか?

留学した先輩など身近におらず、留学関連の書籍はあまり参考になるものは
ありませんでした。しかし、研究留学の経験がある大学の先生や、kagakusha
メーリングリストなど、インターネットからの情報が大変心強く感謝してい
ます。

留学予備校は予算の都合上行かなかったのですが、お金が許すなら英文履歴
書やStatement of Purpose の添削ぐらいはしてもらうといいと思います。


以上ですが、留学をするか迷っている読者の方は、引っかかる質問がありま
したか?この記事が皆さんの背中を押すのに、少しでも役立てば幸いに思い
ます。



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自己紹介 
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嶋 英樹
2004年早稲田大学理工学部情報学科卒業。その後ペンシルバニア州ピッツバー
グにあるカーネギーメロン大学コンピュータサイエンス学部言語技術学科に
進学し、2006年に修士課程を修了。その後博士課程に進学し、現在に至る。



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編集後記 
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先週の編集後記でお伝えした出張から戻ってきました。サンアントニオの暖
かい気候の中、ディナーでは他の大学の先生たちと企業の「オープンソース」
について話題になりました。
オープンソースとはつまり技術の無償公開。論文ばかりでなく特許や製品の
ソースコード(建築でいう設計図)の一部を一般公開することで、コミュニ
ティの活性化を図るという、慈善的取り組みです。似たような活動に、大学
講義ビデオのインターネット公開があり、MITやUCバークレーの事例が
有名です。このメールマガジンもある意味、研究留学ノウハウのオープン
ソース化かもしれませんね。
(嶋)



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【海外サイエンス・実況中継】 コンピュータは言語を理解できるのか? ~ コンピュータサイエンス・自然言語処理分野

posted Jan 9, 2012, 9:28 AM by Yunke Song   [ updated Jan 9, 2012, 9:48 PM ]

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_/ 『海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継』 
_/  October 2007 Vol 21 No 1 
_/  カガクシャ・ネットワーク → http://kagakusha.net/ 
_/ 
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研究の最前線をお送りする第21回目です。今週はカーネギーメロン大学の
嶋さんが、コンピュータサイエンスの一分野である「自然言語処理」につい
て解説をしてくれます。コンピュータの発展には、物理学や工学の貢献が不
可欠だったのは周知の事実ですが、これからはむしろ、コンピュータが他の
分野にもたらす貢献が大きなものになっていくでしょう。逆に、他の分野の
知識がコンピュータサイエンスのさらなる発展につながっていくという、
フィードバックが見られるというのも、このエッセイから伺われて興味深い
です。
(杉井)



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今日のエキスパートな質問(答えは下にあります)
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1. 最近、自然言語処理における方法として活発に研究されている統計的
手法では、どのように「スパムメール」を見いだすのでしょうか?

2. いま、「言語技術学科」にもっとも関連の深い分野は?

3. 嶋さんの開発している「質問応答」とは、どのようなシステムのこと
をいうのでしょうか。例を挙げてください。



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コンピュータは言語を理解できるのか? ~ コンピュータサイエンス・
自然言語処理分野
                         嶋 英樹
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こんにちは、カーネギーメロン大学の嶋です。今回は私の専攻分野である
コンピュータサイエンスの一部、自然言語処理関連のお話をさせていただき
たいと思います。 


【自然言語処理とは?】

かみくだいて言うと、コンピュータで自然言語処理をする動機は次のように
なります。

Q:ヒトが他の動物より賢いのはどうしてでしょうか?
A:「ことばを使える」のが理由の一つかもしれません。

Q:では、コンピュータを賢くするには、どうしたらいいでしょうか?
A:コンピュータに「ことば」を理解させることを目指せば良さそうです。

コンピュータといえば、ミクロ的にみれば0と1の演算を高速にする機械です
が、「計算をしない」ように見える最初の応用は、機械翻訳(自動翻訳)と呼
ばれるもので、1950年代にはすでに誕生していました。それ以来、音声認識、
自動要約、情報検索、質問応答など、さまざまな自然言語とその周りの研究
が行われています。自然言語処理は人工知能の一分野として扱われ、その実現
はSFなどで描かれるように、まさに人類の夢でした。

ところが半世紀以上研究されても機械翻訳が完璧ではないのはどうしてでしょ
うか?実現不可能なのでしょうか?

錬金術のように不可能に近い、高い目標を目指すことによって、いままで大
きな収穫が得られてきたのは事実です。たくさんの問題が見つかり、そして
解決されてきました。その間、言語学からはチョムスキーの生成文法、統計・
機械学習(データを自動的に分類するシステム)からはニューラルネットワー
ク、ベイジアンネットワークなどのパラダイムシフトの影響を受け、自然言語
処理の手法も大きく変わってきています。


【統計的自然言語処理】

1960年頃から続いた合理主義から、1985年ぐらいからの経験主義へのシフト
により、ツリーバンクなどの注釈付きコーパス(言語の巨大なテキストデー
タ)が作られ、ベイジアン統計理論の進歩やコンピュータの高速化なども手
伝って、最近の自然言語処理は、統計的手法を中心に一気に進化した感があ
ります。

例えば、スパムメールをはじくという問題を考えたとき、従来の知識ベース
のやり方では「バイアグラ」という単語が含まれていたらはじく、ブラック
リストに載ったメールアドレスからのメールがきていたらはじく、としてい
たわけです。

これに対して、統計的手法では普通のメールとスパムメールを集め、それ
ぞれに含まれている単語の数を数え、スパムメールが与えられたとき「バイ
アグラ」を含む可能性は30%などという推定から、メールが与えられたとき
それがスパムである確率を計算できます。

統計的手法のおかげで、理論的にしっかりした計算モデルを言語に適用でき、
手法を他の研究に転用しやすくなるなど、最先端の研究が早く進むようにな
りました。その一方、自然言語処理は計算言語学と呼ばれるべきなのか、私
たちの分野は理学なのか工学なのか、言語学な貢献ももっとするべきだ、と
いった論争は尽きません。


【生物学・物理学などいろいろな分野との関連】

現在所属している言語技術学科(=Language Technologies Institute)は、
ほとんどの教授・学生がコンピュータサイエンス畑出身です。

言語技術学科には、言語学専攻・コンピュータサイエンス副専攻のような
バックグラウンドをもった人もいます。しかし、言語学自体を扱う授業は
多くありません。もちろん、言語学の知識は、自然言語処理の基礎(単語の
形態素解析、係り受け解析、固有名詞抽出、照応解析など)の問題定義や、
機械学習における特徴量の設計には欠かせません。

いま最も関連が深い分野は、「機械学習」だと思います。機械学習の応用は
画像などもありますが、自然言語処理にはある程度の速さで計算可能で、
まだ解かれていない問題がたくさんあるため、親和性が高いように思います。
応用統計学と統計的機械学習は密接ですが、機械学習ではコンピュータで
現実的な時間で計算可能かということにも着目します。データマイニング
にも、ウェブのリンク解析などで関連しています。

いままでは「人工知能」の一分野として見られがちだった自然言語処理です
が、「人工知能」という言葉はあいまいで、対象研究分野が広くなりすぎる
ため、最近はあえて使われなくなってきています。

言語モデルの研究には、情報理論も密接に関わってきます。グッド・チュー
リング法という単語の分布推定方法が、第二次世界大戦のときにナチス・
ドイツの暗号を破るのに活用されたのは、ご存知かもしれません。

生物学とは、融合分野である計算生物学というところで関わっています。
言語技術学科にも、いくつかの計算生物学のプロジェクトがあります。

世の中にはコンピュータサイエンスと生物学の両方の博士号を持つ教授もお
り、例えばCMUのEric Xing教授や慶應の冨田勝教授などがいらっしゃいます。
ゲノムが4種類のアルファベットATGC(塩基)で書かれた言語である、
と考えれば自然の流れかもしれません。例えば、パソコンでの仮名漢字変換
とゲノム解析は両方とも同じ手法でアプローチすることができます。

統計物理学の影響は、行列計算の多いウェブのリンク解析などに現れていま
す。他にも、単語を電子と見立て意味をスピンに置き換えて計算したり、
情報量の平均をエントロピーで表したり、物理学のサンプリング手法を使っ
たりしています。 検索エンジンでの検索キーワードの自動拡張が、ブラウン
運動でおなじみのランダムウォークで実現できるのは面白いと思いませんか?


【研究紹介】

私はCMUにきてからというもの、「言語間横断質問応答プロジェクト」にこれ
まで3年以上従事しています。質問応答というのは、「ビル・クリントンの奥
さんは誰ですか?」というような質問に対して、「ヒラリー・クリントン」と
いう答えを返すような、検索エンジンの進化系ともいえる研究です。

検索では文書(へのリンク)がアウトプットですが、質問応答では関連文書
から情報を抽出するという技術が必要になります。

さらに、言語間横断なので、英語で質問をして、各国の言語で書かれた新聞
などから答えを調べ、まとめ上げ、英語でアウトプットするというような形
になります。

情報検索、情報抽出、機械翻訳を中心にいろいろな技術のいる複雑なプロ
ジェクトですが、「意味理解」を実現するシステムを目指し、日々がんばって
います。



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自己紹介 
───────────────────────────────────── 

嶋 英樹
2004年早稲田大学理工学部情報学科卒業。その後ペンシルバニア州ピッツ
バーグにあるカーネギーメロン大学コンピュータサイエンス学部言語技術学科
に進学し、2006年に修士課程を修了。その後博士課程に進学し、現在に至る。 



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今日のポイント(エキスパートな質問の答えです)
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1. 最新の統計的手法では、「普通のメール群」と比較して「スパムメール
群」により多く見られる単語を見いだし、ある特定のメールが「スパム」で
ある確率を計算する。

2. いま、言語技術学科にもっとも関連の深い分野は、「機械学習」(データ
を自動的に分類するシステム)だと考えられる。

3. 「言語間横断質問応答」とは、例えば、「ビル・クリントンの奥さんは
誰ですか?」というような質問に対して、「ヒラリー・クリントン」という
答えを返すという、さらに進化した検索エンジンのシステムのことである。



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編集後記 
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今週やっとNSFのプロポーザル書きのお手伝いが終わったと思ったら、来週
の出張に向けてのプレゼン資料・ポスター作り、デモソフトの準備に追われ
ています。出張で参加するのは、「今年はこれだけがんばったから来年も研究
を続けさせてください」とプロジェクトの出資者に成果を発表する会です。
私の役目は教授のサポートとして2時間半ブースでデモをすることなのです
が、お客さんにはシステムを将来使うかもしれないユーザ、つまりCIAなど
政府のアナリスト達も含まれていて、緊張します。
(嶋)



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